土曜日, 8月 23, 2025
ホームつくば女性の心情描く漫画家 山本美希筑波大准教授の企画展 土浦で開催

女性の心情描く漫画家 山本美希筑波大准教授の企画展 土浦で開催

多数の受賞歴を持ち、独創的な手法で現代を生きる女性の切実な心情を表現する漫画家で、筑波大准教授の山本美希さんの作品展が、25日から土浦駅に隣接する土浦市民ギャラリーで始まる。

展示は2部構成で、第1部は、82点の原画と今回の展示のために山本さんが書き下ろしたテキストなどを展示する。さらに、出産を控える夫婦の葛藤を描いた2020年の作品で、第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した「かしこくて勇気ある子ども」がモチーフの立体作品などを展示する。作品を通じて「山本作品」が生まれる背景に迫る。

第2部は、山本さんが教鞭を取る筑波大学芸術系ビジュアルデザイン領域の学生や、現在、マンガ家として活躍する山本さんお教え子の作品など100点以上が展示される。「物語の内容と表現手法の関係」を突き詰める山本さんが、大学で学生に伝える内容の一端に触れることができる。

会場ではほかに、山本さんのデビュー作「爆弾にリボン」の元となった筑波大学在学中に卒業制作として書き上げた「爆弾とリボン」や、山本さんの作品をモチーフに作成された4つの映像作品も上映されている。

会期は5月5日まで。本をテーマにした市立図書館との連携企画展となっている。連携企画展は同ギャラリーが2017年の開館以来、隔年で開催している。

漫画家として活躍する教え子らの作品が多数展示されている第2部の展示

企画を担当した土浦市民ギャラリーの若田部哲さんは「山本さんは、絵の持つ力を考え抜いて作品を作っている。展示では、初期の作品から近年の色鉛筆を使った作品まで、それぞれの作品に対する思索に触れることができる」とし、「漫画は日本文化として国際的にも認知されているが、対象をわかりやすく表現するために、実際はそう見えていないものも『記号的』に表現することがある。それによって、物語を気軽に楽しめるという特性がある。山本さんのすごいところは『記号的』なものを一度解体し、『果たして、それが本当にそう見えているのか?』を考えるところ。アウトプットの方法を含めて、深い思考をされている」と作品の特徴を話す。

さらに「山本さんの展示としては、これまでで最も大きなものといえる。第1部で取り上げている作品『かしこくて勇気ある子ども』は、これから子どもが生まれる若い夫婦を軸に展開する物語。子どもを持つことへの大きな喜びと、それゆえの不安を克明に描いている作品で、普遍的なテーマといえる。何度来ていただいても楽しめる構成になっている。高校生や大学生など若い方に限らず、いろいろな方に見ていただきたい」と来場を呼び掛ける。(柴田大輔)

◆「マンガ作家 山本美希展」は、土浦駅西口前の土浦市大和町1-1アスカル土浦1階、土浦市民ギャラリーで25日(火)~5月5日(月)開催。開館時間は午前10時から午後6時。月曜休館。入場無料。4月13日(日)には牛久市出身のマンガライター・横井周子さん、4月19日(土)にはマンガ家の大白小蟹さんとのトークイベントが行われる。それぞれ午後1時から午後2時30分まで。いずれも参加費無料、予約不要。問い合わせは029-846-2950(土浦市民ギャラリー)へ。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

8 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

8 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

酷暑でもにぎやかな里山《宍塚の里山》127

【コラム・及川ひろみ】人が酷暑にあえぐ中、宍塚の里山は緑の木々のトンネルが続き、暑さをしのげます。そして、さまざまな生き物にも出合えます。今年はいつもの夏より種類も多いようです。 この里山は関東平野有数の広さ。広葉樹林、針葉樹林、田んぼ、湿地、小川、大池…。さまざまな自然があり、さまざまな生き物が息づいています。草むらに、木々の間に、木の上に、川辺に、湿地に、水面に、水中に、足元に、大小色とりどりの生き物が飛び交い、環境に溶け込んでいます。 今年はカブトムシやクワガタムシも多く、ヤマトタマムシ(茨城県準絶滅種)もいます。クヌギ、コナラの根元には、カブトムシの羽根が散らばっています。昔なら、カブトムシを食べる犯人はフクロウの仲間、アオバズクでしたが、今、犯人はカラスです。カラスはカブトムシのほか、ヤママユガの幼虫など、大型昆虫の捕食者です。 今ベビーラッシュを迎えているのはバッタ。歩を進めるたびに草の間から飛び出します。そして、小さなバッタがたくさんいるところには、彼らを食べるカエルたち。草の間から飛び出すのはアカガエル、それほど目立たず動くのはヌマガエル。ヌマガエルは至るところで見られます。 カエルが多いということは、生き物が豊富な証しです。カエルが増えれば、それを狙うヘビ。小さな生き物からヘビ―生き物のつながりを感じます。 ここで確認されたトンボは59種 空を切るように飛ぶトンボ。その種類が多いのもこの季節。野原、湿地、谷津田では、ショウジョウトンボ、シオカラトンボ、大シオカラトンボ、ナツアカネが見られます。小川にはオニヤンマ、草むらにはイトトンボがいます。宍塚でこれまで確認されたトンボは59種。全国のトンボの4分の1です。 今、宍塚大池の水面はハスの花で覆われています。大池にこれほどたくさんのハスの花が咲くのは6年振り。霞ケ浦沿岸に広がる蓮田のハスの花は白ですが、宍塚大池の野生種のハスはピンクで、とてもきれいです。 また、池で見られる胴体が短いチョウトンボの羽根は幅広で、遠目にはチョウのようです。羽根の一部が透き通り、オスはきらりと光ります。トンボは飛行の名手。特にチョウトンボは素早く飛び、ハスの上をたくさん飛んでいます。 しばらく酷暑が続きそうです。暑さしのぎに宍塚の里山、大池に足を運んではいかがでしょう。子どもたちには、自然体験の場として絶好です。(NPO法人宍塚の自然と歴史の会 会員)

