金曜日, 11月 14, 2025
ホームつくば忘れてはいけない記憶 斎藤さだむさん、福島原発周縁の記録など展示 つくば美術館で「写真工房」展

忘れてはいけない記憶 斎藤さだむさん、福島原発周縁の記録など展示 つくば美術館で「写真工房」展

「写真工房写真展」の会場=つくば市吾妻、県つくば美術館

つくば市を拠点に活動する写真サークル「写真工房」(百瀬信夫会長)による「2017『写真工房写真展』Vol.15」が、つくば市吾妻、県つくば美術館で開かれている。つくば市在住の写真家、斎藤さだむさんが顧問を務め、現在会員16人が活動している。

斎藤さんの「不在の光景V」10枚は、東日本大震災以後の福島第1原発周縁を中心に撮影し記録した作品。忘れてはいけない記憶を、あえて色彩のトーンを明るめにして表している。荒廃した暗い風景を撮っているのだが、全体に明るい色調なのが不思議に見える。作品一つひとつを丁寧に見ていた女性は「あえて昔のスライドのように作ったように感じる」と話していた。作品の一角には斉藤さんの作品が掲載された本の紹介や、希望者が持ち帰れる作品のハガキも置かれている。

「写真工房」は、つくば市の公民館で開かれた写真講座に参加した写真愛好家により、2002年に結成された。毎回統一テーマは決めず、会員それぞれが興味のある対象を撮っている。会員の個性が際立った、興味深い作品に仕上がっている。

壁一面に佐野亨さんの「眼前のひろがり」5作品が展示されている。写真7~8枚を合成して1作品にした。リスボン、ニューヨーク、北海道などで撮った写真が力強く迫ってくる。

広田倫子さんの「これいいね」は、土浦市内の何気ない風景の一部を切り取ったもの。対象物の色彩とアングルが興味深い。

藤澤裕子さんの作品「襲色目(かさねいろめ)」の襲色目とは、平安時代の着物「重ね着の色の組み合わせ」のことで、それにならい写真を2~4枚重ねて作られている。重なった部分が下から透けて見え、深みのある独特な色彩が面白い。

会長の百瀬信夫さんは「景(かげ)」で花とその影を撮った。百瀬さんは「花を撮る人は多いが、花の形と影を主題にしたのは少ないのではないか」と話していた。(鈴木萬里子)

◆会期は22日(日)まで。開館は午前9時30分~午後5時(最終日は3時)。入館は閉館の30分前まで。

◆会ではメンバーを募集している。つくば市小野川の小野川交流センターで毎月1回定例会を行っている。入会希望や見学などの問い合わせは百瀬さん(☎029・838・0186)まで。

佐野亨さんの「眼前のひろがり」

 

広田倫子さんの「これいいね」

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緊急消防援助隊が合同訓練 1都9県の隊員ら1400人が集結 

県内で20年ぶり 大規模災害発生時に全国各地に駆け付ける緊急消防援助隊 関東ブロックの合同訓練が12日、土浦市小高にある採石場、塚田陶管柳沢工場の敷地内で実施された。1都9県(東京、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、山梨、長野、静岡、福島)の緊急消防援助隊による合同訓練の一環で、県内での開催は20年ぶりとなる。 12日と13日の2日間、土浦市のほか、ひたちなか、神栖、鉾田、鹿嶋、水戸市の13会場で、1都9県の緊急消防援助隊員や関連機関など約1400人が参加し、倒壊建物救助訓練、多数負傷者救助訓練、石油コンビナート火災対応訓練などのほか、宿営地設置・運営など後方支援訓練や、指揮本部運営訓練なども実施されている。 土浦の集落が孤立したと想定 訓練は、連日の大雨により河川氾濫や土砂災害が発生している中で、茨城県沖を震源とする震度6強の地震が発生したという想定で行われた。津波や大規模火災などが県内各地で発生し、多数の負傷者や孤立者が出た複合災害の状況を想定した。 土浦市の会場では、東京、埼玉、栃木の3都県の緊急消防援助隊210人と、茨城県内の消防広域応援隊14部隊60人が参加。同市東城寺地区の集落が土砂崩れにより孤立したと想定し、消防隊員らが専用重機で道路の障害物を除去したり、崩れた土砂に埋もれた車両や倒壊した家屋の中からの救助、ヘリコプターによる上空からの救助などの訓練が実施され、部隊同士や関係機関との連携、指揮系統の確認などが行われた。 ほかに自衛隊、国土交通省、茨城DMAT(災害派遣医療チーム)なども加わり、がれきが散乱して通行が困難な場所でも走行できる救助車両や消防ヘリコプター、照明車など約80台が救助訓練に当たった。 鬼怒川水害では支援受け入れ 緊急消防援助隊は、1995年1月に発生した阪神・淡路大震災をきっかけに創設され、大規模災害時に消防庁長官の要請などにより、他の都道府県から派遣される。2011年の東日本大震災や24年の能登半島地震でも活躍した。県内では、15年の関東・東北豪雨による鬼怒川水害の際に支援を受けている。 緊急消防援助隊ブロック合同訓練は、1996年から全国を6ブロック(北海道・東北、関東、中部、近畿、中国・四国、九州)に分け、各ブロック内の都道府県が持ち回りで実施してきた。茨城での開催は2005年以来となる。 茨城県消防安全課は今回の訓練について「県内での大規模災害の発生を想定し、近隣都県の緊急消防援助隊の応援を受け入れ、多くの関係機関とともに実施する今回の訓練は、受援体制の強化に大きく寄与する大変意義深いもの。本訓練を通じて、本県の受援体制の見直しを図り、茨城県緊急消防援助隊受援計画へ反映させていきたい」と話している。(柴田大輔) https://youtu.be/OkVy1R0cUdQ

暑かった今年の夏、原発事故の夢を見た《ハチドリ暮らし》55

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