木曜日, 11月 26, 2020
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【ひと】被爆体験つづった手記がつくばの朗読劇に 長崎生まれの田栗静行さん(78)

【崎山勝功】「思い出したくないし話したくない」。生涯封印するつもりだった原爆体験を7年前、『あの時、一緒に死んでしまえばよかった… 5歳のナガサキ被爆体験』にまとめた。その手記が、1995年からつくばで朗読劇を上演している「サラダの会」の今夏の朗読に登場した。

封印を解いたのは原爆の影響による胃がんの告知を受けたことだ。「残りの時間で何かできることはないか」と考えた末での決断だった。

手記では、原爆投下で長崎市内の工場に勤務していた父親を亡くし、4日後に当時3歳の妹を亡くしたときの様子をはじめ、自身の体調の変化などを克明に著している。

長崎県から上京し、会社員として勤務していた当時、都内の病院の受付で被爆者手帳を出すと「何ですかこれは?」と聞かれることがたびたびあったという。会社での健康診断の際のレントゲン撮影も「子どもの頃にたくさん放射線を浴びていますから」と断っていた。

胃がん発覚後、原爆症認定の申請を行った。当初は「放射能で体が侵されている、と烙印(らくいん)を押されることになる」と認定書申請に消極的だった。支援者団体から「核兵器はこんなに恐ろしいんだ、という一つの証拠になるから。後世のためのデータして残すべき」との説得を受けて申請に踏み切った。

約10カ月後、原爆症の認定を受けた際に、支援者団体の一部から「おめでとう」と言葉をかけられた。原爆症認定のための裁判をしなくてもいい、との趣旨だったようだが、田栗さんにとっては配慮に欠けた腹立たしい言葉だった。「原爆症に認定されても、うれしいこと、おめでたいことなど何もない」と話す。

手記では「原爆症認定書が届いた日、私は父母と妹の仏壇の前で一晩泣きました。一人だけ生きていて良かったのか、今でも生きていて良いのか」と、当時の複雑な心境をつづっている。

5日、つくば市吾妻のアルスホールで開催された上演会に東京・八王子から訪れた田栗さんは、「2度と私のような体験をしてほしくない、あるいはさせるべきではない」と力を込めた。そして「これからは自分たちの子ども、孫が平和を享受できるように、日本、世界、宇宙が平和になるように努力してもらいたい」と、次世代への希望を託す。

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