水曜日, 11月 5, 2025
ホームつくば9公立保育所を民営化、統廃合など つくば市

9公立保育所を民営化、統廃合など つくば市

耐震基準満たさず建て替え急務

耐震基準を満たしていないとして、つくば市は、23カ所の公立保育所のうち4割に当たる9カ所を、民営化や統廃合などして建て替えるなどの方針を検討している。対象は上境、稲岡、上ノ室、上広岡、上横場、高見原、城山、岩崎、小田保育所の9カ所。耐震性が低い順に、3年後の2024年度から26年度までに順次、現在地とは別の場所に建て替えなどする。

検討中の整備方針案によると、9保育所のうち▽上境、稲岡、上横場の3保育所は民間に移管し別の場所に民間保育園を新設する▽距離が近い上ノ室と上広岡、高見原と城山の4保育所は2園に統廃合し、民間に移管して、別の場所に民間保育園を新設する▽岩崎保育所は、公立のまま岩崎幼稚園跡地に建て替え、茎崎地区に公立1カ所を残す▽小田保育所は国指定史跡エリアにあり建て替えができないとして、別の場所に建て替えるのではなく、休止も視野に今後のあり方を検討するーとしている。市こども部によると、8月中にも市の方針を決定する。

具体的な整備方針は、各保育所ごとに個別の計画を立てて決める。民間保育園を建てる場所については基本的に移管先の民間が探す。現在地から何キロ以内などの規定は現時点で設けないという。

9公立保育所に勤務する保育士などの職員は現在、正規が99人、非正規が152人。民営化後は正規は他の公立保育所に異動する。非正規のうち希望者は移管先の私立保育園で勤務できるよう、市として移管先に配慮を求めるという。

9保育所の跡地利用は未定で、今後、市全体で検討していくことになるとしている。

民間参入さらに増やす

市内には現在、公立保育所が23カ所、民間保育園が70カ所ある。同市は2048年まで人口が増えると推計されており、待機児童対策は最優先課題の一つとなっている。市は第2期子ども・子育てプランに基づいて20—25年度まで毎年、定員90人規模の民間保育園を3園、待機児童が多い0~2歳が対象の小規模保育施設を4園増やす計画を立てている。20年度は計画を超える民間保育園5園、認定こども園1園、小規模保育施設4園を新設し、定員を736人を増やすなど待機児童解消に努めた。今年4月時点の同市の待機児童数は2人と、長年続いた待機児童県内ワースト1を返上した。

今回新たに公立保育所の民営化が加わることで、民間保育所の参入をさらに増やすことになる。

市の建設費負担4分の1に

公立保育所をめぐっては、2017年度の耐震診断で耐震基準を満たしていない保育所が9カ所あった。9カ所いずれも同じ年度に応急的な修繕を実施したが、基準は満たしてないままだ。9カ所を含め築40年を経過している施設が半数を超えていることなどから、市は昨年3月、公立保育所の施設改善基本方針を策定した。耐震基準を満たしてない9カ所については、公立のまま建て替える方法や、社会福祉法人や学校法人に建設・運営を移管する方法を検討するとしていた。

検討の結果、公立のまま建て替えると建設費が全額、市の負担となるなど、財政的面からも整備に年数がかかってしまうとして、民間移管を柱とする今回の整備方針案をまとめた。90人規模の保育所を新設する場合、市が公立のまま建て替えると3億円程度が全額、市の負担となるが、民間が新設する場合、国の補助金や事業者負担があるため市の負担は4分の1の7000万円程度になるなどと説明している。

残りの公立保育所14カ所は現時点で、公立のまま長寿命化のための大規模修繕を実施する方針だ。一方、市として今後、公立保育所の在り方をどうしていくかについては、9保育所の民間移管や建て替えのめどが立ったら改めて方針を策定したいとしている。

