先月4日に亡くなった土浦市在住の録音エンジニア、行方洋一(なめかた・よういち)さんを偲ぶ会が12日夜、阿見町の「ノーチラスカフェ」で開かれた。
同級生やセミナー生など県内外から18人が集まり、献花と黙とうが行われた。行方さんの遺影を囲んでそれぞれの思い出話が語られ、エピソードにちなんだ楽曲や録音の音源も流された。
享年79歳。会場のノーチラスカフェ(山本哲夫さん経営)は、行方さんが音源持参で講義する「音屋セミナー」を20回以上開いた晩年の活動拠点。亡くなる5日前のセミナーにも元気な姿を見せていたといい、行方さんを慕う“弟子”たちが肉声を聞く最後の機会となった。

行方さんは1943年生まれ。元の東芝音楽工業(後の東芝EMI)のレコーディング・エンジニアでオーディオ評論家。坂本九や弘田三枝子、欧陽菲菲、ザ・ドリフターズなど、日本のポップス史を代表する作品の録音を手掛けた。川口真や筒美京平ら作編曲家からの信頼を集めた「伝説のエンジニア」と称されている。
2018年には名盤といわれるレコードの制作秘話をつづった『音職人・行方洋一の仕事 伝説のエンジニアが語る日本ポップス録音史』(DU BOOKS、税別2200円)を出版。ノーチラスカフェや筑波学院大学(つくば市吾妻)で録音の歴史を語るセミナーの講師も務めていた。
阿見町の永吉和成さんは「オーディオ好きで、中学の時から行方さんの名前を知っていた。ノーチラスカフェでセミナーをやっていることを知り、月1回参加させていただいていた。雲の上のような存在の方で、まさかここで会えるとは思っていなかった」と思い出を語った。
東京都から参加したドラマーの束田大介さんは、行方さんが亡くなる1年ほど前から録音の技術について習っていたという。「行方さんのお仕事にはナラティブを感じる。ナラティブとは文化、世界、物語のこと。作品が面で感じられるエンジニアさんで、ここ(土浦)にいらっしゃると聞いて、会わなくてはいけないと車を飛ばして来た。日本が積み重ねてきた音楽の歴史の中のお一人だと思う。他の人から学べるものではなく、何度でも教わりに来ようと思っていた。一生分の勉強をさせていただいた」と感謝の気持ちを話した。(田中めぐみ)