金曜日, 8月 22, 2025
ホームコラム認識の対立を克服するには? 《文京町便り》4

認識の対立を克服するには? 《文京町便り》4

【コラム・原田博夫】2月24日以降、ロシアのウクライナ侵攻の報道に接していると、戦争の背後に潜む正義は、時代や場所、あるいは人や組織で異なっていることが分かる。侵攻したロシアやプーチンには、少なくとも自国民向けの必然性や正当性があるはずである。

ロシアがこのような暴挙に至った経緯や背景は必ずしもつまびらかではないが、ここ数年来、米国やNATO(北大西洋条約機構)によるロシアへの圧力・圧迫があった(と、少なくともロシアおよびプーチンが思い込んだ)ことは確かである。その意味では彼らには、ゆがんでいたにせよ、なにがしかの必然性があったはずである。それなくしては、このように大規模な「特別軍事作戦」(一方的な侵略)を決行できない。

対して、この侵攻は、侵攻されたウクライナのみならず、EU(欧州連合)、NATO、米国や日本などの民主主義国にとって全く理解できない暴挙である。

この認識の対立構造は、それぞれの国民世論にも反映していて、ロシア国内の世論調査では(国内世論の操作が行われている上に、政府系の御用調査機関と揶揄(やゆ)されているが)、今回の特別軍事作戦は相当の支持を得ている。たとえば、全ロシア世論調査センターの3月17日調査やレバダセンターの4月21~27日調査では、いずれも「支持する」が74%に上っている。

他方で、国連総会でのロシアの軍事行動への圧倒的な非難決議(3月2日の非難決議への賛成141カ国、反対5カ国、棄権5カ国)に見られるように、国際政治・国際世論はロシアへの非難では歩調を合わせている。

関係者・当事者の「良識」に期待

当然ながら、ゼレンスキー政権に対するウクライナ国民の支持は高い。2019年4月の大統領選挙では73%の支持を得て当選したものの、次第に支持率を下げ、ロシア侵攻前は30~40%の支持率に低下していた。それが侵攻直後の2月26~27日調査では91%に跳ね上がっている。

また、米国、NATO各国や日本でも、それぞれの自国政府の対応には、一定の支持が集まっている。ただし、ドイツでは、5月8~15日に実施された州議会選挙では、シュルツ首相の所属する国政与党の中道左派・社会民主党が大敗しているが、この批判票は、ウクライナへの武器供与の判断の遅れなどに起因しているようなので、少なくともロシア批判に揺るぎはない。

こうした対立状況をどう克服させるか。伝統的・歴史的には、相手側を徹底的にたたくというよりも、ある段階・時点からは、緊密な外交交渉や経済関係・文化交流などの相互依存を深めることで融和させる手法が有効だと理解されてきた。しかし現下の厳しい情勢は、それもむなしい経験知・願望かもしれない。

では、どうするか。私は、関係者・当事者の「良識」に期待したい。漠然とした概念かもしれないが、それ以外には、少なくとも私には、現状を突破する出口が見えない。(専修大学名誉教授)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

