スーパーシティに指定されたつくば市が、最先端技術を実証する街区とすることを目指しているつくば駅近くの同市吾妻2丁目、国家公務員宿舎跡地の70(ななまる)街区約5.7ヘクタールについて、土地所有者の財務省関東財務局とつくば市は22日、開発事業者の公募を同日開始したと発表した。
公募方法は、スーパーシティの取り組みの青写真をまとめた「つくばス―パ―サイエンスシティ構想」を実現する新しい街とするなどの開発条件をあらかじめ設定し、入札参加者から企画提案を受け付ける。さらに国が設置する審査委員会で企画提案を審査の上、審査通過者による価格競争で落札者を決める。「二段階一般競争入札」という方式で、落札者は同街区の国有地約5.4ヘクタールと市有地約0.3ヘクタールの売却を受ける。
企画提案書の提出期限は来年2月2日。同3月24日に企画提案書のプレゼンテーションを実施し、同5月22日に入札する予定。落札した企業などは土地取得から7年以内に民間資金などで工事を完了する。
スーパーシティ実装センターを整備
街区内にイノベーション拠点と中高層マンションを配置するなどが想定されている。22日明らかにされた開発条件は、街区内に「スーパーシティ実装センター」を設置し、先端技術を使ったサービスを実証したり提供する事業者などが入居するオフィスを12室以上整備して、街区内の様々な施設と連携して最先端技術の実装の場とする。同センター内には、研究者や企業、市民が交流したり、くつろいだりできるスペースを整備する。街区内の各施設、テナント、オフィス、住民などが先端技術の実証に参加するような仕掛けをつくる。街区全体で二酸化炭素排出量実質ゼロを目指すなど。
住宅については、分譲マンションなどだけでなく、多様なターゲットを想定した間取りの賃貸住宅を100戸以上整備する。分譲住宅を500戸以上つくる場合は20%以上を賃貸住宅などにする。吾妻小学校と隣接していることから建物は小学校の敷地に極力影を落とさない。戸建て住宅をつくる場合は歩行者が車両と交差しないよう工夫する。小学校側の通りに車が集中しないようにする。幹線道路沿いは中高木を主体とした植栽帯を設け、公園やペデストリアンデッキに面した部分は緑地にするなど緑の連続性を確保するなどが条件となっている。
ほかに、駅前のにぎわいをつくる商業・サービス施設を配置し、物販及び飲食の床面積は1500平方メートルを超えるものとする、ペデストリアンデッキ側に商業施設などの出入り口を設置する、近隣住民などが利用する放課後児童クラブまたは地域子育て支援拠点を整備するーなど。
70街区の売却をめぐっては、2021年に関東財務局が同市と共同で民間企業の意向調査(サウンディング調査)を実施(21年10月26日付)。7事業者から提案があり、採算性の観点から厳しい意見も出された(22年3月22日付)。22年8月には市による市民説明会が開かれ、五十嵐立青市長は70街区の開発イメージについて「例えばマンションや商業施設、イノベーション拠点、クリニックなどがあって、マンションに住む方は(街区内の)商業施設のものはスマホで注文ができ、ドローンでベランダまで運んでくれるというようなサービスや、完全自動運転のモビリティが動いて、移動が不自由な方でも自動運転で移動していける。健康状況とか心拍などを提供すると自分に合った食事メニューが届くなど、そういうことを複合的にやる場所にしたい」(22年8月4日付)などと説明している。
サウンディング調査や市民説明会から開発事業者の公募まで3年かかった理由について市学園地区市街地振興課は「国と市とで開発条件の協議調整などを行い時間がかかった」などとしている。(鈴木宏子)