【コラム・原田博夫】7月20日が投開票だった第27回参議院議員通常選挙は、自民・公明の与党が予防的に低めに設定した勝敗ライン50にも届かず、与党の敗北が明白になった。とりわけ鮮烈なのは、参政党の大躍進である。
2020年3月に政治団体として届け出、同年4月に結党されたばかりの参政党は、第26回参議院議員通常選挙(2022年7月)で比例区1議席(神谷宗幣)を獲得でき、比例区5人(いずれも落選)の得票で約3.3%(176万票)を獲得して政党要件2%を上回り、政党交付金の支給対象となった。
第50回衆議院議員総選挙(2024年10月)で小選挙区に85人・比例代表に10人の候補者を擁立し、小選挙区では全員落選するも、南関東・近畿(比例復活)・九州の3ブロックで1議席ずつ獲得した。さらに認知度を高めた上での第27回参議院議員通常選挙である。選挙区7名・比例7名の計14名の当選で、非改選1名を加えると、15名の参議院議員に至った。立派な国政政党である。
今回の選挙結果からは、与党(自民、公明)の低迷・退潮、新興政党(参政党、国民民主、維新、れいわ、保守、みらいなど)の躍進に加えて、立憲・共産・社民など、いわゆる伝統的左派(リベラル系)政党の不振も明らかだ。
この背景には、⑴現下の物価高騰との対比での手取りの伸び悩み・生活の窮迫感、⑵ワンイシューの新興政党に、全方位型の与党の支持基盤が浸食されたこと、⑶インターネットやSNSなどへの依存度の高い若い世代(10代~40代)には新興政党への親近感が高かったこと、⑷21世紀に入ってから重視されるようになった(外国人との融和、LGBTや選択的夫婦別姓の導入・推進など)ポリティカル・コレクトネスへの人びとの心理的な躊躇(ちゅうちょ)などがあった―とする分析がある。
小選挙区と大選挙区の混在は問題
私はこの際、選挙制度に関する2点を付言しておきたい。第1は、衆議院と参議院で採用されている選挙制度にねじれのあることである。
衆議院議員は定数465人で、うち289人が小選挙区選出議員、176人が比例代表選出議員である。小選挙区の区割りは国勢調査人口に基づき最長10年ごとに見直される。比例代表は(都道府県域よりも広域の)全国11ブロックから選出される。候補者は小選挙区と比例代表の重複立候補が可能で、小選挙区で落選しても比例代表で復活当選が可能になる。
対して、参議院の定数は248人、うち100人が比例代表選出議員、148人が選挙区選出議員で、3年毎に半数の改選がある。比例代表選出は全国を一つの選挙区にしているが、選挙区選出は都道府県ごとの45選挙区(合区が2つある)で選出される。人口の多い都道府県では複数の議員が選ばれる大選挙区制、人口の少ない県では一人の議員を選ぶ小選挙区制が採用されている。
本来、民意に忠実であるべき衆議院では小選挙区が、良識の府であるべき参議院では大選挙区制が採用されるべきであるにもかかわらず、現職議員に過度に配慮して両制度が混在し、しかも組み合わせは逆の方向にねじれている。この大いなる矛盾を、そのままに放置している21世紀の日本人の政治的無神経さを疑う。
第2に、細かな点だが、投票の際の立憲民主党と国民民主党の政党略称は、分党以来いずれも「民主党」である。事後的に案分してもらうそうだが、これは国民に対して不謹慎ではないか。次回の国政選挙からは改めてもらいたい。(専修大学名誉教授)