6 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

6 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

小田の祇園祭 つくば市無形民俗文化財に

まつりつくばで大獅子が披露 つくば市教育委員会は22日、毎年7月に小田地区で催されている民俗行事「小田の祇園祭(ぎおんまつり)」を同日、市の無形民俗文化財に指定したと発表した。江戸時代に始まった小田八坂神社の行事で、①神輿(みこし)の巡幸②大獅子の巡幸③神輿と大獅子がせめぎ合う「顔合わせ」④お囃子(はやし)の演奏から成る。特徴的な行事や芸能を備えることなどから指定された。 市無形民俗文化財の指定は合併前の1986年2月以来、9件目。市文化財の指定は85件目。23、24日、つくば駅周辺で開催される「まつりつくば」の23日夕方のパレードで、同祇園祭の構成要素の一つである「小田の大獅子」が披露される。 市文化財課によると、小田地区東部にある八坂神社は江戸時代初期の1651年に創建された。江戸時代中期の文書に神輿の巡幸や太鼓の使用が確認できることから、祇園祭は創建のころから実施されていると推測されるという。現在は7月の第3土曜日に開催され、小田東部区、八坂神社お囃子保存会、小田大獅子保存会の3団体が担っている。 神輿の巡幸は、昼間から夕方に小田地区東部を巡行し、夕方までに東部の一時休憩場所である御仮屋(おかりや)に戻る。神輿の巡幸は現在、東部区が担当している。 大獅子の巡幸は、獅子頭に続く長さ約10メートルの大きな胴体を約30人で上げ下げし、蛇行させながら、小田地区中部を昼間から夕方に練り歩く。起源は不明だが、江戸時代末期の1865年に獅子頭が寄贈されており、それ以降、始まったとみられている。大獅子は毎年、獅子頭に胴体とたてがみを付けて作られる。たてがみは栃木県の鬼怒川中流域で毎年、水草のササバモを採取して作られ、神聖な魔除けとして巡幸の際などに各戸に配られる。大獅子は、戦国時代の小田城最後の当主、小田氏治(うじはる)が戦勝祈願をした姿だとする言い伝えがある。巡幸する大獅子は、江戸時代末期に寄贈されたものが現在も使われている。小田大獅子保存会が伝承している。 東部の神輿と中部の大獅子がせめぎ合う「顔合わせ」は、祇園祭の大きな山場となる。東部と中部の境界で夜8時ごろから5回行われる。大きな歓声が沸き上がる中、神輿と大獅子が4~5メートルの高さに持ち上げられ、高さを競って張り合う。江戸時代末期から近代に間に始まった行事だと推測されるが、古事記や日本書紀の神話、スサノオノミコトとヤマタノオロチの争いを模したものと言い伝えられ、荒ぶる力のぶつかり合いと対抗で災厄を撤退させる夏の鎮送儀礼といえる。 顔合わせの後、神輿は八坂神社に帰り、本殿に収められる。この宮入りの間、荒ぶる魂を鎮めるお囃子「御神輿(ごじんこ)囃子」の演奏が続けられる。江戸時代中期の文書に太鼓を使用した記載があることから、この頃に起源をもつと推測される。お囃子の伝承と顔合わせ等、夕方以降の東部での行事は八坂神社お囃子保存会が主に担当している。 市無形民俗文化財の指定について市文化財課の石橋充課長は「地域の方々が伝統的な民俗行事を残していこうと努力しているところなので、市としても未来に継承できるよう支援していきたい」と話している。 ➡小田祇園祭の過去記事はこちら(2018年2月25日付、23年7月15日付)