小田の祇園祭 つくば市無形民俗文化財に

まつりつくばで大獅子が披露 つくば市教育委員会は22日、毎年7月に小田地区で催されている民俗行事「小田の祇園祭(ぎおんまつり)」を同日、市の無形民俗文化財に指定したと発表した。江戸時代に始まった小田八坂神社の行事で、①神輿(みこし)の巡幸②大獅子の巡幸③神輿と大獅子がせめぎ合う「顔合わせ」④お囃子(はやし)の演奏から成る。特徴的な行事や芸能を備えることなどから指定された。 市無形民俗文化財の指定は合併前の1986年2月以来、9件目。市文化財の指定は85件目。23、24日、つくば駅周辺で開催される「まつりつくば」の23日夕方のパレードで、同祇園祭の構成要素の一つである「小田の大獅子」が披露される。 市文化財課によると、小田地区東部にある八坂神社は江戸時代初期の1651年に創建された。江戸時代中期の文書に神輿の巡幸や太鼓の使用が確認できることから、祇園祭は創建のころから実施されていると推測されるという。現在は7月の第3土曜日に開催され、小田東部区、八坂神社お囃子保存会、小田大獅子保存会の3団体が担っている。 神輿の巡幸は、昼間から夕方に小田地区東部を巡行し、夕方までに東部の一時休憩場所である御仮屋(おかりや)に戻る。神輿の巡幸は現在、東部区が担当している。 大獅子の巡幸は、獅子頭に続く長さ約10メートルの大きな胴体を約30人で上げ下げし、蛇行させながら、小田地区中部を昼間から夕方に練り歩く。起源は不明だが、江戸時代末期の1865年に獅子頭が寄贈されており、それ以降、始まったとみられている。大獅子は毎年、獅子頭に胴体とたてがみを付けて作られる。たてがみは栃木県の鬼怒川中流域で毎年、水草のササバモを採取して作られ、神聖な魔除けとして巡幸の際などに各戸に配られる。大獅子は、戦国時代の小田城最後の当主、小田氏治(うじはる)が戦勝祈願をした姿だとする言い伝えがある。巡幸する大獅子は、江戸時代末期に寄贈されたものが現在も使われている。小田大獅子保存会が伝承している。 東部の神輿と中部の大獅子がせめぎ合う「顔合わせ」は、祇園祭の大きな山場となる。東部と中部の境界で夜8時ごろから5回行われる。大きな歓声が沸き上がる中、神輿と大獅子が4~5メートルの高さに持ち上げられ、高さを競って張り合う。江戸時代末期から近代に間に始まった行事だと推測されるが、古事記や日本書紀の神話、スサノオノミコトとヤマタノオロチの争いを模したものと言い伝えられ、荒ぶる力のぶつかり合いと対抗で災厄を撤退させる夏の鎮送儀礼といえる。 顔合わせの後、神輿は八坂神社に帰り、本殿に収められる。この宮入りの間、荒ぶる魂を鎮めるお囃子「御神輿(ごじんこ)囃子」の演奏が続けられる。江戸時代中期の文書に太鼓を使用した記載があることから、この頃に起源をもつと推測される。お囃子の伝承と顔合わせ等、夕方以降の東部での行事は八坂神社お囃子保存会が主に担当している。 市無形民俗文化財の指定について市文化財課の石橋充課長は「地域の方々が伝統的な民俗行事を残していこうと努力しているところなので、市としても未来に継承できるよう支援していきたい」と話している。 ➡小田祇園祭の過去記事はこちら(2018年2月25日付、23年7月15日付)