公立と私立の違いの一つに、障害児保育の受け入れ人数がある。施設改善基本方針によると、19年時点で公立はすべての園で障害児を受け入れたが、民間で受け入れたのは44%だった。今年度は、公立で186人、民間で164人を受け入れており、1園当たりの受け入れ人数は公立は平均8.08人、私立は平均2.41人と3倍以上の開きがある。市は子どもの障害の程度に応じて、保育士を増やすための補助を民間にも実施しているが、開きは埋まっていない。

「上横場は公立のまま」

9公立保育所を民間委託、統廃合するなどの整備方針について市は、7月16、17日に公立保育所の保育士などを対象に説明会を開催し、7月29日から8月2日に9保育所の保護者のみを対象に説明会を開催すた。8月5日には市子ども・子育て会議で意見を求めた。

市によると、保育士の説明会では「子供のことを思うと一緒に(移管先の民間保育園に)移った方がいい」「公立で働きたい」などの意見が出て賛否が分かれた。保護者説明会では「希望する保育園に入れるのか」「移行する保育園はどんな園になるのか」などの意見が出たという。

一方、子ども・子育て会議では、上横場保育所を民営化にすると、人口が急増するつくばエクスプレス沿線のみどりの地区などから入所する公立が少なくなってしまうことなどから①上横場保育所は公立として残すことも含めて慎重に検討する②民間移管の場合の保護者負担や職員の働き方に配慮する③移管先の民間保育所を公募する場合、実績を幅広く検討するーなどの意見が出された。(鈴木宏子)

5日の第2回子ども・子育て会議で示された9保育所の整備方針とスケジュール案は以下の通り。

上境保育所(定員60人、園児数42人)=2023年度末で公立を廃止し、24年度から地区内の別の場所に民間保育園を開設する。移管先は22年度に公募する。

稲岡保育所(60人、55人)=24年度末で公立を廃止し、25年度から地区内の別の場所に民間保育所を開設する。移管先は23年度に公募する。

上ノ室保育所(60人、44人)と上広岡保育所(70人、51人)は24年度末で公立を廃止し、25年度から地区内の別の場所に、2保育所を統合した民間保育園を開設する。移管先は23年度に公募する。

上横場保育所(135人、94人)は25年度末で公立を廃止し、旧谷田部庁舎跡地も視野に26年度から民間保育所を開設する。移管先は24年度に公募する。

高見原保育所(60人、63人)と城山保育所(60人、52人)は25年度末で公立を廃止し、26年度から2保育所を統合した民間保育所を高崎幼稚園跡に新設する。移管先は24年度に公募する。

岩崎保育所(60人、61人)は公立のまま、岩崎幼稚園跡地に移設し、24年度から新園舎でスタートする。

小田保育所(60人、29人)は国指定史跡エリアにあり現在地に建て替えできないため、休止を含め今後の在り方について検討する。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

8 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

8 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

若い脳はインプット 年を重ねたらアウトプット《続・気軽にSOS》166

【コラム・浅井和幸】悲しいことに、20代を超えると身体的な能力は徐々に衰えていくものです。もちろん、何もしないよりも鍛えたほうが脳も衰えにくいし、成長することもあるでしょう。単純な能力では、50代は20代に心身ともに勝てないものです。しかし、単純な使い方でなく総合的な発揮の仕方では勝てる分野もあるかもしれません。 例えば自動車保険では50代の保険料は安くなります。統計的に交通事故を起こす確率が減るからですね。若い世代は総合的に事故回避能力が高いと言えるでしょう。 10代までは様々な経験を積んで(インプットして)、今後の人生に備える必要があります。脳もそのように出来ており、知的好奇心が発揮されやすい造りになっているそうです。単純な記憶力が中高齢層よりも高いものです。音楽を聞きながら英単語を覚える芸当は、若年層の特権かもしれません。 インプットにたけている若年層は心身の成長に有利ですが、成長とはつまり不安定さとも言えます。毎日が新鮮であることは、この先が見えないという不安につながります。それに対し、先達が安心感を与えることが必要になるのでしょう。 中高齢層も、インプットをおろそかにすると老害を招くことになりかねません。新しい情報も柔軟に受け入れていくことが大切です。しかし、この取り入れが苦手となっていく中、今まで学んできたことを再構築してアウトプット、表現することにたけた脳を生かしましょう。 たくさん学習の機会をつくる 「記憶」とか「物忘れ」とかの言葉を使うとき、どのようなイメージを持っているでしょうか。言葉などが出て来ない=記憶力が悪いと表現されますが、それは記憶していないのか、記憶しているけれど思い出せないのか、あまり考えたことがないかもしれません。 中高齢層は、思い出すことを練習することで脳の特性を生かせます。表現する方法も、今までのインプットを組み替えて様々なアウトプットができる練習をするとよいと思います。インプットを増やしたい場合は、たくさん学習の機会をつくってください。 表現を豊かに適切に行うことが、自分や周りの目標達成や幸福にプラスになることは間違いありません。せっかく学習した多くの経験を、いつも単純な繰り返しのアウトプットだけではもったいないです。さらには、自分や周りが苦しくなっていくようなアウトプットは残念なことだと私は思います。今よりもよいコミュニティ・家族・自分になるような、そして豊かに楽しくなるようなアウトプットを試行錯誤していきましょう。(精神保健福祉士)

