つくば市で最も高齢化率が高い茎崎地区は、皆の困りごとを皆で支え合う活動への関心が高い。21日、茎崎交流センターで「茎崎の高齢者生活支援を考える集い」(市民団体「まちづくり研究会」主催)が開かれ、現在、各自治会などで取り組みが行われている支え合い活動が5例紹介された。市の負担が軽くなり、住民主体の福祉有償サービスを強化しながら支え合おうという新たなまちづくりへの提言もあった。集いには110人が詰めかけた。
支え合い活動を最初に紹介したのは区会連合会長の小原正彦さん。毎年秋に開催される「くきざき夢まつり」を例に挙げ、区会連合会が実行委員に加わって情報を集めたり資金集めに奔走している状況を報告。「茎崎には人と人がつながる土壌がある」と話した。
宝陽台の伊儀宜夫さんは、団地住民の半数を占める高齢者が相互に助け合う宝志(ほうし)会活動を報告した。電球の取り換えやごみ出し、送迎などの生活支援と、自治会行事などに参加するとポイントが貯まる健康維持活動が柱。「人と交わる環境づくりがテーマ」と語った。
桜が丘団地の落合正水自治会長は今年度立案した高齢者支援活動について述べた。庭木の手入れや草刈り、大工仕事、災害時の要援護者支援が主な活動内容で、送迎や介護の手伝いも視野に入れている。活動は自治会福祉部と登録制ボランティアとの協働で実施するという。
今年度から、ふれあい相談員(社協の地域見守り事業の一環)として森の里団地の見守り活動をしている倉本茂樹さんは、個人情報保護の壁があって支援が必要な高齢者にたどりつけない、また団地には約1400人の高齢者がいるが見守り登録者は3人と少なく、当事者が「自分は大丈夫」と登録を拒否する状況を報告した。
最後に登壇したのは、有償ボランティアによる外出支援を20年続けているNPO法人「友の会たすけあい」の佐藤文信事務局長。タクシーの半額程度の料金で利用者のニーズに応える福祉有償サービスが認知され、20年間で延べ5万人を送迎した。「市の乗り合いタクシー『つくタク』の茎崎地区運行に要する年間経費は推計で約2000万円、対して同会は290万円。つくタクの運行を見直し、福祉有償サービスを強化すれぱ市の負担を軽減できる」と訴えた。
途中から参加した五十嵐立青市長は「住民自身の支え合いが活発な茎崎は他の地区の手本」と話した。また「議会で反対されなければ」とした上で「来年度、友の会たすけあいへの予算を準備している」と明かした。
茎崎地区の高齢者にとって移動手段の確保は切実な問題。市の動向を注視していきたい。
旧茎崎町細見生まれで東京大学客員研究員の木村清一さんによる「高齢社会とコミュニティ」と題した講演もあった。木村さんは、人と人が交流し支え合う取り組みが多い地域の高齢者は、元気で健康寿命が長いと語りかけ、「孤独から悲劇が生まれる。1人にしない取り組みが必要」と結んだ。(橋立多美)