【池田充雄】つくば市のコミュニティFMラヂオつくばのパーソナリティで、牛久市在住アーティスト、末石真弓さん(アーティスト名・なる)が常陸太田市で行ってきたワークショップ「おっきなおっきな紙芝居」が、手作りの作品や活動を表彰する今年度のホビー大賞で最高賞の文部科学大臣賞を受賞した。紙芝居を通じて子どもたちが地域の自然や伝統文化に触れ、たくさんのつながりを育んだことが評価された。末石さんは今も牛久と常陸太田を行き来しながら活動を続けている。
末石さんの常陸太田市との係わりは2014年から。地域おこし協力隊として現地に住み込み、絵本と子どもを軸に活動した。3年間の任期中に100以上のワークショップを開き、延べ3500人の参加者と触れ合ってきた。2年目からは同市の市民センターパルティホールとの協働で「おっきなおっきな紙芝居」をスタート。この活動は協力隊の任期を終えた後も続いており、今年5月には4作目の「とうめいな魚」が完成した。
今回は「ふるさとの川」をテーマに、市内全域の小学生からキャラクターとお話を募集。約180のアイデアが寄せられ、それらを末石さんがつなぎ合わせて一つの物語にした。製作に携わったのは「ぬりぬりはりはり隊」の約50人。休日に市内のさまざまな地区から集まって、子どもたちによる子どもたちのための紙芝居を作り上げていった。
完成発表は5月26日、パルティホールのフェスティバルの中で行われた。子どもたちも紙芝居の読み係、引き係、おはやし隊に分かれて参加。おはやし隊は金属のねじ、プラスチックのボウル、紙の筒などを鳴らして各場面を盛り上げた。
例えば主人公の魚は透明なので姿は見えないが、テーマ音によってその存在を知らせてくれる。音楽指導と伴奏はつくば市在住マリンバ奏者の高野綾さん。「子どもたちには身近なものからイメージに合う音を探してもらった。発表では全体の流れや音のタイミングを見ながら呼吸を合わせるため、いつもと違う難しさもあったと思うが、いっそう皆で作り上げた作品になったのでは」と話す。
「故郷を大切にする『郷育』(きょういく)を目指してきた。この活動が10年後の子どもたちの心に温かい思い出として残り、迷ったときに背中を押してあげられたらいい」と末石さん。絵本作家になった理由も、自分が好きで続けられることで子どもたちを笑顔にしたいと思ったから。「私自身も『おかえり』と言ってくれる場所があったから、あちこち飛び回れた。次は自分が誰かにとっての『おかえりなさい』の場所になりたい」という。
