日曜日, 9月 7, 2025
ホームつくば出資会社作りクレオ全部取得を提案 子供向け科学体験型商業施設に再生 つくば市負担34億

出資会社作りクレオ全部取得を提案 子供向け科学体験型商業施設に再生 つくば市負担34億

【鈴木宏子】百貨店などが撤退し今年2月から閉鎖されているつくば駅前の商業施設クレオ(筑波都市整備所有)について、同市の五十嵐立青市長は28日、市が出資するまちづくり会社をつくってクレオの土地と建物全部を約38億円で購入する案を発表した。子どもたちが遊びながら科学を学べる体験型商業施設に再生し、出資会社が運営する。市が負担する費用は20年間の賃料なども含め総額約34億3000万円になるという。同日開かれた市議会全員協議会に示した。

新たな商業施設は、1、2階に食品スーパー、百貨店、地元の飲食店や物販店のほか、温浴・健康施設、自転車・アウトドアスポーツ拠点施設などを配置する。目玉となる3~5階は、子ども向け科学体験教育施設、世界のおもちゃ体験施設、書店などを入居させる。市は5階に子供や科学に関する本を集めた子ども科学図書館と市役所窓口を出店する。

各階の配置案(つくば市作成)

体験施設の具体的な中身やどのようなテナントが入居するかについては現在、打診中でまだ決まっていないという。ただし東京・お台場と豊洲に新しいデジタルアートミュージアムを開設して話題のデジタルコンテンツ制作会社「チームラボ」、ロボットスーツを開発・販売する筑波大発ベンチャー企業の「サイバーダイン」、廃校になった小学校で世界のおもちゃに触れて遊べる体験型ミュージアムを運営する「東京おもちゃ美術館」など、注目を集める会社などと協議していると強調している。

商業施設を運営するまちづくり会社は、市が20億円、民間事業者が30億円を出資し資本金50億円とする。民間の出資会社はまだ確定してないがサイバーダインなどと協議中という。さらに金融機関から21億円を借りて計約71億円の資金を元に、約38億円でクレオを購入、約29億円で改修し、約4億円を初期の運転資金に充てるという。入居するテナントの賃料は、クレオの周辺相場が1坪(3.3平方㍍)当たり1~2万円程度なのに対し、3~7割安い7500円程度とし、開業2年目から約1億円の黒字になると試算している。

マンション建てるべきでない

クレオはつくば科学博が開催された1985年に建築。地下2階、地上8階建てで、面積は約1万5000平方㍍、延床面積約5万6000平方㍍。

クレオの再生をめぐって五十嵐市長は6月、約22億円で5、6階に図書館など公共施設を入居させることを検討していることを明らかにした。その後、所有者の筑波都市整備が、年内にも売却を行いたい意向を示したことを受け、今回、新たな案が提示された。

年内に売却の場合、商業施設と併設して14階建てマンションが建設予定であることから、マンション建設をすべきでないとして、全部購入する案としたという。さらに6月時点では標準耐用年数を超えている施設をすべて更新した場合、51億6200万円かかると試算されていたが、あと20、30年は使えるとして長期改修を15億円程度にとどめる。

市の新たな案について筑波都市整備は「市の案が出たということなので、中身を見て確認したい」としている。

10月16日まで市民の意見を募集

市は今回の案を市ホームページで公表、さらに10月7日ごろに市広報臨時号を新聞折り込みなどで配布して、29日から10月16日まで市民の意見を募集する。市民説明会は10月14日午前10時から市役所2階で開く。

アンケートなどで市民の合意が得られれば、10月下旬に市議会臨時議会を開き、20億円の出資の是非について諮る。議会で可決されれば11月中にまちづくり会社を設立、12月中旬にクレオを購入するという。

一方、市議会全員協議会では「さまざまな課題がある中、なぜクレオを優先するのか」「周辺部にどれだけ波及効果があるのか」「公共性があまりにも少ない」「テナントが埋まらないというリスクはないのか」「拙速に進めるべきでない」などの質問や意見が相次いだ。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

