【田中めぐみ】博物館の手話通訳ガイドを育成するプロジェクトが、筑波技術大学(つくば市天久保)で始動している。プロジェクトは、視覚障害者と聴覚障害者が学ぶ同大の生田目美紀教授(感性科学)の研究室が立ち上げた。誰もが分かりやすい展示と案内によって情報のバリアフリー化を進め、みんなが楽しめる博物館を実現していくための一歩だ。
生田目教授の研究室では、水族館や動物園、植物園など科学系博物館で、どのようにすれば情報が分かりやすく伝わるか、また、誰にでも直感的に理解できる情報とはどのようなものかといったことについて研究をしている。
研究室で、全国の科学系博物館に調査を行ったところ、手話通訳ガイドを導入している施設はほとんどなく、聴覚障害者が十分に情報を得られていない現状があったという。
誰もが学びの満足度を高め、博物館を楽しめるようにしようと、プロジェクトを立ち上げた。クラウドファンディング(資金調達)を実施し、6月6月、目標金額を上回る130%の達成率で150万5千円を集めて成立した。
今後は、手話や道具を用いて展示内容を説明するボランティアガイドの育成を目指す。3人を募集するという。博物館の現場で育成に取り組み、アクアワールド県大洗水族館(大洗町)の事例では、手話だけでなく、動画や、3Dプリンタで作成した展示物のフィギュア、ぬいぐるみなども用いて説明を行う。
さらにガイド育成の知見を集め、マニュアルをまとめたい考えだ。博物館側の意向も取り入れながらガイドを育て、ガイドを必要とする全国の博物館とガイドとのマッチングも行う予定だという。要望があれば市内の科学系博物館にもガイドを派遣していきたいと話す。
生田目教授は「博物館の良さはリアルなこと。説明文を読むだけでは得られない発見が博物館にはある。また、来館者が分からないことがあったら質問すると、ガイドは来館者に応じて教え方を変えるなど、人との会話やコミュニケーションの中に新しい学びがある。ICT(情報通信技術)などの技術は今後も進歩していくので心配ないが、技術でコントロールできない部分は人の力が絶対に必要。将来に向けて人材育成が大切と考え、プロジェクトを始めた」と話す。
