【田中めぐみ】農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、つくば市観音台)と県立医療大学(阿見町)が、フラワーアレンジメントを作成する作業を通して認知機能改善の訓練を行うプログラムを開発した。臨床研究では、脳に損傷を負った人を対象にフラワーアレンジメント作成プログラムを行った結果、記憶力の改善が見られたという。今後、医療、福祉施設などでリハビリへの活用を促進していく考えだ。作成用のキットが考案され、生花店やインターネットで購入できる。
誰でも簡単に作成
作成プログラムでは、〇、△、◇の印の付いた吸水スポンジを用い、印に葉、大きな花、小さな花の順に花材を挿していくことで、パズルを組み立てるようにフラワーアレンジメントを作成する。
フラワーアレンジメントは健常者でも難しいが、キットを使えば誰でも簡単に丸型のをつくることができる。印付きのスポンジ資材や手順書、花材を含む作成キットは、つくば市千現の生花店プアラニ(塚田祐一代表)で購入できるほか、全国の生花店、インターネットでも購入が可能だ。キットは特許を取得している。
リハビリに効果期待
臨床研究では、不慮の事故や脳卒中などの病気で脳が損傷し、記憶や注意、言語などに障害のある高次脳機能障害者27人を対象とした。フラワーアレンジメント作成プログラムに参加した群と参加していない群とに分け、図形の記憶力テストを行ったところ、プログラムに参加した患者群に記憶力の改善が認められたという。効果は3カ月持続した。また左半側空間無視という症状=メモ=のある患者に対しても注意機能の改善が見られた。
さらに、患者の家族を対象に神経症の諸症状の程度を調べる質問を実施した。質問はGHQ(一般精神健康質問紙)によるもので「夜中に目を覚ますことは」、「いつもよりいろいろなことを重荷に感じたことは」といった内容の28項目をチェックしたところ、生花を家に飾ることで患者の家族の神経症状が軽減されることが分かったという。
農研機構の望月寛子上級研究員は「今後、高齢者やアルツハイマー型認知症の方のプログラムも開発していきたい。一人一人の症状に合った方法を模索していければ」と話す。
※メモ
【左半側空間無視】右側の脳が損傷を受けることで左側の刺激を無視してしまう症状。見えているが注意が向かない
生花店 プアラニ
住所▽ つくば市千現1-23-28
電話▽029-856-7788 FAX▽029-856-7790
営業時間▽午前10時~午後8:00
販売しているキット▽大小2種類の花と葉、印の付いた給水スポンジ、器、ラッピング紙、手順書で1セット。吸水スポンジの印が少ないMサイズと多いLサイズがあり、価格は2000円から。