23、24日はまつりつくば ごみ袋「もってかえる」を1万枚配布  

つくば市最大の祭り「第42回まつりつくば2025」(まつりつくば大会本部など主催)は今年もつくば駅周辺を会場に、23日と24日の2日間開催される。つくばエクスプレス(TX)開業20周年を迎える今年は、TXを運行する首都圏新都市鉄道がパレードに参加するほか、記念グッズが大清水公園で販売される。今年新たに、来場者に飲食容器などのごみを持って帰ってもらう啓発を実施し、カエルのイラストがデザインされ「もってかえる。」と書かれたごみ袋を1万枚配布する。今年も例年と同規模の48万人の来場者を想定している。 メーンの「まつりパレード」は、両日とも午後4時から土浦学園線の東大通りと西大通りの間で実施され、大ねぶた4基と中小ねぶた5基が繰り出す。今年の新作として十和田湖や八郎潟、田沢湖の竜神「八郎太郎」のねぶたが登場する。ほかに、40年前の1985年開催のつくば科学万博で披露された万博山車や市内各地区のみこしが練り歩く。25日は万灯みこしが加わる。 11エリアで 会場は駅周辺の11エリアに分かれる。▽つくばセンター広場と大清水公園の「まんぷく広場」には市内のグルメや特産品が勢ぞろいする。▽市中央図書館からつくばエキスポセンター前の遊歩道、つくば公園通りでは「アートタウンつくば 大道芸フェスティバル」が開催され、中国雑技芸術団など大道芸のパフォーマンスが披露されるほかアート作品の販売される。世界の料理が楽しめる「ワールドレストラン」なども催される。 ▽科学のまちつくばならではの「スーパーサイエンスパーク」は、つくばセンタービル3階のつくば市民センター・コリドリオ大会議室や、ノバホール小ホールなどで開催される。分身ロボットを操作して迷路にチャレンジしたり、分身ロボットのツアー体験、並木中等教育学校や茗渓学園による工作教室などが催される。体験はいずれも無料で、両日とも正午から整理券を配布する。 ▽つくば駅に隣接する中央公園では福祉団体などの活動を紹介する「ふれあい広場」を開催。▽つくば国際会議場隣の竹園公園ではダンスフェスティバルのほか、さまざまなスポーツを体験できる「スポーツパーク」を催す。▽つくば駅前のクレオ前広場では屋台などが並ぶ「トナリエつくばスクウェアうきうき広場」を開催。▽つくばセンター広場特設ステージでは、園児や子供たちによる音楽やダンスのほか、トップ・ウクレレ奏者の名渡山遼さん、シンガーソングライターの澤田千加子さん、地元つくば市出身の演歌歌手 水城なつみさんなどが登場する。▽昨年始まった「つくばのおさけで乾杯エリア」のほか、今年からは「行政PRブース」や「協賛出店ブース」なども用意される。 今年の新たな企画としては「ごみ持ち帰り啓発」が実施される。まつり会場は2030年までに二酸化炭素排出量実質ゼロを目指す脱炭素先行地域に指定されていることから、ごみゼロを目指して、「もってかえる。」とデザインされたごみ袋1万枚を大会本部など計4カ所で来場者に配布し、ごみを持って帰ることを呼び掛ける。ただしごみ箱は撤去せず、例年通り設置するという。 市環境衛生課の木村憲一課長は「今年はごみ持ち帰り元年にしたい。まずは来場者に慣れてもらうという意味でのPRであり、ごみ問題に意識を高めてもらえれば」と話す。 暑さ対策としては、つくばセンタービル1階と竹園西児童館に救護所を設置する。医師や看護師が常駐し、救急車も待機する。さらに会場内に休憩所やミストシャワーも用意する。 まつりのポスターやちらしのメーンデザインは、市内3カ所に物流倉庫を構えるZOZOが担当した。まつりつくばのごった煮感をイメージしたデザインだという。 まつりつくばは1981年、合併前の旧桜村の市民有志が大清水公園で開催したのが始まり。コロナ禍の3年間は開催されなかった。近年は48万人の規模で開催されている。(榎田智司)

展望台と滝がある松見公園《ご近所スケッチ》18

【コラム・川浪せつ子】松見公園(つくば市天久保)は、TXつくば駅から車で数分の所にあります。1976年に完成したそうです。高さ50メートルの展望台がボトルオープナーの形をしており、「栓抜き公園」という愛称で親しまれています。上からは筑波山から研究学園まで一望できます。展望台の下には、たくさんの鯉がいる大きな池、その池に注ぐ滝があります。 今回は滝がテーマなのですが、描きあげるのに苦悩しました。その理由は、水がたくさん流れているわけではなくて、どのように滝と分かるように描けるかでした。結局、水量を増やして描くことにしました。見に行かれた方は、「実際はチョロチョロなのかぁ~」と思われるかもしれません。 今回は「絵を描くとは?」に悩みました。結局、写真は真実を写しますが、絵は「好きでいいじゃん! 心象風景でいいじゃん!」ということになり、やっと描くことができました。つくば周辺の絵を描いていますが、「ウソ」ではなく「心の絵」ということです。記録画とは少し違いますが、これからも「つくば周辺の良さを描く」をテーマにします。 下の絵は、トップの滝の上の所です。小さな滝があり、手前には渡れる飛び石が配置されています。公園の周りはメディカルセンター病院はじめ、建物ばかりですが、この空間は旅に行ったように思えるステキな場所です。(イラストレーター)

