月曜日, 1月 20, 2025
ホームコラム100年前に戻る?トランプの世界《吾妻カガミ》200

100年前に戻る?トランプの世界《吾妻カガミ》200

【コラム・坂本栄】米国は20日昼(米東部時間)からトランプさんの時代に入る。絵に描いたような保護主義(自国経済・産業優先)と孤立主義(自国第一・他国軽視)になりそうだから、世界の政治・経済システムは100年前(第1次大戦と第2次大戦の間)の状態に戻りそうだ。日本としても相当な覚悟が必要だろう。

バイデンの「嫌がらせ」

新年早々、日米間にトラブルが発生した。日本製鉄によるUSスチール買収計画について、退任直前のバイデンさんがNOと言ったからだ。日鉄はもちろん日本政府もこれに猛反発、おかしな雲行きになってきた。大統領選で負けた民主党・バイデンさんの「嫌がらせ」の感もするが、これをトランプさんが追認すれば、反米感情が高まるだろう。

日鉄とUSスチールにとっても、日本経済と米国経済にとっても、この買収案件は合理的と私は考えている。米国にとってはUSスチール・米経済の再生につながり、日本からすれば製造プラントの分散=海外投資の拡大を意味するからだ。

NOの理由として、米政府は安全保障上の理由を挙げている。日系の米社だと非常時の鋼材手当てが危うくなるという理屈だが、いざとなれば日鉄傘下のUSスチールを接収すればよい。NOは最近はやりの経済安全保障レトリックであり、本音は「大統領選時の民主党公約を破るのはまずい」ということだろう。

賢さに欠けていた日鉄

45年前、米市場で日本車が増え、米メーカーを保護するために日本車を閉め出す騒動が起きた。保護派議員や自動車労組は、高関税や輸入台数制限を打ち出したが、日本側が米政府の(見える形での保護貿易に走りたくない)立場に配慮し、対米輸出台数を抑えることで事態を沈静化させた。その後、日本メーカーは米国内に工場を次々建て、ウイン・ウインの関係を構築した。日米とも賢かったといえる。

バイデンさんとトランプさんの言動からも明らかなように、米国は自国の力に自信を失いつつあり、ストレートな方策で国益を守ろうとしている。大統領選中(経営が悪化したUSスチールにせっつかれたとしても)国名を冠した米社の買収に動き、組合員の敗北感を刺激した日鉄は賢さに欠けていた。米国の経済は読めても(国民の愛国感情に左右される)政治・選挙が読めなかったようだ。

沖縄を返せと言われる?

(以前米国が領有していた)パナマ運河を返せ、(デンマーク自治領の)グリーンランドが欲しい、と叫ぶトランプさんの言動には唖(あ)然としている。

こういった他国軽視が通用するならば、自国の安全保障のためにNATOの欧州圏との間に緩衝地帯を設けたい(ウクライナを支配したい)と考えるプーチンさんの行動を否定できないし、内戦に負けた中華民国の末裔(まつえい)が支配する台湾は中国の一部だと主張する習さんの言い分も説得力を持つ。

プーチンさんのウクライナ侵攻、習さんの台湾戦略と同じように、トランプさんはデンマークとパナマに戦争を仕掛けているようなものだ。この伝で行くと、対中戦略上必要だから「沖縄を返せ」と言ってきても不思議でない。両大戦の間から100年になる今、世界は力が支配する時代に戻りつつある。(経済ジャーナリスト)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

6 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

6 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img
spot_img

最近のコメント

最新記事

原材料高と人件費増が経営問題 筑波総研調査

筑波銀行グループの筑波総研(本社・土浦市)はこのほど、最近の「茨城県経済の現状と展望」をまとめた。筑波銀と総研が昨年12月に実施した企業動向調査によると ①製造業は人件費の上昇や原材料の高止まりからコスト上昇が続いているが、販売価格への転嫁や生産・受注回復により素材業種を中心に改善している ②非製造業は所得の改善を背景にして、個人消費の底堅い動きに支えられた小売業などを中心に改善している―という。 慢性的な人手不足 建設・警備 業種別では「世界情勢とそれに伴う価格上下により経営判断が難しい」(木材・木製品)、「主力製品の半導体製造装置用部品の先行きが不透明」(一般機械)、「業界は繁忙で慢性的な人手不足を感じている」(建設)、「人件費の上昇分を値上げでまかなえず利益が減少している」(コンビニ)、「新規募集が難しいことに加え従業員の高齢化による人手不足により受注を増やせない」(警備会社)といった声が聞かれた。 経営上の問題点は何かとの質問には、「原材料・仕入高」「人件費など経費増加」「売上・生産の停滞・減少」との回答が多かった(グラフⅡ・Ⅲ)。総研によると、人件費などの経費は製造業・非製造業の両方で上昇しており、非製造業ではその割合が多かった。「茨城県の最低賃金(時給)が昨年10月から52円引き上げられたこともあり、パート・アルバイトが多い業種では経営環境がさらに厳しくなる」と予想している。 賃上げで採算が悪化 中小企業 昨年秋、全国加重平均の最低賃金は1055円(前年比5.1%)引き上げられた。茨城県は5.46%引き上げられ、1005円になった(グラフⅣ)。最低賃金の引き上げは非正規労働者の生活を支えることにつながる一方で、労務費の価格転嫁が遅れている中小企業にとっては採算の悪化につながる。 総研は最低賃金引き上げに伴う企業の対応も調査した。その結果(トップのグラフⅠ)、「最低賃金を超える水準まで賃金を引き上げた」企業は13.9%、「最低賃金と同額まで賃金を引き上げた」企業は10.3%だった。残り4分の3は「すでに上回っているが引き上げた」「すでに上回っているので据え置いた」と回答した。(坂本栄)