あす投開票 県議補選つくば市区

知事選と同日で行われる県議補選つくば市区(欠員1)は7日投開票される。立候補しているのは、いずれも元職で県議4期を務めた党県常任委員の山中たい子氏(74)=共産=と、県議一期を務めたタクシー会社社長の塚本一也氏(60)=自民=。元職同士の一騎打ちになっている。投票は同日午前7時から午後7時まで市内76カ所で投票が行われ、同夜午後8時20分から同市流星台の市桜総合体育館で即日開票される。有権者数は20万17000人(8月28日時点)、5日までの期日前投票の投票率は8.84%だった。 上ノ室で最後の訴え 山中氏 山中氏は「自民党政治を変えて願いかなういばらきに」をスローガンに、県立高校新設・クラス増、東海第2原発廃炉などを訴えてきた。塩川鉄也衆院議員、岩渕友参院議員、水戸市区の江尻加那県議、運輸大臣を歴任した二見伸明元衆院議員らが応援に駆け付けた。市内をくまなく回り、連日15~16カ所で街頭演説を重ねた。6日は北条郵便局を出発し、大穂、吾妻、竹園、並木、手代木の各所で街頭演説、同市上ノ室の選挙事務所前で最後の訴えをする。 山中たい子 74 政党役員 共産 元④【公約】①国保税、介護保険料、後期高齢者医療保険料の引き下げ②児童生徒数増に見合う県立高校新設とクラス増設を進める③危険な東海第2原発の再稼働をストップし廃炉に【略歴】福島県小野町出身、日本大学Ⅱ部法学部新聞学科卒。千葉県商工団体連絡会に勤務。つくば市に転居後、1984年から旧桜村議・つくば市議を4期を務め、2003年から県議を4期。前回2022年12月の県議選は次点。現在、共産党県常任委員など歴任 大曽根で最後の訴え 塚本氏 塚本氏は「つくば市を力強くけん引する県政を」をスローガンに掲げる。県歯科医師連盟、つくば市農協、県建築士会筑波支部の政治団体などの推薦、大井川和彦知事候補者、常井洋治氏、飯塚秋男氏ら自民党県議、国光文乃氏衆議院議員、加藤明良参議院議員らの応援を得て、連日、市内各所で街頭演説とあいさつを重ねてきた。6日は午後6時から、同市大曽根のガゾリンスタンド・エネオス大穂サービスステーション堀井商店で最後の訴えをする。 塚本一也 60 タクシー会社社長 自民 元①【公約】①国や県との連携を重視する中でつくばの成長産業の育成②TX沿線No.1の教育環境の実現③高齢者、障がい者、育児家庭が暮らしやすい社会の構築など【略歴】つくば市出身。県立土浦一高、東北大学工学部建築学科を卒業後、筑波大学大学院環境科学研究科修了。1991年にJR東日本に入社し、2006年に大曽根タクシー社長に就任。18年から県議一期を務めた。現在は同社社長のほか、茨城県ハイヤー・タクシー協会会長などを務める。 (柴田大輔、鈴木宏子)

筑波大ラグビー部、一誠商事とスポンサー契約 公式戦で広告解禁

筑波大学ラグビー部が、県南を中心に不動産業を展開する一誠商事(五十嵐徹社長、本社つくば市竹園)とスポンサー契約を締結した。今季から公式戦の試合用ジャージ胸部に同社ロゴが掲出される。5日、一誠商事本社で開かれた記者会見で発表した。今年から、大学ラグビーの公式戦で企業の広告を掲出することが解禁された。 会見には筑波大学ラグビー部から古川拓生部長、嶋﨑達也監督、高橋佑太朗主将と、一誠商事から五十嵐社長が出席。席上で高橋主将は「一誠商事さんには以前からサポートいただいていたが、今回ユニフォームスポンサーになっていただき、試合の場で共に戦えることに部員一同心強く感じている。このサポートに対し自分たちができるのは結果で示すことだけ。素晴らしいラグビーを展開し、勝利という形で恩返ししたい」と感謝の念を語った。 五十嵐社長は「今季から大学ラグビー界でも広告が解禁されたことで、学生の段階からしっかりと資金を集め、企業の力も活用して強化を進め、日本のラグビー全体がさらにレベルアップしていくためのスタートが切れたのではないか。筑波大がさらに発展していく一助となればうれしい」と応じた。 長年つくばを拠点に営業している同社では、サッカーやバスケットボールなど学生スポーツの支援も長年続け、ラグビー部に対しては2019年から練習着などを提供してきた。その関係で毎年、シーズン開始前と終了後には学生たちから活動報告を受けるが、そこで大きな変化も感じているという。 「学生の皆さんが自分たちでスポンサーを集め始めてまだ数年だが、競技面だけでなく地域貢献でもしっかりしたプレゼン資料を作り、一生懸命お願いしてくるようになった。学生なのにここまで作り込んでいるのはすごいな、社会に出た時にさぞかし良い経験になるだろうなという感動を覚えながらお会いしている」と五十嵐社長は目を輝かす。 ラグビー部の広告付きユニフォームは今季公式戦からお目見えする。関東大学対抗戦Aグループに所属する筑波大は、初戦を9月14日、水戸市小吹町のケーズデンキスタジアム水戸で迎える。相手は強豪の明治大学だ。 「明大とは夏にも対戦しているが、セットプレーで勢いに乗るところがあり、今度もプレッシャーが強い試合になると思う。チャンスがあれば一瞬でトライを決めてくるので、しっかりと80分間全員が集中することが大事。自分たちの課題として詰めの甘さがあり、点差が開いて少し気を緩めてしまい逆転を許す場面があった。1点を争う試合になると思うので、全員がしっかり集中し、全力でやり切ることを目標として初戦に臨みたい」と高橋主将は意気込む。 最終目標は大学日本一を決める全国大学選手権。来年1月2日に東京・国立競技場で開催される準決勝まで勝ち進めば、NHK地上波で試合が全国放送される。(池田充雄)

