【コラム・原田博夫】猛暑が続いている。線状降水帯の局地的な襲来はあれど、全国的には、継続的な高温、降水量の不足などで、各地のコメ、果樹、農作物の収穫が減り、食料品価格が全般的に値上がりの可能性が出ている。そんな中で一人気を吐いているのが“雑草”である。
植物学者・牧野富太郎博士の言葉「雑草という草はない」を待つまでもなく、この世の一木一草に至るまで生命の神秘が込められているので、地球上のあらゆる生命体には敬意を払わなくてはならないのだが、正直、“雑草”には悩まされる。道路際・駐車場隅の植え込みばかりか、わずかな隙間を突き破って立ち上がってくる生命力・繁殖力には舌を巻く。
拙宅の狭い庭先にも、しっかりと繁茂してくる。表門から玄関先にかけては何とか刈り取るのだが、1時間程度の暑さと屈み込み作業に音を上げて切り上げると、2週間程度で同じような光景が再現する。要するに、きりがないのである。
高温下で雨量が少ないためか、他の庭木はあまり元気がないが、“雑草”だけはお構いなしに繁茂してくる。そこでふと気づいたのだが、いわゆる一般的な庭木や食糧作物(コメ、果樹、農作物)と“雑草”は、氏素性が違うのではないか。
われわれは、植物を一括して天然・自然そのものだと思い込んでしまうが、庭木や食糧作物は人間の活動・生活に適するように手を加えられた植物である。要するに、動物でいえば家畜(牛、馬、豚、鶏など)に似ている。
対して、“雑草”は、そうした人間の活動・生活を活用し潜り抜けて勝手に、したたかに生き延びてきた植物である。したがって、多少の環境・天候変化に対しても、それを物ともせずに生き延びてしまう生命力が、遺伝子に組み込まれているに違いない。より野生に近い生命体である。
道路・交通事情も影響?
改めて、拙宅の“雑草”に目をやると、そこには十年一日のごとく同じタイプの“雑草”も繁茂しているが、10年前とは少し異なるタイプの“雑草”もあるようである。
私にはこうした植物の名称や種別・系統には何の知識のないのだが、こうした意図せざる変化(繁茂・分布の拡大・交流による栄枯盛衰)は、天候・気象条件の変化だけではなく、道路・交通事情によってもたらされている可能性があるのではないか、と愚考する次第である。交通量の激化や交通インフラの充実などが“雑草”の繁茂あるいは栄枯盛衰の、前提条件あるいは促進剤になっているのではないか。
われわれは、至便な交通事情を享受する以上、こうした負の影響(“雑草”の繫茂・栄枯盛衰)も受け止め、対処する必要がありそうである。(専修大学名誉教授)