分解されて筑西市のテーマパーク「ザ・ヒロサワ・シティ」に移設され、組み立て作業中の日本初の国産旅客機、YS-11の機体が11日から、特別見学会でお披露目される。機体の保有者である国立科学博物館(東京、林良博館長)は10日、近隣の子供たちを招き、報道向けにプロペラの取り付け作業などを公開した。
組み立て作業の特別見学会は、同シティ内に設けられた格納庫、航空ミュージアムで、11日から 26日までの期間限定で行う。入場は無料。7月11日は同機の完成した日にちなんでいる。博物館はまた、一般公開に向け難航する資金獲得のため、この日からのクラウドファンディング開始を発表した。
視界確保へクラウドファンディング
YS-11 は1964年に開発されているが、移設されたのは「量産初号機」と呼ばれる機体。現存する YS-11 の中で試作機を除く最古のものという。1965年 3 月に運輸省航空局に納入され、羽田空港をベースに、飛行検査機として 2 万時間を越える飛行実績を有した。
1999年 1 月の退役後、機体は同博物館の保有となり、20 年にわたり羽田空港で整備・保管されてきた。YS-11の中でも記念碑的価値が高いとされ、日本機械学会の「機械遺産」、日本航空協会の「重要航空遺産」にそれぞれ認定されている。
羽田が手狭になり、保安上の理由などから移設が図られ、同シティで受け入れることとなった。筑西市の廣澤グループが100万平方メートルの敷地に鉄道車両などを保存展開中のテーマパークで、格納と展示のため航空ミュージアムを設置。機体は胴体と主翼、尾翼、プロペラなどに分解され、全長約26メートルの胴体は3月末に深夜の移送が行われた。
今回の分解・組み立てに当たっては、過去にYS-11の整備等に関わっていた航空会社整備士OBたち有志が特別チームを編成。格納庫で組み立て、記録作業を行い、組み立て完成後、関連資料とともに一般公開する予定だった。
しかし、新型コロナウイルスの影響から、整備関係者の筑西入りが阻まれ、機体の組み立て作業は一時休止され、再開は6月下旬にまでずれ込んだ。さらに同博物館は臨時休館が続き、入場者数制限のために入館料収入が激減、財政状況が悪化した。視界良好とはいえない雲行きだ。
このため博物館は11 日から、クラウドファンディング「YS-11」量産初号機公開プロジェクトを開始する。プロジェクト全体の費用を約8000万円と見込んでおり、その一部3000万円を目標金額とした。資金は、組み立てにかかわる材料費、器具類、人件費などに使用。目標到達にかかわらず、締め切りの11月6日までに集まった金額がファンディングされる。
本機の組み立ては年内終了を目指しており、順次整備、関連展示を準備し、2021年春の一般公開を予定している。
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