土浦市に初の女性市長が昨年11月、誕生した。どのような経験をして市長になったのか、どのような思いを持って市政に取り組んでいるのか。土浦日本大学中等教育学校報道サークルの生徒が安藤真理子土浦市長を訪ね、高校生の視点でインタビューした。[聞き手はいずれも新6年(高校3年)生の坂本恵理さん、石田日菜子さん、笠倉斗真さんの3人、インタビューは3月に行われた]
ー安藤市長はどんな高校生でしたか。高校生の頃から政治のことに興味があったのですか。
特に興味があったということではないんですが、5歳の時から40年間、父(故・井坂信之氏)が市議会議員をやっていて、物心ついた時からそういう家族だったので、選挙が身近だったり、いろんな方が「こういうこと困っているんだよ」と家に来たので、そういうときにお茶出しをしたりしていました。そういう環境だったので、子供の時から意識しなくてもそれが普通という感じでいました。
愚痴ってもしょうがない、自分でもの申す
ー政治の仕事に就こうと決めたのはいつですか。
2007年です。13年くらい前ですね。市議会議員になろうと思いました。結婚して子供が生まれて、子育てをする専業主婦だったんです。当時は、子供が小学生くらいになったらパートでお仕事しようかと軽い気持ちで思っていたんですが、小さい子供がいるので就職もなかなかできなかった。
きちっと仕事をしたいと思ったんですが、なかなか就職できないので、これは私みたいな人もたくさんいるだろう、そういう人が働きやすい職場をつくろうと思って、自分で会社をつくったんですね。その時は私と社員2人の計3人。介護の小さい会社をつくりました。
当時は介護保険制度ができたばかりで、新しい制度だから、いろいろな問題がありました。小さい会社ですけど社員が集まると「この制度のここが良くないよね」とかいろいろ愚痴が出ました。そういう時に「ここでしゃべっていてもしょうがない。どうにかしなきゃいけない。これは国の制度なので国にもの申すしかない」と思いました。
私たちのような者がどうしたらいいんだろうと思った時に、市議会議員をやっていた父が高齢のため引退することになったんですね。介護保険とかそういう大きな問題をどうするか、政治の力を使うしかないと思って、ちょうど父が引退するタイミングと合ったんですけれど、私が市議会議員になって、いろいろなことを市、県、国にもの申していきたいと思ったのがきっかけです。
ー今までの政治家生活の中で苦労したこと、うれしかったことは何ですか。政治家のやりがいはどこにありますか。
ぱっと思いつくのはうれしかったことです。皆さんも町を歩いていたり、生活をしていて「もっとこうしたらいいのに」と思うこと、あるじゃないですか。政治をやっていると、いろいろな方から「これをこうしてほしい」「こうしたらどうか」という提案をもらったり、「困っている」という相談があります。私たちはそれを「なんとかしてくださいよ」「こうしましょうよ」とやっていくんですが、全部聞いてもらえるわけではない。でも、ほんとにそれは大事だねって市や県や国が思ってくれて、私が提案したことが実現して、そしてそれを喜んでくれるのは本当にうれしいことです。
苦労したこと、困ったことは、何度足を運んでも聞いてくれなかったり、いろいろな相談を受けて「私もそうだな、本当に変えてもらわなきゃ」って思うことが、何をしても変わらないとか、解決しないというのは、本当に苦労ですね。
でも政治家としてのやりがいは、自分の提案で街が変わっていく、本当に困っている人たちが「このことをお願いしたら変わった」と言ってくれる、そういうことがあるとやりがいを感じます。市民の声が届くことが、やはりよかったなあと思うことですね。
私しかいない、注目される
ー土浦市初の女性市長ということですが、女性と男性で違いがあると考えますか。男性市長ではできないことは具体的に何かありますか。
男性市長じゃなきゃできないこと、女性市長しかできないことっていうのは基本的にはないと思うんです。ただ、女性の目線じゃないと気付かないことがあると思うんです。私は女性で、母でもあり、子供もいて、女性として働いてきたという視点から、男の人が気が付かないことに気づきます。
具体的に言うと、災害の時、男性が長であると指示、命令は男性の目線ですよね。だけど、細かいことですけど、小さい子をお風呂に入れるにはどうしたらいいか、そのための設備が必要になりますよねとか、女性特有のニーズとかあるじゃないですか。男性はおそらく気が付かないですよね。そういうことも細かい視点でみてあげられます。
子育てに関しても、ただ制度をつくればよいのではなく、例えば、市役所1階に、お母さんが子供連れで来た時に使える遊びのスペースというのがあるんですよ。それを見て「これ?」と思っちゃったんですよね。多分男の人は気付かない。女性として母として「もうちょっと明るく、子どもたちが喜ぶようなものをここへ置かなきゃだめじゃない」って思いました。遊びのスペースもこれから変わります。
ー初の女性市長ということで、周りの印象的な反応はありましたか。
茨城県には44人の市町村長がいますけれども、今、女性市長は私しかいない。どういうことしてくれるんだろうっていう期待もあるし、単純に、何やるの?というような、興味もあると思います。多分、男性市長と同じことを女性市長がやったとしても注目はされると思います。結構取材もされます。土浦をPRしたいので、取材してもらえると土浦が広く発信できてありがたく思っています。(㊥に続く)