サンガイア ホームで北海道YSに連敗

バレーボールVリーグ男子のつくばユナイテッドSunGAIA(略称サンガイア、本拠地つくば市)は18、19日、土浦市大岩田の霞ケ浦文化体育会館で北海道イエロースターズ(YS、本拠地北海道札幌市)との2連戦を戦い、18日はセットカウント2-3、19日は0-3で両日とも敗れた。これでサンガイアは7勝7敗で東地区3位。 2024-25 Vリーグ男子(東地区)レギュラーシーズン(1月19日、霞ケ浦文化体育会館)サンガイア 0-3 北海道YS19-2520-2525-27 18日はフルセットを戦い、先にマッチポイントを握りながらあと1点が奪えずという惜しい敗戦。対して19日はストレート負けという厳しい結果。第3セットは中盤まで優位に進めながら後半逆転され、そこからデュースに持ち込んだものの、最後の競り合いでブレイクできなかった。 「昨日は相手のサーブミスなどに助けられたが、今日は自分たちのミスが多かった」と長谷川直哉。「相手は個の力で得点を重ねてきた。うちはチーム力で戦わないといけないが、踏ん張り切れなかった」と川村駿介は話す。 また架谷也斗主将は「守備では練習の成果が出て、チーム全体で守りの形をつくれていた。問題は攻撃。トランシジョンでミスをせず、決めるべきところを決めきりたい」と振り返った。 試合全体としては長いラリーが続き、強打ではなかなか決着が付かず、両チームとも軟打やフェイントを織り交ぜて相手を揺さぶっていた印象があった。だがこれらはコンビネーションが合わず、苦し紛れの結果でもあったそうだ。またレシーブ合戦の様相を呈したのも、互いに相手の長所であるブロックを避けたせいでもあったという。 一方で守備面での安定感は高く、それはサンガイアの今季サーブレシーブ成功率にも表れている。リベロの浅野楓は72.6ポイントで個人ランキングトップ、架谷は68.1ポイントで同3位。この2人を避けるように今日の相手のサーブは川村に集中していたが、川村もまた同19位の名手。1試合中40本のサーブを受けて67.5ポイントの成功率を挙げた。「余裕を持ってスパイクに入れるよう、高さを出したレセプションを心掛けた」と話している。 今後の改善点としてはコンビネーションの精度を上げることと、スパイカーの枚数を増やし、戦術の幅を広げること。昨年11月に入団内定した4人の選手も、それぞれプロデビューやベンチ入りを果たすなど、チームにフィットしつつあるという。 「北海道YSに独走を許したことで地区優勝は厳しくなったが、プレーオフ進出圏の2位以内には十分可能性がある。当初の目標通り新Vリーグ初代王者を目指し、最後までぶれずにやっていく」と加藤俊介コーチは意気込む。 次節は2月1、2日、川崎市のカルッツかわさきで川﨑レッドスピリッツと対戦する。(池田充雄)

