つくば駅から筑波大学間約10キロの既存の路線バスのルートを、自動運転バスが9日から実証走行している。つくば市、筑波大学、民間8社による共同事業で、通信大手のKDDIが事業を企画、統括する。自動運転バスの実証実験は、筑波大構内を周回した昨年1月に続いて(24年1月19日付)2度目となる。23日にはメディア向けに運行の様子が公開され、つくば駅と筑波大学間を往復した。
使用されている車両は、最高時速35キロの16人乗り自動運転EVバス「ミニバス」で、自動運転車用のオペレーティングシステムを開発するベンチャー企業のティアフォー(名古屋市)が中国メーカーの車両をもとに開発した。運行時の平均時速は20~30キロ。走行時は、車両に取り付けられた8台のカメラと、レーザー光を使った13台のセンサーが周囲の状況を分析する。事前に地図上に設定した走行ルートをもとに、自動安全システムにより走行し、交差点やカーブなどでの停止、発信、加減速に対応した。緊急時に備えて運転席には運転士1人が乗車し、路上駐車車両や自転車などの追い抜きには手動の運転で対応した。
ブレーキ、乗り心地が改善
昨年の実証実験との比較について、KDDI社の担当者は「昨年は20キロ未満の速度で、10人乗りと小型での実証となった。今回は車両のサイズも大きくなり、より実際の運行に近い形になっている。前回はきつかった停止時の衝撃を滑らかに改善し、通常のバスにより近づくようにした」とし、「今回の実証結果を踏まえて、社会実装に向けてしっかりとシステムをアップデートしていきたい」と語った。
運転士を提供する関東鉄道自動車部営業二課の森作久男課長は「運転士が不足しており、募集してもなかなか集まらない状況が続いている。持続的な運行を今後も続けていくためには、取り入れていかなければいけない技術」と話す。
「2年から3年後の実装目指したい」
今回の事業に学術的な立場で参加する筑波大学の永田恭介学長は「前回から比べるとアクセル、ブレーキのタイミングが改善され、普通のバスと変わらない乗り心地に近くなった。運転士不足は深刻であり、もっと大々的に、国も市も、産業界も、本気で取り組んでもらいたい。待っている理由がないので、早くできればと思っている。もたもたしているという印象を持つ。もっと早くやるべきと思っている」と苦言を呈した。
つくば市科学技術戦略課の中山秀之課長は「前回に比べて乗り心地も改善された。つくば市としても社会実装に向けて取り組んでいきたいが、まだまだ自動運転バスは価格が高いことが課題」だとし、「2年から3年後の実装を目指したい」としながらも「人間が運転する車と比べて想定外のことがどの程度起こるのか、引き続きしっかり実証していく必要があると考えている」と述べた。(柴田大輔)