県障害者権利条例に基づいて2015年に設置された県障害者差別相談室の2020年度実績報告会が、21日オンラインで開催された。教育に関する相談が増え、相談員は「(障害のある子どもと障害のない子が共に学ぶ)インクルーシブ教育に対する社会の意識が高くなり、普通学校での障害児の支援方法についての相談も来るようになった。幼い頃から障害のある人が身近にいるようになれば、障害への理解が広がるだろう」と話した。
相談室は、条例に基づき県が運営し、障害者や家族、支援者などから、障害者差別に関する相談を受け付けている。相談内容によっては、解決にむけた助言や情報提供、関係者間の調整などをおこなう。例年は水戸の会場で開催しているが、昨年に引き続き今年も、新型コロナの感染予防のため、オンラインで開催された。
報告会には県内の障害者や支援者など約15人が参加した。実績報告後の質疑応答では、参加した障害者などから多くの質問や意見が出され、相談室と障害者などが協力して、差別をなくそうとする姿勢が見られた。
発達障害に対する認識の甘さを反省
昨年度寄せられた相談は68件で、相談室が設置されて以降、最も少なかった。一方、内容別に見ると、教育に関する相談のみが過去2年と比較し件数が増えた。
報告会ではまず、昨年度寄せられた教育に関する相談事例が紹介された。発達障害を持つ子どもが通常の学校で適切な支援を受けられていないという母親からの相談では、相談員の同席の下で、学校や市教育委員会と協議の場を設けた。結果、学校は発達障害についての認識の甘さを反省し、特別支援学校などの専門機関から助言を受けながら、保護者と連携して対応していくことになった。
この事例を受け、報告会に参加した「茨城に障害のある人の権利条例をつくる会」共同代表で、自身も差別解消を推進する障害平等研修の講師として活動する八木郷太さんは「県内の小中学校では、障害者が講師となり、子どもたちと一緒に障害について考える障害平等研修が少しずつ行われている。協力して障害理解を広められたら」と、提案した。
事例集を改定、精神障害を追加
県は差別解消に向けた意識啓発のため、差別についての相談事例集を作成し、県内の福祉関係機関や教育機関に広く配布している。県は今年、事例集を改定した。
報告会では参加した障害者から、「差別されていても、差別に気づかない障害者もいる。事例集は、どのようなことが差別なのかを、障害者にも周囲の人にも知らせる役割がある」「事例集があることで当事者は相談しやすくなる」など、事例集の役割に期待する意見が出た。
一方、担当職員からは「個人情報に配慮したり、障害種に偏りがないように考えながら、事例を選んでいる。今までの事例集には、精神障害の事例が少なかったため、今回新しく掲載した」と、事例集に対する考えが話された。
その他にも、参加した複数の障害者から「一般のタクシー会社でも車いすのまま乗れるユニバーサルデザインタクシーが普及してきたが、運転手が車いすの乗車方法を十分に研修できていないなら、一緒に研修会をやりたい」「差別解消に関する取り組みを話し合う協議会のメンバーに障害者も入れてほしい」などの意見が聞かれ、差別をなくすための行動を県や相談室だけに任せるのではなく、自分たちも協力していこうという障害者らの意識が見られた。(川端舞)