2020年に急逝した、土浦市出身の俳優、三浦春馬さんが32回目の誕生日を迎えるはずだった5日、同市川口の映画館「土浦セントラルシネマズ」に全国から多くのファンが集まった。同館では昨年1月以来、三浦さんの主演作品を上映し続けて、ファンの間で「聖地」と呼ばれている。この日、上映された3作品それぞれの冒頭に、誕生日に合わせて国内外のファンから寄せられたメッセージによる動画が上映され、会場から大きな拍手が上がった。
全国から「故郷」にファンが集う
誕生日の5日は、朝8時半から三浦さん主演で遺作となった「天外者」(2020年公開)を特別上映した。通常は午前11時から「森の学校」(2002年公開)、午後1時から「アイネクライネナハトムジーク」(2019年公開)、3時から「天外者」と、回を追うごとに三浦さんが年齢を重ね、主演俳優としての成長も見届ける上映順になっている。土浦セントラルシネマズの寺内龍地(67)社長は「三浦さんの成長を1日かけて追いかけられる」と説明する。
朝8時、開場時間を迎えるセントラルシネマズには、全国から駆けつけた100人以上のファンが並んだ。「春友(はるとも)」と呼ばれる。岡山県倉敷市の八木鈴恵さん(63)は4月2日から土浦に宿泊し、三浦さんにゆかりのある県内各地を巡りながら、思いを馳せたと話す。

この日のために休みをとったという石岡市の40代の女性は、どんな役でもなりきってしまう三浦さんの役作りの幅広さと、作品の外での口ぶりににじむ優しさが魅力だと語る。
東京町田市の野中英子さん(52)、秀昭さん(54)夫妻は、朝5時に自宅を出て、三浦さんが通った土浦市内の学校を訪ねてから朝一番の上映に駆けつけた。英子さんは「演技に対する真剣さ、ストイックさ、誰に対しても同じように対応する優しさに惹かれた」と話すと、三浦さんを思い返し目に涙を浮かべた。
会いたくなったら会える場所
寺内社長は「土浦は彼の故郷。うちを心の拠(よ)り所にしてくれる『春友』さん同士が、ここで仲良くなっている」と話す。この日、会場を訪れた神奈川県横浜市の梶原織栄さんと栃木県足利市の塩田真紀子さんも、同館の上映で知り合った「春友」だ。2人にとって土浦セントラルは「(三浦さんに)会いたくなったら会える」特別な場所だと思いを込める。
同館では、初主演作品の「森の学校」を昨年1月再上映させたのを皮切りに、現在まで主演の3作品を連続上映し続けている。寺内さんは「足跡を残す意味でも、彼の作品上映を続けていきたい。個人館の強みですよね。シネコンじゃできない」と連続上映への思いを語る。

土浦市出身の三浦さんがデビューしたのは2000年。その後、2002年公開の「森の学校」で映画初主演を果たすと、土浦セントラルは全国に先立ち同作品の上映を開始した。それが縁になり、その後も三浦さんは土浦を訪れた際に寺内さんを訪ねていた。「実直で、表裏がない。それが彼の魅力」と寺内さんが振り返る。
5月8日までは、各回の作品上映の前に、今年の誕生日に向けてファンから募った三浦さんへのメッセージをまとめた、4分50秒の「オリジナル動画」が上映される。同館からのSNSの呼びかけに、欧米やアジアなど世界中から寄せられた3000あまりのメッセージを、寺内さんの娘、杏里さんが動画に編集した。
「彼のファンは、シニアから高校生まで本当に幅広い。それが彼の魅力を表している」として、「普段の上映では、6割から7割のお客さんがリピーターです。本当にありがたいです」と話す。今後については、「三浦さんにとって土浦は故郷。配給会社が許す限り、上映を続けていくつもり」と言い、「会いたくなったら来てください。作品の中で、皆さんを待っています」と呼びかけた。(柴田大輔)