【コラム・吉武直子】宍塚(土浦市)には、アオダイショウ、シマヘビ、ジムグリ、ヒバカリ、ニホンマムシ、ヤマカガシ、シロマダラ、7種のヘビが生息しています。その中でも、春~秋に里山を歩いていると比較的出会うのが、アオダイショウ、ヒバカリ、ニホンマムシです。
里山の生態系の中で、ヘビは捕食者であり、被食者でもあります。ニホンマムシはカエルが好きで、ヌマガエルやアカガエルが多い水路脇や林縁(りんえん)でとぐろを巻いて待ち伏せ、やって来たカエルに噛(か)みつき捕らえて食べます。一方、里山で繁殖する夏鳥のサシバにとってヘビは格好の獲物で、アオダイショウを捕らえて運ぶ様子が観察されるそうです。
ゆえに、ヘビが持つ牙や毒は獲物を捕らえる時の狩猟道具であるばかりでなく、襲撃者を退けて身を守るための護身用具でもあるのです。ある日、散策路の真ん中でとぐろを巻く若いニホンマムシに出会いました。さて、どんな動きをするでしょうか。
憶病な生き物
まず、このニホンマムシは、とぐろを巻いた姿勢のまま周囲の地面に擬態してやり過ごそうとしました。さらに近づくと、とぐろを解いて逃げ出しましたが、動けば襲われやすいという認識があるのか、それとも擬態に自信を持っているのか、すぐに体を伸ばしたままで動きを止め、擬態の姿勢になってしまいました。
土の塊から枝の擬態です。この状態をまたいで通るわけにもいかないので、枝でトントンと周囲をたたくと慌てて藪(やぶ)に滑り込み、またすぐに地面のくぼみでとぐろを巻いて小さくなってしまいました。
基本的に、ヘビは憶病な生き物です。人間に出会うと、周囲に擬態してやりすごそうとするか、素早く逃げ、林床(りんしょう)や地面の隙間に身を隠します。しかし例外もあり、卵胎生のニホンマムシが子を腹に抱えているときは、攻撃的で通りかかるものに襲いかかることもあるそうです。体を伸ばして口が届く範囲に近寄らない方が無難でしょう。
身近なお隣さん
里山観察会では、ヘビは生き物好きの子どもたちに人気があります。湿地で出会うヒバカリは大きくても60センチほどにしかならず、めったに噛みつくことがない穏やかなヘビです。そのため、さらさらの鱗(うろこ)を指でさわったり、瞼(まぶた)のない大きな丸い眼を観察したりすることもできて、実物のヘビを知るすてきな機会となります。
皆さんにとってヘビはどんな生き物でしょうか。危険? 不快? かわいい? かっこいい?感じることは様々であるかと思いますが、先入観から害するようなことはせず、身近なお隣さんとして付き合っていきたいものです。(宍塚の自然と歴史の会 会員)