【柿内典子】「これからつくばでどう生きる?みんなで考えるつくばライフ」と題したトークイベントを4月下旬、筑波大近くの共有オフィスで開催し、筑波大生の「つくばなれ」現象を問題提起した。
大学入学を機に出身の福井県からつくば市に転居して6年目。現在、同大大学院システム情報工学研究科2年で、新規プロジェクトを応援する共有オフィスの学生スタッフを務める。
「つくばなれ」は和田さんが作った造語だ。つくば市に住むのではなく、千葉や東京のつくばエクスプレス(TX)沿線に下宿して大学に通う筑波大生が増えている現象を指すという。「特に卒業を間近に控えた学生が、流山おおたかの森や浅草などに移住する傾向にある」と話す。
和田さんが暮らした6年の間に、つくば市は西武筑波店、イオンつくば駅前店など大型商業施設の相次ぐ撤退があった。昨年12月には、学内で渡り廊下の崩落事故が発生、施設の老朽化を実感した。学生宿舎では3つあった銭湯のうち2つが廃業となった。「学生にとってつくばは緩やかに暮らしにくくなっている」と感じ「『つくばなれ』の背景にあるのでは」と指摘する。
一方で、学生自身による、つくばならではの学生コミュニティを再構築しようという新たな動きが起こっていることに着目。4月のトークイベントでは、全国初の大学サッカー部ファンクラブ設立に向けたクラウドファンディングの取り組みをしている学生や、唯一残る平砂学生宿舎の銭湯を生かしてコミュニケーションの場をつくろうと挑戦している学生の取り組みを紹介した。
和田さん自らは、学生同士のつながりをつくる手法として県人会に着目。今年4月、自らツイッターで福井県出身の学生に呼び掛けて、福井県人会を再開させた取り組みを、トークイベントで紹介した。
「都内に住む学生と違ってつくばは深い人間関係が築けることが魅力」と話し、「筑波大生として市内でコミュニティ活性化を目指している学生を紹介し、つくばでの暮らしをもう一度考えて欲しかった」と和田さんは説明する。
そうした積極的な姿勢が評価され、現在は市役所や筑波大同窓会「茗渓会」から声がかかり、地域活性化に向けた協力もしている。茗渓会からは、各県にいる筑波大卒業生と、現在つくばにいる人たちをつなげて欲しいと相談がきたという。「コミュニティの輪をさらに広げ、つくばを離れて暮らす人にもつくばに興味を持ってもらいたい。たくさんの人と協力し、つくばのイメージアップにつなげたい」と話す。