水曜日, 11月 5, 2025
ホームつくば再認定に向け現地調査 筑波山地域ジオパーク

再認定に向け現地調査 筑波山地域ジオパーク

来年1月、日本ジオパーク委員会が審査

筑波山や霞ケ浦、関東平野などを含む「筑波山地域ジオパーク」で、地質遺産など大地の遺産を保全し活用する取り組みが質・量ともに充実しているかなどについて審査する、4年に一度の再認定審査が今年行われている。審査の一環で28日から日本ジオパーク委員会の調査員2人が筑波山地域を訪れ、30日まで現地視察や関係者へのヒヤリングなどを実施している。合格しないとジオパークの認定が取り消される厳しい審査だ。審査結果は来年1月27日に出される。

28日、日本ジオパーク委員会委員で群馬県立自然史博物館学芸員の菅原久誠さんと、島原半島ユネスコ世界ジオパーク専門員の森本拓さんの2人が現地調査に訪れた。2人は同日、筑波山地域ジオパークを運営する同推進協議会(つくばなど6市の行政、市民、民間団体、専門家らで構成)のジオガイドらの案内で、つくば市平沢の奈良・平安時代の役所跡「平沢官衙遺跡」や周辺の古墳などのほか、同ジオパークの中核拠点として旧筑波東中学校校舎に昨年11月オープンした「つくばジオミュージアム」などを視察した。29日は桜川市内を現地視察、30日は書類審査などを実施する予定だ。

平沢官衙遺跡では28日、同遺跡歴史ひろばを管理し団体客を案内したりイベントを開催するなどしているNPO平沢歴史文化財フォーラムの結束芳彦理事長(71)が、日本ジオパーク委員会の調査員らに同官衙遺跡が保存されるに至った経緯を説明した。「県営住宅をつくる計画があり、遺跡が出たので、県営住宅をつくるか、遺跡公園をつくるか論争があった」とし「国指定史跡となり、今は我々地元民が管理している。年間4~5万人が来て、勉強したり、くつろいだり、散歩をしている。我々も(遺跡として残ったことを)誇りに思っている」などと話した。調査員2人からは「修学旅行も来られますか」「自ら管理しようというのは集落の中から沸き起こったのですか」などの質問が出た。

結束さんは「再認定を受けるため(推進協議会の関係者が)頑張っているので、我々も地元民が誇りに思っていることや、学校教育にも資しているということを話した」などと語った。

平沢官衙遺跡について紹介するNPO平沢歴史文化財フォーラムの結束芳彦理事長(左端)

8つの課題を指摘

筑波山地域ジオパークは2016年にジオパークとして認定された。その後2021年2月に再認定され、今回は2回目の再認定審査となる。審査のポイントは、前回4年前の審査の際に日本ジオパーク委員会から指摘された事項に対応できているかだ。

4年前の指摘事項は①ジオサイトの定義見直しに伴うサイトの見直し➁学校教育との連携③多様なジオツーリズムの在り方の検討④効率的かつ効果的な事務局運営体制の検討⑤適正な予算の検討⑥拠点施設・学習施設の連携⑦相互連携の推進及びパートナーシップの強化⑧看板や展示に関するテクニカルな課題及びアドバイスーの8つだった。

同推進協議会事務局のつくば市ジオパーク室によると、①ジオサイトの見直しについては、これまで「筑波山南麓」「桜川中流」など地域ごとに26のジオサイトを設定していたが、ユネスコ世界ジオパークのガイドラインの再定義に基づいて新たに組み直し、「地質サイト」として筑波山山頂の花こう岩など22カ所、「自然遺産」として筑波山塊のブナ林など8カ所、「有形文化遺産」として平沢官衙遺跡、桜川市の真壁の町並みなど32カ所、「無形文化遺産」としてがまの油売り口上など8カ所、「ビュースポット」として土浦市の朝日峠展望公園展望台など12カ所を今年8月の総会で設定した。伊藤祐二室長によると「これまでのジオサイトはふんわりしたエリアだったが、新たな設定では、どこからどこまでかを区切って設定している。区域を明確にしたので、今後はどう保全していくかについても取り組む」と方向性を話す。「民有地についても、地権者と一緒に保全について考える成功例をつくりたい」と意欲を語る。

