大手住宅メーカー・大和ハウス工業(本社大阪市)の茨城県内の支社は、これまで水戸市とつくば市に置かれていたが、この4月に両支社を統合。つくば支社は、新)茨城支社に改称され、旧)茨城支社は水戸営業所となった。今回の組織改革の背景について、八友明彦・茨城支社長(前つくば支社長)に聞いた。
構造変化に対応 県南エリアを重視
これまで両支社の担当エリアは建物の施工やアフターサービスの責任エリアで分けられ、つくば支社のエリアは、筑西市、桜川市、石岡市、小美玉市、行方市より南=太平洋寄りの神栖市、鹿島市、潮来市は旧)茨城支社エリア=だった。今後、県南と県北の「境界」がなくなり、支社と営業所の間で仕事を柔軟に分担する。
これまで契約調印や法令手続などはそれぞれの支社で行っていたが、これからは統合された支社がまとめて行うことになる。これによって、ガバナンス強化と経営効率化を図れるため、管理部門が一本化されるメリットは大きそうだ。
社員配置は、つくばが約170人、水戸が約130人。両支社から引き継いだ社員数だが、同時に、支社にいた大型店舗や事業用建物の設計者は千葉中央支社(船橋市)に移り、設計部門の組織改革も実施された。茨城南エリアや千葉北エリアは、TXや圏央道によってビジネス環境がよくなっており、支社統合は「茨城県内の経済構造の変化を意識したもの」と言う。
八友さんのコメントを補足すれば、茨城の県北エリアのウエイトが低下しているのに対し、首都圏に近い県南のウエイトが拡大していることから、県北⇒県南シフトを敷いたということだろう。
県南は「物流倉庫、データセンター」の適地
冒頭、大和ハウスを「大手住宅メーカー」と形容したが、八友さんの話を聞いて、それは古い知識であることがわかった。昨年3月期の売上高(4兆1300億円)に占める戸建て住宅のシェアは12%に過ぎない。24%の賃貸住宅や8%の分譲マンションなどを入れた住宅関連全体でも半分弱。シェアが大きいのは、19%の商業施設(ショッピングセンターやビジネスホテルなど)、24%の事業施設(工場や物流倉庫など)―と言う。
つくば市では、2008年10月に開業した「イーアスつくば」が大和ハウスのシンボル的な施設だが、今、支社で手掛けている県南・鹿行の大規模施設を3つ挙げてもらった。
食品スーパー・タイヨーが核店舗になる神栖市の複合ショッピングセンター「オークビレッジ神栖」(仮称、今年12月開業予定)。圏央道つくば中央IC近くの西部工業団地で建設中のマルチ型物流倉庫「DPLつくば中央」。同阿見東IC近くに建設中のマルチ型物流倉庫「DPL阿見Ⅲ」―。
八友さんは、県南は工場・物流倉庫の開発が活発化しており、今後も開発の余地があると言う。また、研究機関や工業団地が多い県南には、高圧電力を供給する用意がされており、質のよい電気を大量に使う高度な施設を建設する条件が整っている。今、印西市(千葉県)でデータセンターを建設しているが、県南での展開も考えているようだ。
【はっとも・あきひこ】1988年、中京大学法学部卒、大和ハウス入社。多摩支店(現東京西支社)、横浜支店(現横浜支社)で主に流通施設開発の営業を担当。多摩支店長を経て、2021年4月からつくば支社長。2022年4月、新)茨城支社になったことに伴い、初代支社長。多摩時代、イーアス高尾を手掛ける。1966年生まれ、岐阜県出身。自宅は東京都国分寺市。つくば市に単身赴任。
【インタビュー後記】つくば市での大和ハウスの存在感は大きい。その行動を知ることで県南の経済の変化を知ることもできる。そこで新情報。茨城支社は、南大通りと西大通りがぶつかる現在地から、トナリエ・キュート向かいのTXつくば駅に直結する区画に移転する計画とのこと。(経済ジャーナリスト・坂本栄)