世界肝炎デーに合わせ日本肝臓学会
日本人の4人に1人以上が罹患しているとされる「脂肪肝」を知るための市民講座が、8月2日、阿見町の東京医科大茨城医療センターで開かれる。世界肝炎デー(7月28日)に合わせて、日本肝臓学会が肝臓がん撲滅を目指して企画した。講座には、肝疾患診療連携拠点病院に指定されている東京医科大学茨城医療センターと日立製作所日立総合病院から5人の専門医が登壇し、病気の基礎知識や予防法を解説する。会場では参加者20人を対象に、超音波を使い肝臓の硬さや脂肪量を測定できる「フィブロスキャン」の無料体験会も開かれる。
今回の企画を担当する同センター副院長の池上正さん(62)は「脂肪肝は20代や30代の若年層にも一定数の患者がいる。肝臓がんの原因にもなりうる病気で、自覚症状が少なく、まだ治療薬がない。正しい知識に基づく予防が大切になる。早い段階で生活習慣を改善するためにも、病気について知ってもらう機会になれば」と話す。
食生活と体質 肝臓がん増加を危惧
脂肪肝は、肝臓に脂肪が過剰に蓄積し、臓器全体がふくれあがる病気だ。放置すると慢性肝炎や肝硬変、さらには肝臓がんに進行する危険がある。男性は30代から、女性は閉経を迎える40代から50代で増加傾向にある。国内の罹患者は約3000万人とされ、将来的に、肝臓がん患者のさらなる増加が予想されると、池上さんは危惧する。
かつて肝臓がんの主な原因は、B型、C型肝炎などのウィルス性肝炎だったが、現在は薬の開発により、ウィルス性肝炎による肝臓がん患者は大幅に減少した。一方で、脂肪肝から進行する肝臓がんは増加している。池上さんはその要因として「西洋化する食生活」と「日本人の体質」を挙げ「お酒を飲まない人でも脂肪肝になることは珍しくない。日本人を含むアジア人は内臓に脂肪をためやすい体質であり、アメリカ人とかヨーロッパ人に比べて脂肪肝により肝臓が悪くなりやすい傾向がある。さらに運動不足など生活習慣の乱れがリスクを高めている」と指摘する。
身長と体重の関係から肥満度を表すボディマス指数(BMI)は22のときに生活習慣病のリスクが最も低いとされるが、日本人は数値が23でも脂肪肝になる例があるという。予防に欠かせないのは、正しい知識を身につけること。「脂肪肝は肥満や糖尿病との関連も深く、生活習慣病の一つとも言える。適切な食事と運動で脂肪を消費することが大切。急激なダイエットは逆に肝臓に脂肪を溜める原因になる」
同医療センターは、厚労省が定める肝疾患診療連携拠点病院として、専門的な医療の提供とともに、医療情報の発信や専門家ネットワークの構築に取り組んできた。
「今回の講座では、さまざまな専門家が集まり多様な角度からこの病気について取り上げたいと思っている。10歳から12歳で脂肪肝になる例もあり、できるだけ早い対策が大切になる。夏休みを利用し、親子での参加もお待ちしています」と呼び掛ける。(柴田大輔)
◆日本肝臓学会 肝がん撲滅運動 市民公開講座「どうする?脂肪肝」は、8月2日(土)午後1時30分から午後4時まで、東京医科大茨城医療センター医療・福祉研究センター(阿見町中央3-20-1)で開催。参加費無料。申し込みは専用サイトから。問い合わせは医療センター総務課の若松さん(代表029-887-1161)へ。