筑波銀行グループの筑波総研(本社・土浦市)はこのほど、最近の「茨城県経済の現状と展望」をまとめた。筑波銀と総研が昨年12月に実施した企業動向調査によると ①製造業は人件費の上昇や原材料の高止まりからコスト上昇が続いているが、販売価格への転嫁や生産・受注回復により素材業種を中心に改善している ②非製造業は所得の改善を背景にして、個人消費の底堅い動きに支えられた小売業などを中心に改善している―という。
慢性的な人手不足 建設・警備
業種別では「世界情勢とそれに伴う価格上下により経営判断が難しい」(木材・木製品)、「主力製品の半導体製造装置用部品の先行きが不透明」(一般機械)、「業界は繁忙で慢性的な人手不足を感じている」(建設)、「人件費の上昇分を値上げでまかなえず利益が減少している」(コンビニ)、「新規募集が難しいことに加え従業員の高齢化による人手不足により受注を増やせない」(警備会社)といった声が聞かれた。
経営上の問題点は何かとの質問には、「原材料・仕入高」「人件費など経費増加」「売上・生産の停滞・減少」との回答が多かった(グラフⅡ・Ⅲ)。総研によると、人件費などの経費は製造業・非製造業の両方で上昇しており、非製造業ではその割合が多かった。「茨城県の最低賃金(時給)が昨年10月から52円引き上げられたこともあり、パート・アルバイトが多い業種では経営環境がさらに厳しくなる」と予想している。
賃上げで採算が悪化 中小企業
昨年秋、全国加重平均の最低賃金は1055円(前年比5.1%)引き上げられた。茨城県は5.46%引き上げられ、1005円になった(グラフⅣ)。最低賃金の引き上げは非正規労働者の生活を支えることにつながる一方で、労務費の価格転嫁が遅れている中小企業にとっては採算の悪化につながる。
総研は最低賃金引き上げに伴う企業の対応も調査した。その結果(トップのグラフⅠ)、「最低賃金を超える水準まで賃金を引き上げた」企業は13.9%、「最低賃金と同額まで賃金を引き上げた」企業は10.3%だった。残り4分の3は「すでに上回っているが引き上げた」「すでに上回っているので据え置いた」と回答した。(坂本栄)