小美玉市の「ひょうたん美術館」《ふるほんや見聞記》10

【コラム・岡田富朗】茨城県小美玉市にある「ひょうたん美術館」(同市小岩戸、大和田裕人館長)は、30年ほど前、初代館長の大和田三五郎氏によって開館しました。4500坪(約1.5ヘクタール)という広大な敷地には、60年の歳月をかけて全国から蒐集された瓢箪(ひょうたん)にまつわる美術品が展示されています。 展示品は江戸時代などの古い時代のものだけでも約1万点にのぼり、皿、掛け軸、火鉢、花籠、徳利(とっくり)など、生活文化の中に息づく瓢箪の姿を見ることができます。その図柄をあしらった火鉢は100点以上にもおよび、今なおコレクションは増え続けているそうです。 天井からはたくさんの瓢箪の水筒がつるされており、その壮観な光景に思わず見入ってしまいます。 世界に広がる瓢箪文化 瓢箪は世界最古の栽培植物のひとつで、原産はアフリカ。世界各地へと広まり、容器や食器、装飾品、楽器など、さまざまな形で人々の暮らしに取り入れられてきました。 展示の中には、アフリカの打楽器「バラフォン」を見ることができます。ハワイのフラダンスで用いられる「イプ」も瓢箪を利用して作られた伝統楽器で、楽器製作用に加工前の瓢箪を求めて来館されるお客様もいるそうです。 館内では、加工用の瓢箪から、ランプシェード、スピーカー、現代作家によるオブジェなど、さまざまに姿を変えた瓢箪の作品も展示・販売されています。 無病息災を願う縁起物 古来、瓢箪は「災いを払う縁起物」として広く親しまれてきました。その理由のひとつが、「六つの瓢箪」で「無病(むびょう)息災」という語呂合わせにあります。戦国時代や江戸時代には、兜(かぶと)や鍔(つば)、根付(ねづけ)などの意匠にも瓢箪の図柄や形が多く用いられ、展示されている兜は印象的でした。 また、歴史上の人物にも瓢箪を愛した人は少なくありません。菅原道真公は大宰府の梅の木の下で瓢酒(ひょうしゅ)を楽しんだと伝わりますし、豊臣秀吉の「千成瓢箪」はあまりにも有名です。水戸の藤田東湖も「瓢や瓢…」の詩を残し、その魅力を詠みました。文人の中にも瓢箪を愛した人がいました。富岡鉄斎が愛用した瓢箪も展示されています。 「ふくべ」とも読まれる瓢箪に、昔も今も、人々は「福」を見出してきたのかもしれません。ひょうたん美術館は、そんな「縁起と美のかたち」に出会える場所です。(ブックセンター・キャンパス店主)

