【コラム・奥井登美子】今年は蛇の年。蛇さんと仲良くしよう。私たちの水道水の水源地、霞ケ浦の周りには森林が少ない.浄水器になる森を造ろうではないかと、2000年、岡野静江さんたちと、かすみがうら市加茂の農地にみんなで造ったのが「どんぐり山」だ。どんぐりの苗木を植えたが、雑草の草刈りが大変だった。
現地の人たちは除草剤をまけばよいのにと言うが、昆虫のいる自然に近い森林を目指していた私たちは、農薬を使いたくなかった。みんなでいろいろと協議した結果、段ボールの箱を森全体に敷き詰めてみた。おかげさまで、3~4年間草刈しなくても、どんぐりの木は元気に育ってくれた。
2003年、このどんぐり山が「茨城県自然保護大会」の実習の森に選ばれた。子供たちがたくさん来てくれるのはうれしいが、安全も大事だ。点検に行ってみたら、マムシ君とヤマカガシ君がたくさん生息している。
加茂の石川さんが「蛇をつかむとき、手袋は駄目なんだ。素手でつかむと、蛇が何を考えているかがよく分かる」と言いながら、マムシを素手で8匹もつかまえてくれた。それを展示用のガラスケースに入れて、山の実習のとき、子供たちに見てもらった。
マムシにかまれたときはマムシ血清があるが、厄介なのはヤマカガシで、かまれても血清が存在しない。この蛇は性格がこざかしく、複雑怪奇。かわいらしいところもあるが、かわいがると付け上がってくる。
私が下見に行ったとき、どんぐりの木の上の方の枝にヤマカガシが絡まっていた。「いったい、何をしているのだろう?」。70~80センチ離れたところで、じっと観察していたら、急に頭の向きを変えて、私のおでこに飛びついてきた。振り払ったので無事だったが、チトびっくりした。
蛇がいなくなって寂しい
2005年。夢にまで見た国蝶のオオムラサキが、どんぐり山に出現。以来、年1回「オオムラサキ観察会」を続けている。観察会のとき、私は救急係。蛇と蜂がいるか、2~3日前に点検に行き、当日は救急箱に薬を詰め込んで参加する。
小学生のとき、蛇が恐いと言って泣いたら男の子にいじめられ、恐くないフリをしているうちに蛇と仲良しになった。私にとって蛇は自然の豊かさを象徴する動物で、魅力的な存在になっている。5~6年前から、「どんぐり山」観察会の前に点検に行っても、蛇はいなくなってしまった。なぜかとても寂しい。(随筆家、薬剤師)