筑波山麓の筑波山口(旧筑波鉄道筑波駅跡)近くに昨年10月、イタリア料理店「クラクラ」(CRACRA、つくば市筑波)がオープンした。白い洋風の店舗で、元公邸料理人の岩坪貢範(38)=いわつぼ・たかのり=さんがオーナー兼シェフを務める。
岩坪さんは2013年から10年間、つくば市国松出身の外交官、岡田誠司(68)さんの下で、カナダ、南スーダン、バチカンの在外日本大使館や総領事館の料理人を務めた。2年前、岡田さんのふるさと、筑波山麓に居を構え、筑波山地域の食材の豊かさや自然環境に魅せられ、昨秋、開業した。

公邸料理人は、大使館や総領事館などで、公的会食業務に従事し高品質の料理を提供する料理人のこと。現地要人との会食など外交活動で重要な役割を担う。岩坪さんは2013-16年にカナダのバンクーバー総領事館、17-20年に南スーダンの大使館、20-23年にバチカンの大使館に勤務し、大使の家族の食事も作ってきた。2023年度には外務大臣から優秀公邸料理長の称号を受けた。
岩坪さんは「料理人として相手国の人々やその土地に合わせた料理を作るという稀有(けう)なキャリアを積むことができた」と振り返り、「岡田さんとはバンクーバーやバチカンで、プライベートで一緒に旅行をし、カナダのワイナリーや、リゾートにあるレストランなどで食事し大変刺激を受けた。イタリアでは北イタリアを中心に各都市を回り、イタリアの野菜、畜産、ワイナリーなど食文化を直に見ることができ、大変勉強になった。現在も岡田さんはクラクラを交流の場として使ってくれる一番身近なお客さん。今回の開業においても人脈も含めいろいろ助けられた」と語る。

岩坪さんは富山県出身、調理科のある地元の高校を出て、卒業後は東京の調理専門学校で学んだ。19歳で神奈川県藤沢市のホテルに就職、21歳で東京のレストランに勤務し、日本食からフランス料理まで、オールラウンドに料理を学んだ。2013年公邸料理人の道に進み、さらに料理の腕を磨いた。
帰国後、筑波山麓に移り住み、レストラン開業に向けて更地から事業計画を練り、創業融資などを受け昨年ようやく開店にこぎつけた。クラクラはイタリア語でカエルの鳴き声ことを言い、筑波山のガマガエルにちなみこの名を使った。岩坪さんは「地元の食材を使った料理にこだわり、地元筑波山麓を大事にしていきたい」という。

料理はランチメニューが2500円から4000円、ディナーは5000円から1万円で、前菜、自家製のハム、パン、パスタ、肉料理や魚料理などのコース料理を提供する。素材は岩坪さんが厳選したものだ。メニューは1週間ごとに変わり、定番メニューは作っていないという。
店内の広さは約100平方メートル、テーブル席が18席、カウンター席は2席で、完全予約制。立食形式なら25人は入れるという。現在は従業員を雇わず、厨房、接客、レジまで一人でこなす。絵心もあり、店のポストカードのイラストは自身が描く。
「この地域には地ビールや造り酒屋、ワイナリーがあり、連携していけたら良いと思う。何らかの形で地域にも貢献していきたい。料理もお客さんの要望にあわせたメニューも可能なので、気軽に相談してほしい」と語る。(榎田智司)
◆クラクラ(CRACRA)はつくば市筑波2696-3、営業時間は午前10時から、毎週火曜定休。電話(Fax)029-897-3680、メールは298CRACRA@gmail.com、ホームページはこちら。現在のところ予約のみ受け付けている。