土曜日, 4月 26, 2025
ホームつくば出資会社作りクレオ全部取得を提案 子供向け科学体験型商業施設に再生 つくば市負担34億

出資会社作りクレオ全部取得を提案 子供向け科学体験型商業施設に再生 つくば市負担34億

【鈴木宏子】百貨店などが撤退し今年2月から閉鎖されているつくば駅前の商業施設クレオ(筑波都市整備所有)について、同市の五十嵐立青市長は28日、市が出資するまちづくり会社をつくってクレオの土地と建物全部を約38億円で購入する案を発表した。子どもたちが遊びながら科学を学べる体験型商業施設に再生し、出資会社が運営する。市が負担する費用は20年間の賃料なども含め総額約34億3000万円になるという。同日開かれた市議会全員協議会に示した。

新たな商業施設は、1、2階に食品スーパー、百貨店、地元の飲食店や物販店のほか、温浴・健康施設、自転車・アウトドアスポーツ拠点施設などを配置する。目玉となる3~5階は、子ども向け科学体験教育施設、世界のおもちゃ体験施設、書店などを入居させる。市は5階に子供や科学に関する本を集めた子ども科学図書館と市役所窓口を出店する。

各階の配置案(つくば市作成)

体験施設の具体的な中身やどのようなテナントが入居するかについては現在、打診中でまだ決まっていないという。ただし東京・お台場と豊洲に新しいデジタルアートミュージアムを開設して話題のデジタルコンテンツ制作会社「チームラボ」、ロボットスーツを開発・販売する筑波大発ベンチャー企業の「サイバーダイン」、廃校になった小学校で世界のおもちゃに触れて遊べる体験型ミュージアムを運営する「東京おもちゃ美術館」など、注目を集める会社などと協議していると強調している。

商業施設を運営するまちづくり会社は、市が20億円、民間事業者が30億円を出資し資本金50億円とする。民間の出資会社はまだ確定してないがサイバーダインなどと協議中という。さらに金融機関から21億円を借りて計約71億円の資金を元に、約38億円でクレオを購入、約29億円で改修し、約4億円を初期の運転資金に充てるという。入居するテナントの賃料は、クレオの周辺相場が1坪(3.3平方㍍)当たり1~2万円程度なのに対し、3~7割安い7500円程度とし、開業2年目から約1億円の黒字になると試算している。

マンション建てるべきでない

クレオはつくば科学博が開催された1985年に建築。地下2階、地上8階建てで、面積は約1万5000平方㍍、延床面積約5万6000平方㍍。

クレオの再生をめぐって五十嵐市長は6月、約22億円で5、6階に図書館など公共施設を入居させることを検討していることを明らかにした。その後、所有者の筑波都市整備が、年内にも売却を行いたい意向を示したことを受け、今回、新たな案が提示された。

年内に売却の場合、商業施設と併設して14階建てマンションが建設予定であることから、マンション建設をすべきでないとして、全部購入する案としたという。さらに6月時点では標準耐用年数を超えている施設をすべて更新した場合、51億6200万円かかると試算されていたが、あと20、30年は使えるとして長期改修を15億円程度にとどめる。

市の新たな案について筑波都市整備は「市の案が出たということなので、中身を見て確認したい」としている。

10月16日まで市民の意見を募集

市は今回の案を市ホームページで公表、さらに10月7日ごろに市広報臨時号を新聞折り込みなどで配布して、29日から10月16日まで市民の意見を募集する。市民説明会は10月14日午前10時から市役所2階で開く。

アンケートなどで市民の合意が得られれば、10月下旬に市議会臨時議会を開き、20億円の出資の是非について諮る。議会で可決されれば11月中にまちづくり会社を設立、12月中旬にクレオを購入するという。

一方、市議会全員協議会では「さまざまな課題がある中、なぜクレオを優先するのか」「周辺部にどれだけ波及効果があるのか」「公共性があまりにも少ない」「テナントが埋まらないというリスクはないのか」「拙速に進めるべきでない」などの質問や意見が相次いだ。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

