金曜日, 11月 21, 2025
ホームつくば「交換留職」で組織活性化 つくばのベンチャー 札幌のゲストハウス運営会社と

「交換留職」で組織活性化 つくばのベンチャー 札幌のゲストハウス運営会社と

つくば市天久保でコワーキングスペース「Tsukuba Place Lab」を運営する、株式会社しびっくぱわー(同市天久保)はこのほど、札幌でゲストハウスを運営する合同会社ToGo(札幌市)と、社員を一定期間交換する「交換留職」=メモ=に挑戦している。経営や組織づくりについて互いに学び合い、環境を変えることで社員の意識をリフレッシュすることが狙い。しびっくぱわー代表の堀下恭平さん(27)は「社員だけでなく、組織全体にもよい緊張感をもたらしている」と効果を実感する。

筑波大学在学中の2014年に起業した堀下さんは今年3月、ToGo代表の粕谷勇人さん(26)らと知り合い、経営や社員教育について意見を交わす中で「それぞれ社員を交換したら面白いよね」と意気投合した。

粕谷さんはゲストハウスの業務全般に携わるが「今後の事業拡大を考え、この機に現場をスタッフに任せたいと思い」自分が交換メンバーとして出向くことに。10月25日から1カ月間の予定で、同Labのスタッフとして業務に当たっている。

驚いたのは「ミーティングの違い」と粕谷さん。スタッフ個人が自己実現できているかどうかに焦点を当てる内容に刺激を受け、取り入れたいと考える。

一方、筑波大4年で現在しびっくぱわーのインターン社員、嶋田優奈さん(22)は10月25日から1週間、札幌市のゲストハウス「Wagayado 晴-HaLe-」に行き、掃除や受付に携わった。

「コワーキングスペースと業種は違うが、人のつながりを求めてくる人が多いのは同じ。自分がやったことがゲストに喜んでもらえて、Labでの経験が自分の中にあることを確認できた」と振り返る。数値目標を立てるミーティングの手法もLabで生かしたいと意欲を語る。

現在、Labで働く粕谷さんは札幌から戻った嶋田さんと、それぞれ吸収したことを共有し、お互いの場のクオリティ向上にどう生かすかに知恵を絞る。「残りの日々、ゲストハウスで培ってきたノウハウを生かして、掃除の効率化などLabのオペレーション改善に取り組みたい」と粕谷さんは話す。

堀下さんは「例えば室内のゴミひとつとっても、粕谷さんはゴミ箱までの動線を含めて考えるなど気づく能力がずば抜けており、それがLabのスタッフにもよい緊張感となっている」と効果を実感する。

交換留職について「他の企業からも一緒にやりたいという依頼を受けており、これは地域で(ビジネスの)場を持つ人たちとなら業種を問わずにできると思う。今後、互いに信頼し合える人たちと一緒に取り組み、それにともなって仕事を作り合うことも見込んでいきたい」と堀下さんは展望を語る。

2人の人件費はそれぞれ受け入れ先が負担。粕谷さんはつくば滞在中はしびっくぱわーの社宅に、札幌に実家がある嶋田さんは、自宅から受け入れ先に通った。

同Labは「人と人とを繋ぎ、やりたいことを実現していくための場をつくりたい」と、堀下さんが昨年12月にクラウドファンディングで資金を募り、ボランティアによるDIYで築約40年のビルの2階の一室約63㎡を改修しオープンした。現在、午前7時~午後11時に営業、社会人や学生らが仕事や勉強、打ち合わせなどに利用している。利用料金は学生1日300円、一般500円など。(大志万容子)

 

【メモ】交換留職=学校間の交換留学のように、自社の社員と他社の社員を一定期間入れ替え、交換先企業で実際に業務を経験させる人事研修制度のこと。個人と組織の成長を促し、企業間交流を深める新しい試みとして注目を集めている。

札幌のゲストハウスで受付業務などに当たった嶋田さん(Tsukuba Place Lab提供)
Labでスタッフとともにハロウィーンの飾り付けを行う粕谷さん(同)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

