つくば市国松の旧筑波小学校を会場に、29日開催する「魔女のフェスタ」の準備作業が佳境を迎えている。2018年以来3年間、人の手が入らずにいた校舎を利活用する廃校リノベーション企画。フェスタ実行委員会(いしざき緑子代表)は校長室や各教室の大掃除から始め、ほうきの力で学校ばかりか地域社会にも魔法をかけた。
29日は校庭に飲食店のキッチンカーやテントが並び、3階建ての校舎全体に占いや癒し療法、手づくり品、子供向け工作教室のワークショップなどが展開する。10日現在、その数は95店になった。10代から80代の「魔女」が集結する。
いしざきさんは昨年、学校近くの国松地区の古民家に移住して、アロマテラピーの教室「魔女の学校」を開設(2月17日付)。誕生日が4月30日で、ドイツの魔女祭り、ヴァルプルギスの夜にちなむ「世界魔女デー」であることから、自身「魔女」と称して活動を行ってきた。2019年4月には石岡市内で「魔女のフェスタ」を催したことがあり、旧筑波小でも開催を計画した。
「地区に子供たちがいないわけではないのに、放課後や休日に声がしない。校庭に集まって遊ぶ様子がない」のを残念に思ったためだ。
校長室アーカイブス
旧筑波小は、2018年開校の秀峰筑波義務教育学校(つくば市北条)に統合された旧筑波町9小中学校のうちの1つ、筑波山の男体山麓にある。1975年建設の地上3階建て校舎は、耐震構造で上下水道も整ったまま残された。
同市教育総務課によれば、閉校後はグラウンドの手入れ程度の管理しか行っておらず、設備の点検もしていないため、イベント等への貸し出しには原則応じていなかった。学校跡地の利活用については市の公有地利活用推進課が窓口となり、譲渡先などを探しているが、これまで動きはない。
地元区長・区会の協力を条件に、市が貸し出しに応じたことから、いしざきさんは地元の同意を取り付け、フェスタ実行委員会を結成。4月末は農繁期となるのに配慮して、開催期日を1カ月ずらした。石岡開催時の仲間や「魔女の学校」スタッフらの参加で、今年に入って開催準備を本格化させた。
2月、真っ先に行ったのは教室や職員室など校舎内の大掃除だ。徹底した掃除から始める古民家再生の手法を取り入れた。出店者のグループごとに教室を割り振って、窓を拭き、床を磨き上げる掃除は、毎週土曜・日曜ごとに行われた。
すると、ホコリに埋まった校長室はまさにアーカイブス(記録保存所)だった。卒業生を毎年撮影した記念写真や古写真、給食用の食器、卒業記念に学校に贈られたはく製などが次々現れた。これらは一教室分そっくり当てて、資料展示することにした。
卒業生らが黒板に描き残したチョーク絵は、大切に残した。再び日の目を見られるよう手を付けなかった。
交流と活性化の魔法
こうした動きに地元も応じた。卒業生の経営する設備業者がトイレの改修を買って出て、1階の水洗トイレをきちんと使えるようにした。学校に隣接する住宅にあいさつに行くと、自作の化粧品を販売したいと逆に出店を申し込まれたりした。開催日に備えた駐車場も学校周辺に大量に確保できたという。
地元出身のシンガーソングライターの参加で、新たに「魔女の学校」の校歌も制作、CDにして販売することにした。グランドピアノのある3階音楽室では、コンサートのほか「バーカウンターを設けてジャズ演奏も楽しめるよう保健所の許可もとった」(いしざきさん)そうだ。
「これをやりたいと思ったら、自分に魔法をかけて立ち上がることで皆に喜んでもらえるものになっていく。少子化だ、過疎化だと言われ続けた国松地区にも交流によって活性化が訪れるはず」と語る。魔女フェスタは1日限りだが、秋にはハロウィン企画の構想も練っており、さらに魔法をかけ続ける構えだ。(相澤冬樹)
◆魔女のフェスタ 5月29日午前10時から午後5時、旧つくば市立筑波小学校。マスク着用での来場を呼び掛けている。「魔女の学校」ホームページはこちら、「魔女のフェスタ2021」Facebookはこちら。