【鈴木宏子】ドローン(小型無人機)を使った配送実験が20日、つくば市研究学園の住宅地で行われた。住宅地上空をドローンが飛行できるよう「空の道」をつくるビジネスを展開するベンチャー企業「トルビズオン」(本社・福岡市、増本衛社長)が、つくば市などと取り組んだ。同社によると大規模住宅地での実験は全国初という。
都市部での利活用見据え
航空法の規制で、住宅地など人口集中地区の上空でドローンを飛ばすには国交省の許可がいる。このため、飛行ルートにある住宅地の地権者に通行料を支払って「空域」を確保しようとした。物流や警備、インフラ点検、災害時の救助支援など、2020年代以降、国交省が都市部でのドローンの利活用を本格化させる「空の産業革命」を見据えた実証実験だ。
配送実験は、五十嵐立青市長がスマートフォンのアプリ機能を使って、商業施設イーアスつくば内のカスミに、おにぎりやリンゴ、バナナなどを注文。カスミが店舗近くの公園に設けられた発着場に商品を運び、トルビズオンがドローンに積み込んだ。さらに損保ジャパン日本興亜の関連会社がドローンを運行し、民間の空き地や住宅地の道路上空約50メートルを時速10~15キロで10分程度飛行して、700メートルほど離れた住宅地内の公園で待つ五十嵐市長に無事、商品を届けた。

都市部でのドローンの利活用を視野に、上空で携帯電話の電波を活用し、だれの土地の上空を飛行したかがリアルタイムで分かる位置情報を取得する実験も同時に行われた。送料として1回500円程度を想定し、80%の400円をドローンの運行料、14%を地権者に支払う通行料、6%を損害保険料や利益として見込んでいるという。
五十嵐市長は「物流業界の人手不足や買い物難民などの課題がある中、ドローン配送は大きなインパクトを与える。(ドローンが飛行する住宅地の)地元同意を得て進めており、これからもていねいに住民合意をとって進めていきたい」などと述べた。トルビズオンの増本社長は「住宅地の真ん中に荷物を届けることができた。大規模住宅地でのドローンの実証実験が、空の道の課金システムのために欠かせない」などと話した。