高所作業車から2人が転落 つくば市並木大橋

アームが車線はみだし大型トラックと接触 20日午後0時5分ごろ、つくば市並木4丁目、学園東大通りに架かる並木大橋で、作業員2人が高所作業車のアームの先端に設置されたゴンドラに乗って作業中、アームが隣の車線にはみ出し、走行してきた大型トラックの荷台に接触、ゴンドラに乗っていた20代と30代の男性作業員2人が4~5メートル下に転落した。2人は救急車で病院に運ばれたが、30代男性は重体、20代男性は重傷を負った。2人共、意識はあるという。 つくば市道路整備課によると、工事は同市が発注した橋梁長寿命化補修工事。この日は、東大通りの片側2車線の道路のうち、荒川沖方面に向かう、並木地区の住宅街側の1車線を通行止めにしていた。作業員2人はアームの先端のゴンドラに乗って、橋の底部のコンクリートひび割れの補修作業を実施、ひび割れ箇所に注射器のような注入器具を取り付けて薬剤を注入し、取り付けた注入器具を回収する作業をしていた際、注入器具を回収するためアームを隣の車線の上に動かしたところ、走行してきた大型トラックの荷台にアームが接触した。 転落した作業員2人はいずれも下請け会社の作業員だった。 同課によると、本来、アームを隣の車線の上に動かす際は、隣の車線も一時通行止めにすべきだったが、規制しなかったという。市によると、なぜ車線を規制しないままアームを動かしたかなどの原因は現時点で不明としている。 この事故で、アームが動かなくなり高所作業者の撤収に時間がかかったなどから、荒川沖方面に向かう片側2車線がいずれも、同日午後6時15分まで約6時間にわたり通行止めになった。路線バスと高速バスのバス停3カ所も利用できなくなった。 並木大橋の橋梁補修工事は6月3日に始まり、来年1月30日まで実施される予定。再発防止策として市は同日、元請け業者に対し、工事現場の規制方法の再確認や交通誘導員及び現場作業員に対する安全対策の再教育を指示した。さらに現在、市の工事を受注している全事業者に対し、安全対策に関する指導を徹底するとしている。

地元企業から社協へ 福祉活動への寄付金を贈呈

つくば市に本社を置く関彰商事(本社筑西市・つくば市、関正樹社長)の「セキショウふれあい基金」から20日、同市社会福祉協議会(会長・松本玲子副市長)に50万円の寄付金が贈呈された。20日、つくば市役所で贈呈式が催され、市社協会長の松本玲子副市長は「幅広く、地域福祉への貢献のために有効に活用することで、さらにつくばへ貢献していきたい」と語った。 セキショウふれあい基金は、地域の社会福祉貢献活動を支援することを目的に1999年に創設された。会社と職員のほか、同社の顧客から募った寄付金をもとに、県内外で福祉貢献活動をする団体や自治体に寄付活動を行っている。今年で26年目を迎え、東日本大震災の際には茨城県と福島県いわき市に、2019年の台風19号、23年の台風13号の際には被災した自治体に義援金を寄付した。22年に守谷、常総、坂東、つくばみらいの4市が連携しウクライナ避難民を受け入れた際には、生活支援金として200万円を寄付している。 関彰商事によると、県内に44あるすべての社会福祉協議会に対して、9年かけて寄付を行っていくとし、今年はつくば市をはじめ、阿見町、美浦村、河内町、牛久市に50万円ずつ寄付する。 寄贈式のあいさつで、関彰商事の葉章二常務取締役は「高齢者や障害者、子どもたちなど、地域で支援を必要とされる方々へ幅広く活用されることを希望している。つくば市社会福祉協議会が推進しているさまざまな活動に役立てていただければ」とし、「今後も地域とのつながりを大切にし、地域貢献の一環として社会福祉活動を支援していきたい」と語った。(柴田大輔)