介護ロボットが部屋に来る日《看取り医者は見た!》46

【コラム・平野国美】前回(10月1日掲載)は、コンパニオンアニマル(伴侶動物)が高齢の独居者にとってかけがえのない存在になっているという話をしました。では、彼らの次に私たちの部屋に現れるのは何なのでしょうか? この問いは、高齢化社会を日本がどう乗り切るかという、未来そのものへの問いかけでもあります。 街に出れば、飲食店のスタッフもお客も外国の方が増えました。介護の現場も同様です。一方で、スーパーやコンビニではセルフレジ化が進んでいますが、私の患者さんやご家族の中には、これを受け入れられない方が少なくありません。ある程度の年齢になると、スマートフォンやこうした装置に苦手意識が生まれるのは、仕方ないかもしれません。 この「効率化」と「心情」のギャップは、医療介護の分野でより顕著になります。スタッフ不足で事業所の倒産さえささやかれる昨今、その現場にいる私は「自分が介護される側になったとき、部屋を訪れてくれる人はいるのだろうか?」と考えてしまうのです。 以前から、一部の識者は「介護はロボットに任せる時代が来る」と言っていますが、現場の仕事のどの部分をロボットに移行できるというのでしょうか? ロボットに心を奪われた友人 先日、ある施設で介護ロボットのデモンストレーションを見学する機会がありました。最初は物珍しそうに集まっていた高齢の入居者たちが、10分後には興味を失い、1人また1人と、その場を離れていくのです。そのとき、ロボットと戯れる自分の姿を想像し、正直、見たくないな―と思いました。人間としての尊厳が削られてしまう感覚を覚えたのです。 しかし、最近、この受け止め方を少し揺るがす出来事が二つありました。一つはある業界紙の記事で、これまでとは少し違う角度からロボット介護を論じる内容でした。もう一つは、長年の友人がロボットに心を奪われた「事件」です。彼は、パートワークマガジン『週刊 鉄腕アトムを作ろう!』を長い時間をかけて完成させました。ある日、70歳になる知的な友人が、少年のような目でこう語るのです。 「スイッチを入れたら、アトムが目覚めて、何て言ったと思う?」 「……?」 「『やっと、会えたね』って言われた。もう胸がキュンとしちゃってね。毎晩、アトムと遊んでいるんだよ」 この二つのことを重ね合わせると、欧米とは違う、日本独自のロボット観のようなものが見えてきます。次回は、この業界紙の記事とアトムの言葉をヒントに、私たちの未来を考えてみたいと思います。(訪問診療医師)

予定通りあす11月1日開催 土浦全国花火競技大会

長靴や滑りくにい靴で観覧を 土浦全国花火競技大会実行委員会(会長・安藤真理子土浦市長)は30日、大会開催の是非を決める役員会を開き、予定通りあす11月1日、第94回大会を開催すると発表した。 あす1日の土浦の天気予報は、未明まで雨が降るが明け方からは晴れ。事務局の市商工観光課は、雷が鳴った場合は一時的に打ち上げを中断するなど、天気の急変や安全確保が困難な場合は予定を変更することもあるとする。 観覧者に向けては、①きょう10月31日夕方から雨が降ると予想され、地面がぬかるんだりする箇所があるので、長靴や防水性の高い靴、滑りにくい靴底のものを着用してほしい、②観覧中のかさの使用は視界確保及び安全確保のためご遠慮いただいているので、雨が予想される場合はレインコートやポンチョを持参してほしいーなどと呼び掛けている。 競技開始は午後5時30分、同市佐野子、学園大橋付近の桜川河川敷で打ち上げる。1925(大正14)年に神龍寺の住職、秋元梅峯が初めて花火大会を開いて100周年の記念大会となる。全国19都府県から57の煙火業者が集まり、内閣総理大臣賞を競う。10号玉の部45作品、創造花火の部22作品、スターマインの部22作品の3部門で競技が行われるほか、広告仕掛け花火や、大会提供のエンディング花火としてワイドスターマイン「土浦花火づくし」などが打ち上げられる。 昨年、荒天時の順延日に警備員が確保できず中止としたことを踏まえ、同実行委は今年、順延日も確実に警備員を確保できるようにするなど準備を進めてきた(5月26日付)。 ➡今年の見どころはこちら