23、24日はまつりつくば ごみ袋「もってかえる」を1万枚配布  

つくば市最大の祭り「第42回まつりつくば2025」(まつりつくば大会本部など主催)は今年もつくば駅周辺を会場に、23日と24日の2日間開催される。つくばエクスプレス(TX)開業20周年を迎える今年は、TXを運行する首都圏新都市鉄道がパレードに参加するほか、記念グッズが大清水公園で販売される。今年新たに、来場者に飲食容器などのごみを持って帰ってもらう啓発を実施し、カエルのイラストがデザインされ「もってかえる。」と書かれたごみ袋を1万枚配布する。今年も例年と同規模の48万人の来場者を想定している。 メーンの「まつりパレード」は、両日とも午後4時から土浦学園線の東大通りと西大通りの間で実施され、大ねぶた4基と中小ねぶた5基が繰り出す。今年の新作として十和田湖や八郎潟、田沢湖の竜神「八郎太郎」のねぶたが登場する。ほかに、40年前の1985年開催のつくば科学万博で披露された万博山車や市内各地区のみこしが練り歩く。25日は万灯みこしが加わる。 11エリアで 会場は駅周辺の11エリアに分かれる。▽つくばセンター広場と大清水公園の「まんぷく広場」には市内のグルメや特産品が勢ぞろいする。▽市中央図書館からつくばエキスポセンター前の遊歩道、つくば公園通りでは「アートタウンつくば 大道芸フェスティバル」が開催され、中国雑技芸術団など大道芸のパフォーマンスが披露されるほかアート作品の販売される。世界の料理が楽しめる「ワールドレストラン」なども催される。 ▽科学のまちつくばならではの「スーパーサイエンスパーク」は、つくばセンタービル3階のつくば市民センター・コリドリオ大会議室や、ノバホール小ホールなどで開催される。分身ロボットを操作して迷路にチャレンジしたり、分身ロボットのツアー体験、並木中等教育学校や茗渓学園による工作教室などが催される。体験はいずれも無料で、両日とも正午から整理券を配布する。 ▽つくば駅に隣接する中央公園では福祉団体などの活動を紹介する「ふれあい広場」を開催。▽つくば国際会議場隣の竹園公園ではダンスフェスティバルのほか、さまざまなスポーツを体験できる「スポーツパーク」を催す。▽つくば駅前のクレオ前広場では屋台などが並ぶ「トナリエつくばスクウェアうきうき広場」を開催。▽つくばセンター広場特設ステージでは、園児や子供たちによる音楽やダンスのほか、トップ・ウクレレ奏者の名渡山遼さん、シンガーソングライターの澤田千加子さん、地元つくば市出身の演歌歌手 水城なつみさんなどが登場する。▽昨年始まった「つくばのおさけで乾杯エリア」のほか、今年からは「行政PRブース」や「協賛出店ブース」なども用意される。 今年の新たな企画としては「ごみ持ち帰り啓発」が実施される。まつり会場は2030年までに二酸化炭素排出量実質ゼロを目指す脱炭素先行地域に指定されていることから、ごみゼロを目指して、「もってかえる。」とデザインされたごみ袋1万枚を大会本部など計4カ所で来場者に配布し、ごみを持って帰ることを呼び掛ける。ただしごみ箱は撤去せず、例年通り設置するという。 市環境衛生課の木村憲一課長は「今年はごみ持ち帰り元年にしたい。まずは来場者に慣れてもらうという意味でのPRであり、ごみ問題に意識を高めてもらえれば」と話す。 暑さ対策としては、つくばセンタービル1階と竹園西児童館に救護所を設置する。医師や看護師が常駐し、救急車も待機する。さらに会場内に休憩所やミストシャワーも用意する。 まつりのポスターやちらしのメーンデザインは、市内3カ所に物流倉庫を構えるZOZOが担当した。まつりつくばのごった煮感をイメージしたデザインだという。 まつりつくばは1981年、合併前の旧桜村の市民有志が大清水公園で開催したのが始まり。コロナ禍の3年間は開催されなかった。近年は48万人の規模で開催されている。(榎田智司)

展望台と滝がある松見公園《ご近所スケッチ》18

【コラム・川浪せつ子】松見公園(つくば市天久保)は、TXつくば駅から車で数分の所にあります。1976年に完成したそうです。高さ50メートルの展望台がボトルオープナーの形をしており、「栓抜き公園」という愛称で親しまれています。上からは筑波山から研究学園まで一望できます。展望台の下には、たくさんの鯉がいる大きな池、その池に注ぐ滝があります。 今回は滝がテーマなのですが、描きあげるのに苦悩しました。その理由は、水がたくさん流れているわけではなくて、どのように滝と分かるように描けるかでした。結局、水量を増やして描くことにしました。見に行かれた方は、「実際はチョロチョロなのかぁ~」と思われるかもしれません。 今回は「絵を描くとは?」に悩みました。結局、写真は真実を写しますが、絵は「好きでいいじゃん! 心象風景でいいじゃん!」ということになり、やっと描くことができました。つくば周辺の絵を描いていますが、「ウソ」ではなく「心の絵」ということです。記録画とは少し違いますが、これからも「つくば周辺の良さを描く」をテーマにします。 下の絵は、トップの滝の上の所です。小さな滝があり、手前には渡れる飛び石が配置されています。公園の周りはメディカルセンター病院はじめ、建物ばかりですが、この空間は旅に行ったように思えるステキな場所です。(イラストレーター)