【相澤冬樹】遺族から作品の寄贈を受け、10日から「塙賢三展」を開く土浦市民ギャラリー(同市大和町、アルカス土浦1階)で9日、内覧会が開かれた。同ギャラリーに関係者を集め、土浦生まれで「ピエロの画家」と呼ばれた塙賢三さん(1916-1986年)の画業をたどった。3男で、遺作の寄贈を申し出た塙義雄さん(74)=東京都練馬区=が駆けつけ、「ここなら大事にしてもらえると思った。喜んで送り出した」と語った。コミック「ちびまる子ちゃん」の作者で、ちょうど1年前に亡くなったさくらももこさんとの交流に関わる作品も展示されている。

土浦に生まれた塙さんは戦後本格的に絵筆を握り、二科展を中心に活躍した。同市出身の福田義之助、鶴岡義雄らに師事したが、「美術学校を出たわけでもなく独学だったため、それまでの絵画の概念を打ち捨てられた」といい、広い背景の中に人物を小さく配置する構図に新境地を見出した。中でもピエロの描像は印象的で、「ピエロの画家」と呼ばれ、親しまれた。
今回の「塙賢三展」には、寄贈の10点に加え、義雄さん所蔵の18点が展示される。さらに賢三ファンだったさくらももこさんが20歳になった記念に買い求め、大事にしてきた作品「夢のサーカス」が、さくらさんが2007年に描き、義雄さんに贈った「ピエロとちびまる子ちゃん」の絵と合わせて特別出品された。これら画業の変遷をたどる全30作品で構成される。
17年11月にオープンした同ギャラリーの開館記念展「茨城ゆかりの洋画家たち」に賢三さんの作品2点が展示されたのがきっかけ。来場した義雄さんが「自宅での管理が難しくなっている。このまま作品を埋もれさすには忍びない」と申し出た。ふるさとの心地よさが決め手だった。土浦市の美術品収集検討委員会(小泉淳一委員長)が義雄さん宅を訪れるなどし、最終的に10点を選定、4月までに寄贈を受けた。1950年代の作品から1986年作の絶筆(I am Pirrot)までが含まれる。
内覧会で解説を務めた学芸員の萩谷良太さんによれば「ピエロは本来Pierrotでeが抜けたつづりだが、調べると賢三の作品名は二転三転して気まぐれなのもおもしろい。解説を聞く機会があればその辺も楽しんでほしい」という。
◆「塙賢三展~ピエロの画家、ふるさとへ」は8月10日~9月16日(毎週月曜日休館)午前10時~午後6時。入場無料。問い合わせは同ギャラリー(電話029-846-2950)。美術品収集検討委員長の小泉淳一さんによる記念講演会「塙賢三という画家」が25日午後1時30分から、同ギャラリーで行われる。先着50人。