「県南の小田氏文化圏こそ雪村育てた」 水墨画の巨匠めぐり謎解き

水墨画の巨匠、雪村(せっそん)をめぐっては現在、作品の多くをたどることはできても、生没年には諸説あり、生誕地も不詳、どこで画業の修業を積んだかも不明という謎多き存在だ。この歴史ミステリーに挑んでいるのが茨城県北、常陸大宮市に事務局を置いて活動している雪村顕彰会(冨山正一会長)。18日には冨山会長が土浦市に足を運んで講演し「県南の小田氏文化圏こそ雪村を育てた拠点だったかもしれない」の自説を展開した。 顕彰会主催の雪村講演会は土浦市大和町、県南生涯学習センターで開かれた。2月15日から水戸市の県立博物館で開館50周年企画展「雪村ー常陸に生まれし遊歴の画僧」が開かれることから、前宣伝を兼ねての開催となった。雪村は室町時代の画僧で常陸国生まれ、当時の県北一帯を支配していた佐竹氏ゆかりの出自とみられるが、県南では今一つなじみがない。 生まれた年については延徳元年(1489)、明応元年(1492)、永正元年(1504)の3学説があり、晩年の隠棲地となった福島県三春での生誕を主張する向きもある。 佐竹氏の研究家として知られる冨山会長は、これらの諸説や文献と向き合い、各地に足を運んで実地に調査、取材をし考察してきた。その上で「冨山の見方」と断っていくつかの持論を展開した。 生誕地は「奥七郡」、茨城県北部の部垂(へたれ)の村田郷、現在の常陸大宮市下村田が有力とした。雪村は得度(出家)の上画僧になっているが、得度寺は下村田に近い那珂市の静神社境内にあった弘願寺(こうがんじ、現在は移設)の可能性が高い。弘願寺は常陸国で唯一、版木による印刷物を発行していた。 修業を積んだのは城里町下古内の臨済宗幻住派の清音寺(せいおんじ)と見る。ここで禅宗の幻住派がクローズアップされる。幻住派の開祖である中国・元時代の禅僧、中峰明本(ちゅうおうみんぽん)の画など宋、元時代の絵画に接したと考えられる。権威主義を排し自由さを求めた教義に雪村はひかれ、創作にも影響を与えたようだ。 土浦の法雲寺目指す そして雪村は清音寺の法縁を頼って土浦市高岡の法雲寺(ほううんじ)を目指した。関東における当時最大の幻住派の拠点だった。何百人と修行僧のいる大きな寺で、画業の研さんを積むには不向きだったが、法雲寺末寺の崇源寺が桜川対岸のつくば市大にあった(現在は廃寺)。小田氏の最盛期を築いた8代当主孝朝が開基した。崇源寺は末寺の中でも別格の大寺といえ、ここに雪村が住んでいたという話と雪村作と伝わる絵が伝わっている。 さらにつくば市小田の龍勝寺には雪村作の「鷹(たか)図」が所蔵(門外不出)されている。龍勝寺も元は孝朝が建立した崇福寺で、幻住派寺院だった。 土浦-つくば一帯の法雲寺と末寺を中心に育った地域文化を「小田氏文化圏」と命名した冨山会長は「県北の佐竹氏の文化は、後の支配者である水戸徳川家との関係でベールに包まれてなかなか見えてこないところがある。小田氏文化圏はそうしたフィルターを介さずに伝わっているようだ。雪村についても掘り起こしてみるともっと出てくるのではないか。興味深く見守りたい」と語った。(相澤冬樹) ◆「雪村ー常陸に生まれし遊歴の画僧」は2月15日(土)から4月6日(日)、水戸市緑町の県立博物館で開催。同館では33年ぶりに雪村の名作が全国から集まる。国重要文化財の「風濤(ふうとう)図」など100点以上を展示。入場料:一般690円、満70歳以上350円、小中高生・未就学児は無料。電話029-225-4425。【おことわり】本記事の内容は同展に直接関わるものではありません。

大学入学共通テスト始まる 「情報」加わり試験科目再編

大学入学共通テストが18日、始まった。試験は19日まで2日間行われる。会場の一つ、筑波大(つくば市天王台)では、昨年より50人少ない6253人が受験を予定している。全国の志願者数は、昨年より約3200人多い49万5171人。県内では、昨年より約100人少ない1万2249人(男性6579人、女性5670人)が受験する予定だ。 現行の学習指導要領に対応した最初の試験で、今年から新たに情報リテラシーやプログラミングの基礎などを扱う「情報」が加わり、これまでの6教科30科目から、7教科21科目に再編された。既存の科目でも問題数が増えたり、試験時間が延長されるなど、昨年までと大きく変化している。初日は地理・歴史・公民、国語、外国語が、2日目は理科、数学、情報が行われる。 筑波大には、午前7時過ぎから受験生を送り届ける家族の車やバスなどが到着し始めた。つくば市ではこの日、最低気温がマイナス4度を記録。受験生たちの白い息を朝日が照らしていた。父親に車で送ってもらった利根町の野口明莉さんは「今日は5時に起きて準備した。全力でいきたい」と意気込みを語った。牛久市の丁村啓介さんは「少し緊張しているが、これまでの成果を発揮できるように頑張りたい」と気持ちを落ち着かせた。 インフルエンザ流行、無理せず追試験を 大学入試センターでは、インフルエンザが流行する中で体調がすぐれない場合は無理をせず、1月25日と26日に行われる追試験の受験を申請するよう呼び掛けている。追試験会場は、東日本(北海道、東北、関東、甲信越、静岡県)は東京都府中市の東京外語大学と、小金井市の東京農業大学。本試験で指定した試験場の地区に基づき、それぞれの会場で受験することができる。(柴田大輔)