里山でオタマジャクシと遊ぶ《宍塚の里山》123

【コラム・江原栄治】1月末、冷たい風が吹き抜ける里山の谷津田を訪ねる。うっすらと氷の張った水面を見つめながら、私は毎年のようにニホンアカガエルの産卵初日を探しに来る。このカエルは、真冬、水中に産卵する。冬も水がある宍塚の谷津田は希少な産卵場所となっている。 つえを頼りに、ふらふらと歩き回る老体ではあるけれど、心の中はワクワクと躍っている。だが、そう簡単には出会えない。空振りの日々が続く。 今年の初確認日は例年よりずっと遅かった。待ちわびた3月1日。その日から10日間ほど、首にカウンターを下げて、母ガエルが水中に産み落とす卵塊を数えて歩く。彼女たちは、一つにつき500から1000個もの受精卵を、寒天質に包んで産む。やがて、卵たちは発生を始め、オタマジャクシが孵(ふ)化し、変態へと進む。 出会うたびに、私は驚きと尊敬の念を込めて、心の中でそっと「ワンダフル」と声をかける。命の不思議さに胸を打たれる瞬間だ。 言うまでもなく、母ガエルにとっても、これは宇宙で一度きりの不可逆な時間体験なのだ。産卵の日も、孵化の日も、足が出て、手が出て、尻尾が消える日も、カエルとして水を離れるその日も、そして命を終えるその日も、そのすべてが毎年違う。誰にも予測も確定もできない。 命は、天候や環境、そのすべての「つながり」の中で、一期一会の出会いを繰り返す。私はただ、それに寄り添い、生き、そして死ぬだけなのだ。 ♪こんなになるとは知らなんだ♪ 自分は66歳のときに幸運にも胃がんが見つかり、胃の3分の2を摘出する手術を受けた。その後は、退職後の生きがいを求めて、さまざまな活動に取り組んできた。土浦市の社会福祉協議会が主催する「初めての野菜作り教室」や、我々の会の自然農田んぼ塾や親子が参加する田んぼ学校、古武道の「杖道教室」や「尺八教室」、そして最近は「食生活改善推進委員」としての活動。 気がつけば、もう16年。思い出はたくさんできたが、身についたものといえば…、正直ひとつもない。すべてが「年寄りの冷や水」だったかもしれない。それでも楽しかった。 82歳を過ぎた今、時間は3倍速で飛ぶように過ぎていく。朝夕には「♪こんなになるとは知らなんだ♪」と大きな声で歌いながら、笑い、そして少しだけ嘆いている。何をするにも、孫たちが心配してくれる。「ありがとう」と言いながら、その優しさをうれしさ半分、寂しさ半分で受けとめる。ありがたくも、どこか切ない、そんな日々だ。せめて、周囲には「嘆かない、張り切らない」を心がけて暮らしているつもりだ。 とはいえ、やっぱり私の中の「スズメ」は踊りを忘れない。自分という存在、この不思議な世界への興味と関心は、いまだに手放せない。古語にある「良き言葉で良き人生をつくる」という言葉を胸に、私は今も、「良き言葉」を求めて歩き続けている。命が尽きるそのときまで。(宍塚の自然と歴史の会 会員)

