【コラム・小泉裕司】日本で唯一の天気にまつわる「気象神社」を参拝し、間もなく始まる2025年花火旅の好天を祈願した。JR中央線高円寺駅南口を出て徒歩2分、千年の歴史を有すると言われる氷川神社の鳥居前に到着。敷地内は、正面に重厚な拝殿、その左隣に末社の一つとして気象神社がある。
一礼し、大鳥居をくぐる。手水舎で身を清め、まずは、2年前に授かったお守りを社務所入口の納礼箱に返納。昨年鑑賞した花火大会がゲリラ雷雨や台風来襲に見舞われるなど御利益薄く、「敗戦」続きだったのは、お守りの賞味期限切れということなのだろうか。本来、お守りのお力は1年で期限切れとする説が多いようだ。
社務所に入ると、授与所に並んだ外国人男性が3種類のお守りを購入していた。ここにもインバウンド観光か、日によって鳥居の外まで行列ができることもあるという。私は、前回と同じ、桐箱入りの白地に「晴守(せいもり)」の金文字のお守りを授かり、気象神社に向かった。
ここでも一礼、鳥居(上の写真)をくぐる。お社(やしろ)は、8つの気象条件(晴・曇・雨・雪・雷・風・霜・霧)を司ることができる「八意思兼命(ヤゴコロオモイカネノミコト)」を祭っていることから、「気象の神様」とされているのだが、日本神話では智恵の神・学業成就の神とされており、奉納されたたくさんの「下駄絵馬」や「照照みくじ」には、「合格祈願」の文字も目立つ。
参道脇の由緒書によると、気象神社の始まりは1944年と新しい。最初に建てられたのは陸軍気象部の敷地内。戦略や作戦に必要な気象の研究者たちの心の拠り所として作られたそう。現在のお社は、老朽化によって2003年に再建されたとある。
社殿前に進み、掲示された「参拝の作法」に基づき、2礼2拍手1礼。2025年に鑑賞予定の花火大会が、好天に恵まれ、無事開催されることを祈願した。
百葉箱の気象観測機器と記録帳
参拝前から気にかかっていたお社右奥の真新しい百様箱。前面に表記された「記録おねがいします」にうながされ、参拝客の目を気にしつつ、恐る恐る扉を開けると、気象観測機器と記録帳が置かれていた。早速、日付、目測した気温9℃、湿度Lo%(測定下限値未満)、気圧1012hPa、天気は晴れ、記録者の住所地と氏名、そして自由記述蘭には、「2025花火 晴天祈願!」と記帳。
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ちなみに、百葉箱や観測機器は、戦時中に気象神社が所在した杉並区立馬橋小学校の創立70周年を記念して、2022年11月に寄贈されたとのこと。気象観測班で、毎日黒板に気温を記録した小学生時代が懐かしい。
氷川神社本殿を参拝し、神社を後にした。振り返ると、一礼し、大鳥居をくぐる参拝客が、後を絶たない。
参拝後は「そば」に限るということで、高円寺駅北口の「名大 富士そば」で昼食。チェーン店にもかかわらず、出店地域ごとにメニューや味が異なることで知られるが、今回のだし汁は美味。ここでも来店客が後を絶たない。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)