民有地の建物内にセアカゴケグモ 土浦市が注意呼び掛け

土浦市は18日、同市東中貫町、民有地の建物内で、特定外来生物のセアカゴケグモのメス1匹と、卵が詰まった卵のう4個が発見されたと発表した。クモはすでに駆除され、かまれた人や健康被害を訴える人はいない。 セアカゴケグモのメスは毒をもち、かまれると重症化することがある。素手で触るとかまれることがあるため、同市は、見掛けても絶対に素手で触らないよう注意を呼び掛けている。 市環境衛生課によると、17日、建物内にクモが1匹いるのが発見され、セアカゴケグモだと分かり、発見者がクモと卵のうを駆除した。発見者は同日午後5時30分ごろ、市ホームページの問い合わせフォームから市に連絡した。 翌18日午前9時ごろ、連絡を受けた市職員が現地を訪問し、駆除されたセアカゴケグモ1匹と卵のうを確認。県生物多様性センターが同日、セアカゴケグモであることを確認した。 駆除されたメスは体長1センチ弱、卵のうは袋状で、一つの直径が5ミリ程度。クモがどこから侵入したかなどは不明という。 同市内では今年8月、民有地でセアカゴケグモの死骸が発見された。生きた状態で見つかったのは今回が初めて。県内では2013年に神栖市で発見されて以降、各地で目撃されている。 市は、セアカゴケグモを見つけた場合、素手で触らず、家庭用殺虫剤か熱湯、靴などで踏みつぶして駆除し、市環境衛生課(電話029-826-1111内線2459)に連絡してほしいと呼び掛けている。

30年にわたり筑波山を撮影 会沢淳さんが写真展 ダイナミックな自然、見るものを圧倒

18日から 県つくば美術館 30年間にわたり筑波山を撮り続けているつくば市在住の写真家、会沢淳さん(70)の筑波山写真展が18日から、つくば市吾妻、県つくば美術館で開かれている。筑波山の姿のほか、ダイナミックな自然の動きや人々の暮らしを巧みな構図で撮影した70点が展示され、見るものを圧倒する。30年間にわたって撮影した年代、季節、地域など多岐にわたる作品が並べられている。 山頂付近のブナを撮った「白きブナたちの森」は、積雪した筑波山に登り撮影した。「燧ケ池(ひうちがいけ)の榎(えのき)」に写る榎は、今は伐採されたためもう見ることができない貴重な写真だ。「火の神山の神」は、山麓の小田地区で催される伝統行事、どんど焼きを撮った。 ほかに、筑波山神社の祭礼、御座替祭(おざがわりさい)で女体山頂付近で撮った「天近きところで」、山麓の田植えの様子を写した「命を植える手」などが展示されている。 会沢さんは筑波山の写真集を出版している唯一の写真家。1955年北海道三笠市で生まれ、新潟県で育った。千代田写真専門学校卒業後はスペインやモロッコを放浪。帰国し1981年、撮影会社の竹見アートフォトスに入社。84年に独立し、95年に「2億4千万年の神々―会沢淳筑波山写真集」を出版。筑波山の写真展は2008年に東京・秋葉原のつくばエクスプレスプラザで初めて開催して以来、2回目。 つくば市に住み、筑波山に徐々に魅了され、素晴らしさに気づいたと話す。「標高877メートルの低山だが、百名山の一つ。関東平野にそびえる目立つ存在で、万葉集には25首の句が詠まれた。しかし、あまりにも当たり前にそこにある」。 ある時会沢さんは「自分が筑波山を見ているのではなく、筑波山が自分を見ている」という感覚になり、「筑波山に通うしかない」と思ったという。 「撮影中に、凍った地面で転落しそうになったり、中腹の白滝神社の前でシャッターが切れなくなったりなど、危ない目や、不思議な現象にたくさん遭った。やはり神々の山なのだと思い、それから筑波山神社でお参りするようになった。筑波山と対峙すると、山が意思を持っていると感じられる」と話す。 市内から来館した60代男性は「筑波山の写真がたくさん並べてあって楽しい。配列にも工夫があって、とても見やすい。全体として構図が素晴らしくさすがにプロの写真家」と話していた。(榎田智司) ◆同展は11月18日(火)から24日(月)まで、つくば市吾妻2-8、県つくば美術館で開催。開館時間は午前9時30分~午後5時(最終日は午後3時まで)。入場無料。問い合わせは会沢淳さん(電話029-838-2786、メールfffaizawa@yahoo.co.jp)。