祭囃子と縁日と、それからラムネ《ことばのおはなし》85

【コラム・山口絹記】つくばに住むようになってから、新型コロナによる中止期間を除いて、なんだかんだと毎年つくばの夏祭りには足を運んでいる。目的はつくば駅周辺で行われるパレードとねぶた、というよりも縁日の方である。今年はこどもたちを連れて2日連続での参加だ。 私が育った東京の下町では、縁日は夏以外にも定期的に行われている、日常の延長にあるものだった。たまたま出かけた日に縁日がやっていれば、友人とたこ焼きを買って半分ずつ食べたりするのだが、いつ縁日がやっているか、ということは意識したことがなかった。 しかし、つくばではおそらく(私が知らないだけかもしれないが)縁日は夏にしかやっていない。東京に住んでいた頃はありがたみなど感じていなかったのに、いざ日常から消えてしまうと恋しくなるもので、この10年くらいは日程を調べて縁日に通っているというわけだ。 毎年の特別なイベントに こどもたちのラムネの瓶をあけて手渡す。喉を鳴らして飲むこどもたちにつられて、自分も一口飲んでみる。最近のラムネ瓶はプラスチック製なので、なんとなく風情に欠けるような気もするが、猛暑の中で祭囃子(ばやし)を聞きながら飲むラムネはいつの時代でも格別においしい。 つくばに来た当初は妻と2人で気ままに歩いた縁日も、気が付けば上の娘を肩車して行くようになった。小さかった娘はもう手をつながずに人ごみを歩けるようになり、今は目を離すとどこかへ行ってしまう下の息子の腕をつかんでいなくてはならない。そのうち、こどもたちもそれぞれの友達と祭りに行くようになると思うと、いつの間にか日常の延長だった縁日が、毎年の特別なイベントに思えてくるのだから不思議なものだ。 何かを見つけて人ごみに消えていく息子を追いかけながら、そんなことを考える。(言語研究者)

「神経多様性」を妄想する《看取り医者は見た!》44

【コラム・平野国美】非常事態で輝いた自閉症スペクトラムの図書館員の話(前回コラム)から、私の妄想は膨らむのです。人類がまだ獲物を追いかけ、新天地を求めて移動していた時代。その集団の先頭を歩いたのは、神経多動性(ニューロダイバーシティ)という特性を持つ人々だったのかもしれません。彼らの飽くなき探究心と衝動性は、集団を未開の地へと導く力となりました。しかし、その旅もいつか終わりを迎えます。 肥沃な土地に恵まれ、食料を安定して得られるようになったとき、人類は定住という新しいフェーズへと突入したのです。そして、この定住化という歴史的な大転換を支えたのが、「自閉症スペクトラム(ASD)」の特性を持つ人々だったのではないでしょうか。 定住生活の象徴ともいえるのが稲作です。稲作は、広大な土地を移動し続ける狩猟採集とは全く異なる、精密な「システム」でした。いつ種をまくか? 水を引くタイミングは? 収穫の時期は? すべては綿密な計画と繰り返されるルーティンワークによって成り立っています。 ここで、ASDの特性である「ルーティンへの強いこだわり」「シングルフォーカス(一点集中)」という才能が、驚くべき力を発揮したはずです。多動性を持つ人々が絶えず新しい刺激を求める一方で、ASDの特性を持つ人々は定まった手順を厳密に守ることで心の安定を保ちます。稲作という変化の少ない重要な作業を安定して続ける上で、彼らの「変わらないこと」へのこだわりは、集団全体の基盤を築く上で不可欠な要素だったのです。 稲作に生きた「守り人」の才能 稲作は、単に作業を繰り返すだけでは達成できません。その年の気候や土壌の状態、稲の成長具合といった、目に見えない無数の情報を読み解き、次の年に生かす必要があります。ASDの特性を持つ人々の中には、人間関係の複雑な「空気」を読むのは苦手でも、特定の分野で驚異的な観察力を発揮する人が多くいます。稲の葉のわずかな色の変化、土の湿り気、病害虫の兆候…。 彼らは、そうした非言語的な情報を誰よりも正確に把握し、集団に伝える「知恵袋」であり、「データベース」だったのではないでしょうか。彼らの緻密な観察力と、それを体系的に記憶する能力がなければ、稲作という文化は次世代へと受け継がれなかったかもしれません。 彼らは、稲作というシステムを維持し、集団の知恵を次世代へと伝える「守り人」だったのです。集団の中に「神経多様性」を持つことによって、我々はここまで生き抜いてきたのです。つまり、社会や組織が生き抜くためには、この多様性を持つことが必要不可欠だったと思われるのです。(訪問診療医師)