【鈴木宏子】引きこもりの若者などの自立を支援しているつくば市のNPO若年者社会参加支援普及協会アストリンク理事長の浅井和幸さん(46)が12日、約4年間伸ばした髪を切った。小児がんなどの治療で髪の毛を失ってしまった子供たちにウィッグ(かつら)を提供するヘアドネーションに協力するためだ。伸ばした長さは30㎝以上。男性がヘアドネーションに協力するのは珍しい。どんな思いだったのか。
5年程前、インターネットのニュースでヘアドネーションを知り協力しようと思ったという。世間には男らしい髪形や女らしい髪形、男が長髪なのはおかしいという常識があって、常識に合わない人は自分を恥じ、縮こまってしまう状況に異議申し立てしたいという思いがあった。支援する引きこもりの若者の中に、床屋に行かず、髪が伸び放題になっている若者がいたことから、自宅に居ながらできるボランティアがあることも知ってほしかったという。
普段は後ろ髪を一つに縛り束ねていた。理由を話すと多くの人は「すごいね」などと応援してくれた。一方で髪を伸ばした浅井さんに嫌悪感を抱き、一時、浅井さんを避けるようになった知人もいたという。利点も多いと強調し「一度会っただけで覚えてもらえるし、講演会で話すネタにもなる」という。
髪が肩まで届くようになると、バックや趣味のギターを肩に掛けた際、髪の毛がからまったり、就寝し寝返りを打った際、引っ張られて目を覚ますこともあったという。洗髪は10分ほどで終えたが、乾かすのが大変で、寒い冬はぬれた髪が冷え冷えしたなどの苦労もあった。
長さが規定の31㎝を超えたため、12日、ヘアドネーションに協賛しているつくば市二の宮の美容サロンIRIS(イーリス、東海林瑛人代表)で髪を切った。
まずひもで縛って6束に分け、ばっさりカット。長い髪は38㎝あった。浅井さんは「久しぶりに首が軽くて涼しい」と感想。同店で、30㎝の髪ではショートヘアのウィッグしか作れないこと、ロングヘアーを作るには50㎝以上必要であることを教わったので「何年先になるか分からないが、次は50㎝以上伸ばしたい」と、浅井さんはすぐに次のチャレンジをスタートさせた。
2日に1人が協力
同店を経営する美容師で妻の夏奈さんによると、ヘアドネーションはテレビやメディアで紹介され認知度が上がってきており、今年に入って急に協力者が増えているという。
同店の場合、4月は18人が協力。ほぼ2日に1人のペースだ。5月も同じペースで、男性も浅井さんが2人目だという。女性の場合、もともとロングヘアで、七五三や小学校入学、成人式などの節目に合わせて切り、何かに役立てたいと協力する人が多いという。
同店は、店をオープンした2年前からヘアドネーションに協賛している。夏奈さんは「ウィッグを待っている子どもたちが現在100人以上おり、一つのウィッグをつくるのに10人から30人の髪の毛が必要になる。パーマをかけていても、染めていてもOK。普段の生活をしている人ならだれでも協力できる」と協力を呼び掛けている。