事業協力者に戸田建設など 桜土浦IC周辺に産業用地開発へ

常磐道桜土浦インターチェンジ(IC)周辺で土浦市が検討を進めてきた新たな産業用地の創出について、事業計画策定や造成工事、企業誘致などを一括して担う事業協力者が準大手ゼネコンの戸田建設(東京都中央区)など3社でつくる共同事業体(JV)に決まり、25日、土浦市役所で、地権者団体と戸田建設などが基本協定を締結した。安藤真理子市長らが立ち会った。 同ICと国道6号バイパス建設予定地に近接する同市中村西根の約33ヘクタールに物流倉庫や工場などを誘致する。着工は早くて2028年ごろ。同市で工業団地が新たに造成されるのは1996年以来。 開発事業は、地権者らが今後、土地区画整理組合を設立して実施する。具体的な計画策定、測量、設計、造成工事、企業誘致などは戸田建設など3社でつくるJVが担当する。地権者は84人で、現在97%が農地や山林などの民有地となっている。昨年1月時点で地権者の90.1%の仮同意を得ている。 総事業費は約50億円。ほかに市が道路や公園、水路など公共施設の整備費用として8億円を負担する。事業費に充てるため地権者は自分の土地を平均73%提供する(平均減歩率)。造成後は、33ヘクタールのうち15.5ヘクタール(保留地)を売却して事業費をねん出する。 事業協力者は戸田建設のほか、物流・商業施設の開発などを手掛けるデベロッパーの日鉄興和不動産(東京都港区)、不動産事業や解体事業などを手掛ける大洋(東京都中央区)の3社。地権者団体の桜土浦IC周辺地区土地区画整理組合設立準備委員会(中村雄一会長)が今年1月、事業協力者を公募し、応募があった2JVの中から選定した。中村会長は、戸田建設が圏央道常総IC周辺の「アグリサイエンスバレー常総」の開発に関わった実績から選んだと説明し「道の駅常総やトマト、イチゴ農園などを視察した。経験ある戸田建設に安心してお任せしたい」と述べる。戸田建設は事業全般、日鉄は企業誘致、大洋は地権者の合意形成などを担当するという。 事業提案で戸田建設らは①広域交通ネットワークを生かした新たな産業拠点の創出②豊かな自然環境との調和を目指す環境共生サステナブル産業都市を掲げた。「環境共生型に特化したまちづくりを行い、地域ブランドとして、他地区と差別化できるまちづくりをしたい」とする。昨今の建築資材や人件費の高騰に対しては「リスクを加味した事業計画をつくりたい」としている。 一方、地権者の平均減歩率が73%になることについて準備委員会の中村会長は「70%を超える減歩率は他地区でもなかなかないと思っている。地区は畑が半分ぐらい、山林が半分ぐらいで、畑はほとんど作っていない状態、管理するのに耕して草が生えないようにしている。山林は奥の方に入るとごみの山。山林の中に昔は農道があったが、今は農道なのか分からない状態。そういう状態をこれから先、次の世代まで続けて、残していくかを考えた時に、こういう機会しか、地域をもっときれいにする機会がないのではないか。地域の皆さんに、皆の大切な財産をもっときれいに、有効に使っていきましょうと話している。そういうことだったらと、90%を超える賛同をいただいている」と語った。 同市は、2019年に県が新たな産業用地の開発を推進する「未来産業基盤強化プロジェクト」を発表したのを受けて、20年から検討を開始した。21年にはゼネコン、デベロッパーなど民間事業者を対象にヒヤリングを実施、高い評価が得られたため、桜土浦IC周辺を候補地とし、22年から地元説明会、23年には地権者意向調査を実施してきた。昨年6月には同地区の地権者団体である準備委員会が設立された。(鈴木宏子)

7カ国34人を歓迎 日本つくば国際語学院

学校法人つくば文化学園が運営する日本語学校「日本つくば国際語学院」(つくば市松代、東郷治久理事長兼校長)の2025年度4月生の歓迎会が24日、同市小野崎、つくば山水亭で開かれた。ミャンマー、中国など7カ国から来日した18歳から39歳までの34人が、鮮やかで多彩な民族衣装などに身を包み、新たな一歩を踏み出した。 今回は入学式という名称を使わず、かしこまらない形での会となった。新入生の出身国はほかに、ネパール、スリランカ、韓国、ベトナム、インド。今回はミャンマー出身者が15人と最多となった。 歓迎会では、出席した33人全員が一人一人自己紹介をした。それぞれ習いたての日本語で、年齢、日本でやりたいこと、趣味などを語った。「日本語を学び、大学や大学院で勉強したい」「日本の有名な観光地を回ってみたい」などと話す人が多かったが、「韓国の女性が好きです」と言う新入生もおり、会場を笑わせた。 在校生を代表してネパール出身のサヒ・マンジュさんがあいさつし「最初入学式に出た時は歓迎のあいさつも分からなかった。今ではこの学校で頑張ったかいもあって、自分が歓迎のあいさつをする立場になった。家族のことを思い寂しくなったこともあったが、友人たちのおかげで乗り切れた。自分の力を信じてがんばって欲しい」と新入生に歓迎の言葉を送った。 東郷理事長は「日本語を学ぶことによって日本の文化を学ぶことができる。言葉はつなぐものであり、日本語を通じて世界の友達と話してもらえたらいい。これから、楽しいことと、少し大変なこともあると思うが、困ったことがあったら、学校職員や先輩を頼ってほしい」などと語った。 その後、新入生、全校生徒の順で記念撮影会が行われ、最後は歓迎パーティで盛り上がった。 東郷理事長は記者らの質問に答え「入学者はこれからもっと増えそうな感じがする。世界的に外国人排除の動きがあるが、日本は今でも先進国であり、日本に来たがっている人は大勢いるので、学校もたくさんの留学生を受け入れられよう準備したい。当校では、後楽園や大洗水族館に行ったりするリクリエーションも実施しており、評判も良い」などと話した。(榎田智司)

