茨城県立医療大学(阿見町)の「アイラボキッズ」活動から生まれた絵本の原画による「子どもたちのための科学と医療のイラスト展」が18日から、つくば市天久保のギャラリーYで始まる。同市在住で絵本作家をめざす島本真帆子さん(51)にとって初の個展となる。
科学の巨人、アルキメデス、ガリレオ・ガリレイ、マリー・キューリー、レントゲンらの肖像画をはじめ、動植物や医療器具などを丹念に描いたイラスト多数を展示する。島本さんが長年描きためた長女の成長を追う色鉛筆画のコーナーも設ける予定だ。
島本さんは、東京理科大卒の元薬剤師。「どういうわけか化学だけは得意だった」ため、親の勧めで薬学部に進んだが、薬局勤務は今一つ性に合わなかったそう。「数学と美術はいつも赤点ぎりぎりだった」のに、デザイン専門学校で学び直した経験もある。結婚後、娘が生まれ、その寝姿や仕草をスケッチしているうちに絵の上達に気づいた。
自宅をアトリエに、4コマ漫画を同人誌に投稿するなどしていたが、今は絵本作家としての自立を志す。「10冊ぐらいに出来上がったら出版社に持ち込もうと思っている」という絵本は、最近2年間、医療大学の「アイラボキッズ」活動の中から生まれた作品だ。
小学校に出前授業「アイラボキッズ」
同活動は、地域の小学生対象に医療と科学の体験教室の開催を意図し、20年度から医療大の地域貢献研究費の助成を受けて活動を開始した。大学内にあるシミュレーション教育実習室「あいらぼ」に子供たちを招き、科学実験や観察会を行う予定だったが、新型コロナ感染拡大の影響で、阿見町立君島小(秋山美穂校長)への出前授業としてスタートした。
教室は、医療大放射線技術科学科の鹿野直人准教授がまとめ役になり、毎回テーマを決め体験教室と関係する科学者のお話との2本立てで行う。昨年10月の1回目では「霧箱とレントゲン」と題し、蒸気の凝結作用を用いて荷電粒子を検出するための装置「霧箱」で放射線の飛跡を観察した。島本さんはドイツの物理学者、レントゲンのエピソードなどを紹介する絵本を副読本として制作し、自ら児童に読み聞かせた。

2回目ではガリレオ・ガリレイを取り上げ、3回目は芳賀和夫さん(芳賀サイエンスラボ所長、元筑波大学教授)を特別講師に、折り紙で正五角形作り(オリガミクス)を行った。21年度は5月を休止としたものの、6月と7月は開催。島本さんは毎回体験型の実験を考え、絵本を手作りして開催に臨んでいる。
君原小は全校の児童数が65人。教室で「密」にならないよう、1日3グループに分けて日程を組んでいる。「学校は(20年度に)小規模特認校になったばかりで、体験教室でアピールしたい意向がある。町にはもう2、3校増やしてほしい要望もあるみたい」だそう。ただ、実験装置づくりが大変で、行政からの助成頼みには限界を感じている。
「展覧会はやっぱり子供たちに見てもらいたい。コロナ禍でいっぱい来てねとは言いにくいけど、初めての個展だから、そんなに集まらないですよね」と控えめな期待をふくらませた。(相澤冬樹)
◆島本真帆子「子どもたちのための科学と医療のイラスト展」 18日(土)から26日(日)まで午前11時~午後7時、つくば市天久保1丁目グリーン天久保2階、ギャラリーY(電話029-852-1930)