【コラム・斉藤裕之】「チョコレートいくつもらった?」と聞かれて…。「ひとつ」は奥さんからが見え見えだし、「みっつ」は妙にリアル、「十」はうそっぽい、「ゼロ」は…。バレンタインデーについて私が何か書くとなると、当然、愚痴や恨み節のようになるのはご容赦願いたい。
そもそも、この国ではクリスマスにしろ、バレンタインデーにしろ、「愛」という概念(?)をラブラブと勘違いしてしまったから面倒くさいことになってしまった。
2月14日。学校が何となく色めき立つ日。心なしか、校内にあま~い匂いが漂っているような。そして、大方の男子にとっては憂鬱(ゆううつ)な日でもある。イケメンと呼ばれる星の下に生まれない限り、そうやすやすとチョコレートなぞもらえるはずもない。
かく言う私も、収穫ゼロの人生を歩んできたわけだが…。長らく、この女子がチョコレートを持って右往左往する日を何とかしてほしいと思っていた(本気の方々には思いが届くことを願っています)。
しかし、一時の凶器にも近いチョコレート送り合戦は収まったようだが、今度は自分にご褒美などと訳の分からないことを言い出し始めて…。結構なお値段のチョコレートに驚くやら、いまや中学生の日常会話にベルギーの高級チョコレートの名前が違和感なく出てくる国もどうかと思うが…。
「トブラローネ」という名のチョコ
というか、このところの不作でカカオの高騰がニュースになっていて、チョコレート会社も四苦八苦しているとか。また、カカオをめぐっては児童労働や森林の伐採などが問題となっているそうで、チョコレートを取り巻く状況は甘くはないようだ。
ところで、つい先日のこと。舶来の食品を使う店で「トブラローネ」というチョコレートを手に取った。このチョコには思い出があって、親父がパチンコの景品に持ち帰っていたのか、たまたまうちにあって、子供のころからこの三角柱のチョコにはなじみがあった。
それからしばらく、このチョコを口にすることはなかったのだが、パリにいたときに親しかったスウェーデン人の女性画家がこのチョコレートのことを「トッブラローネ!」と独特のアクセントで呼んだのを聞いて名前を知ることとなり、それ以来見かけると買ってしまう。
しかし、結構いい値段だな…少しためらったが、ミニサイズがいっぱい入っている袋を買ってみた。トブラローネは3種類の味があって、黒、クリーム、白色の包装になっている。その独特の三角形の連なった形を、改めてこれはスイスの山の形か?と思いつつ絵に描いてみることにした。
「チョコいくつもらった?」「愛は数ではないのだよ」と言いたいところだが…。「先生お返し期待しているね!」に「愛とは見返りを求めないものだよ」とも言ってやりたいのだが…。いつか本気のチョコレートを手渡す日がくるよ…。
描き終えたチョコを口に入れた。私はやっぱりクリーム色のヤツが好きだ。(画家)