県によると、2016年の県内の婚姻件数は戦後最低の1万3201件。1971年の2万件をピークに下降線をたどっている。若者の雇用や収入をめぐる経済環境の悪化が要因とされるが、「イエ」重視の県民性も一因ではないか。独身男女の婚活を応援するNPO法人と、農業後継者に「出会いの場」を提供する官製お見合いの現状など、いばらきの結婚事情を3回に分けてまとめた。
親世代の価値観が壁に
2005年5月に設立したNPO法人「ベル・サポート」(菊地長吉理事長・境町)は県南、県西の未婚者や再婚者を対象に結婚相手の紹介、相談活動、出会いパーティーを開催している。営利を目的としない組織で県内外を問わず入会でき、パーティーは会員でなくても参加可。今年10月31日現在、男性会員は920人、女性は520人。出会いパーティー開催は12年間で819回に及び、成婚者累計は433組に上る。
9人のスタッフが運営を担当。つくば市ケーブルテレビのプロデューサーやアナウンサーの経験を買われた小野史子副理事長は、出会いパーティーの司会進行役を務める他、会員からの相談にも応じている。
小野さんは「433組のカップル誕生は、これまでの会員計約2万3000人の中のわずかな数に過ぎません」と話す。そして「親世代が良いと思っている結婚観を受け継ぎ、それが成婚の壁になっている」とも。地元生まれの長男と長女の多くが「後継ぎ」と「墓守」は自分の役目だと思っているそうだ。結婚は家に縛られず個人の自由と捉える人とは大きく隔たる。
両家の中間に家庭築く
ベル・サポートが相談に乗ったことで、後継ぎ同士ながら結婚に至った事例がある。男性(43)は10年間会員間のお見合いや出会いパーティーに参加したが、親と同居して家を存続する考えに共鳴してくれる女性はいなかった。婚活を諦めかけた頃、菊地理事長から言われた「少子化の影響で(これからは)夫婦2人が互いの両親4人の面倒を見る時代」という言葉にハッとした。
条件を優先して相手を探すより、「この人」と思える相手と出会いたいと思った。その後、守谷で行われた出会いパーティーで知り合った妻(42)も、婿になってくれる男性を条件にしたため相手は見つからなかった。互いにひかれ合い、デートを重ねるごとに人生の良き伴侶の思いを強くした2人は結婚を勇断。双方の両親に「親と家を大切にする」と伝えて話し合いを重ねた。最終的にどちらの親も「子どもの幸せが一番」と承諾してくれたという。
3年前に結婚。両家の中間に家庭を築いた。子どもに恵まれ、4人の親に子育てを応援してもらっている。
小野さんは「かつては男女の仲を取り持つ仲人がいたが、恋愛結婚が一般的になってほとんどいなくなった。子どもの結婚を経験した私たちスタッフが現代の仲人役。人生経験を生かして幸せなカップル誕生を応援していきたい」と語る。(橋立多美)(つづく)