つくばの素粒子研究施設に2人組アートユニット滞在

発表は8月、大阪万博でも 芸術家が滞在して創作活動に取り組むアーティスト・イン・レジデンス(AIR)がつくば市大穂の高エネルギー加速器研究機構(KEK、浅井祥仁機構長)で始まった。23日からは構内でミニ個展も開催されている。 8月のつくばメディアアートフェスティバルと大阪・関西万博での発表に向けて、KEKでの生活をスタートさせたのは、片岡純也さん(42)と岩竹理恵さん(43)の2人組。ともに2010年、筑波大学大学院芸術専攻を修了。2013年のパリでのレジデンスを機に、国内外でユニットでの創作活動に取り組み、作品を発表してきた。 研究者向け宿舎に1カ月 今回はつくば市が隔年で開催する「つくばサイエンスハッカソン2025」の一環として実施されている。科学と芸術の融合を通じて、新たなインスピレーションを得ることが目的。2人は同市の委嘱を受けての活動で、KEKの研究者向け宿舎に1カ月間滞在し、研究者や学生との対話を通じて創作を進める。滞在期間中に得た着想をもとに、滞在終了後、自身のアトリエや筑波大の作業場を借りて作品を完成させる。 日常のささやかな出来事をシンプルな現象で再現するキネティック作品と、印刷物などから想像や類推でイメージを展開させていく平面作品を組み合わせた空間構成が特徴的で、素材や図案の出合いから物語を生み、個々の作品の題材がゆるやかに響き合う手法を用いる。 作品に「対称性の破れ」と感想 滞在初日の18日には研究者や職員らによる歓迎レセプションが催された。2人はこれまでの作品を持ち込んで紹介、浅井機構長を交えてのトークショーが行われた。 片岡さんは「頭でなく手で考えた」という装置型の作品が特徴で、平面上を永久機関のように回り続ける電球に、浅井機構長が「対称性の破れ」という素粒子物理学の概念を持ち出し感想を述べると興味深けな反応を見せた。 岩竹さんは、広い敷地をもつKEKの木々や水辺の「ささやかな日常」をスマホに撮って見せ、こうした素材を滞在期間中に教えてくれるよう研究者らに協力を求めた。さらに天文学の数式や記号に興味があるという。 完成した作品は、8月1日から11日に県つくば美術館(つくば市吾妻)で開催される「つくばメディアアートフェスティバル2025」で発表され、その後8月14日から20日まで、大阪・関西万博の会場(大阪・夢洲)でも展示される。2025年の「国際量子科学技術年」宣言を記念して、内閣府・文部科学省が主催する企画展「エンタングル・モーメント―×芸術」にKEKが出展するものだ。(相澤冬樹) ◆回る電球ややじろぐ枝など、トークショーで紹介された2人の作品を紹介するミニ個展は5月9日まで、KEK「多目的スペース」で開かれる。時間は午前11時~午後2時。問い合わせは電話:029-879-6048(KEK広報室)。アートユニット2人の作品はこちら。