つくばでこの秋最大のアートイベントになると注目されていた「つくばの街と山をつなぐ芸術祭(つくばアートサイクルプロジェクト2021)」が7日までに、開催の延期を決めた。仕切り直しての開催は早くても来春以降にずれ込みそうだが、主催のつくばアートサイクルプロジェクト実行委員会では「いっそうの内容の拡充を図りたい」(野堀真哉さん)と再トライする構えでいる。
芸術祭は14日から26日まで、つくばの街と筑波の山に分散する複数の会場での展開を予定していた。テーマに「アントロポセン-分岐点を超えた景色」を掲げる。アントロポセン(人新世)は、新しい地質年代をさす造語。地質学的な意味づけは「人類の活動が地球規模で環境を激変させ、⻑期的な痕跡を残す時代」。この時代にアーティストは何を感じ表現するのかを問いかけた。
初開催にもかかわらず、参加する作家は35組。国内外から30代、40代の若手が名乗りをあげた。会場はセンター地区(センター広場、県つくば美術館、桜民家園)、研究学園(イーアスつくば内サイバーダインスタジオ)、南麓エリア(筑波山神社、登山道、筑波山温泉江戸屋、旧小林邸ひととき、神郡石蔵シテン、北条川田邸)の3つのエリアで展示を行う計画だった。
実行委員長の野堀真哉さん(37)は、筑波山でゲストハウス「旧小林邸ひととき」を運営する。「つくばという場所で現代アート展を開く意味を提案したかった。地域はホワイトキューブ(白い天井に白い壁の立方体の展示空間)ではないし、アートは主役ではないけれど、この地に確実に残される表現を五感を使って受け止めたい」と運営委員長の山中周子さん(ネオつくばプロジェクト代表)らとプロジェクトを進めてきた。
8月末まで150万円を目標にクラウドファンディングを募集、目標に及ばなかったが142人から114万円余を集めた。9月には会期中各会場を回るための共通パスポート(1500円)の販売も準備していた。運営ボランティアの募集にも、手応えがあったという。
18日のトークイベントは催行
しかし、新型コロナの感染拡大で緊急事態宣言が発出され、県境をまたぐ形となる作家たちの移動も困難となった。会場のひとつ桜民家園は管理するつくば市側から使用が差し止められ、代替会場も見当たらなかったことから、9月初めの会議で延期を決めた。
18日午後5時から、サイバーダインスタジオで予定していたトークイベント「地域×アート」は、オンライン開催で実施される。
延期の日程や内容は作家たちとの仕切り直しになるが、メーン会場のひとつ、県つくば美術館の予約が再調整となることから、開催は早くても来年3月以降となる見込み。改装を控えているつくばセンター広場での展示についても、出展場所の変更や状況を生かした検討を講じるとしている。協賛者やクラウドファンディング支援者には決まり次第連絡を取るという。(相澤冬樹)
詳細情報の確認は「つくばアートサイクルプロジェクト2021」のホームページで。