【コラム・川上美智子】長寿社会の到来で活躍する高齢者が増えている。筆者自身も年をとっても諦めず、生きがいを求めて人生三つ目の挑戦に挑んでいる。一つ目は子育てと大学教員としての教育研究活動と数々の審議会委員などの社会活動、二つ目は保育園園長として子育ち・子育て支援といろいろなボランティア活動、三つ目が仕事の傍らの陶芸である。
62歳で始めた陶芸、2年前の喜寿には初めて個展を開き、今年はきりのよい傘寿を記念し、9月16日~22日の1週間、ひたちなか市のサザギャラリーで二人展「土が奏でる世界へ」を開催した。
陶芸は、大学に勤務していた頃の教育研究対象の食物科学と全く異なる分野であるため、偶然会場に入って来られ、何十年ぶりかでお会いした方は、「先生は白衣を着てヒールを履いて格好よく歩く姿しか目に浮かばない」と本当にビックリされたようであった。同年代の来る人来る人が作品を見て元気をもらった、自分も頑張らなくてはと言って帰って行かれた。
展覧会に出すのを目標に先生から陶芸の指導を受けて来たので、スタート時点から10キロを超える大型作品造りに挑戦している。重い粘土や作品を運ぶのは、若い頃にワンゲルやスキーで鍛えた丈夫な足腰が役立っている。また、小学校や高校で美術部に入り油絵を描いていたのが、作品にアート要素や自己表現を入れるのにプラスになっているように思う。とにかく今は土をこねて造形する時間が楽しく、仕事の無い日は合間をみて一人、家で小物作品を作っている。
一方で、趣味だから楽しめるのだろうと思っていて、これが仕事になり、作家として生きていこうとすれば、すごく苦しいことになることはわかっている。高齢の身には酷であるが、今は簡単に諦めず、できるところまでやってみるつもりである。

11月には県美術展に出展
9月24日からは、数寄屋橋のギャラリーセンタービル6Fの銀座洋協ホールで新槐樹(しんかいじゅ)社秋季展が始まった。現在、このビルが建てられている所は、戦前から戦後、筆者の父親が勤務していた旧財閥の会社ビルだったところから、筆者も小学生の頃、よく訪れていた。今回、本当に懐かしくゆかりのある場所で作品が展示されることに深いご縁を感じていて、30数年前に亡くなった父も喜んでいるのではないかと思っている。
今回は準備で全国から絵画や陶芸の出展者が銀座に集まった。驚いたことに、そのほとんどが私と同年代の男女で、生きがいを求め、表現活動にいそしむ高齢者が多いことを実感した。
11月には17年間欠かさず出展してきた茨城県美術展覧会があり、この時期は美術展が目白押しで趣味三昧の忙しい日々となる。このような生き方が、高齢者のwell-being(=ウェルビーング=、良き生)、すなわち高齢者の生き方モデルの一つになれば、悔いなき充実した人生になるのではないかと考えているところである。(茨城キリスト教大学名誉教授、関彰商事アドバイザー)