ペット学校→日本語学校→次は?東郷サンスイG代表【キーパーソン】

サンスイグループ(東郷治久代表、本部・つくば市小野崎)はいろいろな事業を展開している。新しい分野は2018年春に開校した日本語専門学校だが、本部敷地内にある校舎が手狭になり、別の場所に移すことも考えているという。同グループの歴史と現状、生徒が増えている日本語学校を今後どう展開するのか、東郷さんに聞いた。 「ひとつの業種にこだわるな」 サンスイグループは複数の事業で構成されている。本部を置く「つくば山水亭」を核とした飲食事業、筑波山手前にある「わんわんランド」などペット事業、ペット専門学校に日本語学校を加えた教育事業―の3分野だ。 東郷家の事業は、祖父が1919年に常総線水海道駅前に開業した米穀商が始まり(配給制を受け戦後廃業)。常総鉄道の経営にも手を拡げ(のちに京成電鉄が買収)、筑波山神社前にあった旅館山水荘(つくばグランドホテルの前身)も取得。父の代には県内最多の映画館チェーンを経営した(テレビの登場により撤退)。3代目は、飲食事業、ペット事業、学校法人を立ち上げ、神社前のホテルは2023年に米国の投資ファンドへ売却した。 こういった経緯は常陽新聞の記事(2014年6月16日掲載)、本サイトの記事「…米投資会社に譲渡…」(23年8月10日掲載)に詳しい。 「グランドホテルを処分したことで先々代・先代が始めた事業はすべてなくなった。祖父は『ひとつの業種にこだわるな。ひとつ良い時に違うことをやっておけ。9勝6敗でも構わない。商売は失敗してもよい』と常々言い、チャレンジを大事にした。私もこの家訓を胸に刻み、社会経済の変化を読んで新事業を始め、儲からない事業からは撤退した」 日本語学校にはすんなり入れた 1996年に起業した犬の動物園「わんわんランド」の区画には、ペット専門学校、動物病院、老犬介護ホーム、ペット霊園なども併設され、今では猫とも遊べる総合ペットランドになった。これら施設の中で収益の柱になっているのが、2006年に設立したペット専門学校。 「元々ここで働く人に犬について学んでもらう施設があった。それをペットに関心ある人を受け入れる専門学校にしたら大ヒット。発足時16人だった生徒数が今では500人を超える規模になった。これは東京、大阪、名古屋にある類似の専門学校に次いで全国4位。つくば市に何でそんな規模のペット学校があるの?とよく聞かれる」 ここで東郷さんを刺激したのが「ひとつ良い時に違うことをやっておけ」という祖父のビジネス訓。 「ペット専門学校の生徒募集のために高校回りをしていて生徒数の減少を痛感。日本の労働力不足を補うには外国人にも働いてもらう必要がある。そこで時代に合った学校もやろうと日本語学校を立ち上げた。商社で中近東に駐在していた時にアラビア語を勉強させられたこともあり、日本語学校事業にはすんなり入れた」 サンスイグループの日本語学校の定員は県内で最大。開校時40人弱だった生徒数は、今秋にはネパールやミャンマーからの留学生を中心に200人を超える。東郷さんはこれを300~400人規模にしたいという。それには別の場所に新校舎を建てるか、ビルを買って校舎に改修する必要がある。早晩、市内のどこかに大きな日本語学校が姿を現しそうだ。 【とうごう・はるひさ】1973年、東北大経済卒、三菱商事入社。開発建設・エネルギー分野を担当、中東のシリアやレバノンなどに3年駐在。83年に商事を退社、家業の東郷商店に戻り、90年から社長。現在は「つくば山水亭」「わんわんランド」「つくば文化学園」などを束ねるサンスイグループ代表。水海道市(現常総市)出身、在住。77歳。 【インタビュー後記】東郷さんの事業展開の最初の柱をペット関連(ホップ)とすれば、日本語学校はステップ、日本語学校の拡大充実はジャンプになる。ただ、移転先案や新計画案を聞いていると(これはオフレコ)、3段跳びはジャンプで終わらず、4段目もありそうだ。グループの事業構造はこれからも変わる? (経済ジャーナリスト、坂本栄)