8つの課題に対する取り組みとしてほかに➁学校教育との連携では、推進協議会で専門員を雇用し2021年から各学校で出前授業などを実施してきた、⑥拠点施設と学習施設との連携では、昨年、中核拠点施設「つくばジオミュージアム」を整備した。さらに⑦相互連携の推進やパートナーシップの強化では、今年2月、ジオパーク活動で得た知識をもとに、真壁石や稲田石などと呼ばれる筑波山塊の花こう岩を国際地質科学連合のヘリテージストーン(天然石材遺産)に申請し、7月にアジアで初めて認定された。認定を受けて真壁などの石材業者から「バブル以来の盛り上がり」と言われたなど、新たな連携ができたとする。

再認定審査に向けては、現地調査に先駆けて9月15日、筑波山地域の課題に対する進ちょくについて、すでに報告書と自己評価表を提出している。

伊藤室長は「まだできてない部分もあるが、4年間真摯(しんし)に課題に対応してきた。現地調査では、課題について調査員と相談しながら、今後良くなる方向で審査が受けられれば」と話す。(鈴木宏子)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

10 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

10 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

若い脳はインプット 年を重ねたらアウトプット《続・気軽にSOS》166

【コラム・浅井和幸】悲しいことに、20代を超えると身体的な能力は徐々に衰えていくものです。もちろん、何もしないよりも鍛えたほうが脳も衰えにくいし、成長することもあるでしょう。単純な能力では、50代は20代に心身ともに勝てないものです。しかし、単純な使い方でなく総合的な発揮の仕方では勝てる分野もあるかもしれません。 例えば自動車保険では50代の保険料は安くなります。統計的に交通事故を起こす確率が減るからですね。若い世代は総合的に事故回避能力が高いと言えるでしょう。 10代までは様々な経験を積んで(インプットして)、今後の人生に備える必要があります。脳もそのように出来ており、知的好奇心が発揮されやすい造りになっているそうです。単純な記憶力が中高齢層よりも高いものです。音楽を聞きながら英単語を覚える芸当は、若年層の特権かもしれません。 インプットにたけている若年層は心身の成長に有利ですが、成長とはつまり不安定さとも言えます。毎日が新鮮であることは、この先が見えないという不安につながります。それに対し、先達が安心感を与えることが必要になるのでしょう。 中高齢層も、インプットをおろそかにすると老害を招くことになりかねません。新しい情報も柔軟に受け入れていくことが大切です。しかし、この取り入れが苦手となっていく中、今まで学んできたことを再構築してアウトプット、表現することにたけた脳を生かしましょう。 たくさん学習の機会をつくる 「記憶」とか「物忘れ」とかの言葉を使うとき、どのようなイメージを持っているでしょうか。言葉などが出て来ない=記憶力が悪いと表現されますが、それは記憶していないのか、記憶しているけれど思い出せないのか、あまり考えたことがないかもしれません。 中高齢層は、思い出すことを練習することで脳の特性を生かせます。表現する方法も、今までのインプットを組み替えて様々なアウトプットができる練習をするとよいと思います。インプットを増やしたい場合は、たくさん学習の機会をつくってください。 表現を豊かに適切に行うことが、自分や周りの目標達成や幸福にプラスになることは間違いありません。せっかく学習した多くの経験を、いつも単純な繰り返しのアウトプットだけではもったいないです。さらには、自分や周りが苦しくなっていくようなアウトプットは残念なことだと私は思います。今よりもよいコミュニティ・家族・自分になるような、そして豊かに楽しくなるようなアウトプットを試行錯誤していきましょう。(精神保健福祉士)

小美玉市の「ひょうたん美術館」《ふるほんや見聞記》10

【コラム・岡田富朗】茨城県小美玉市にある「ひょうたん美術館」(同市小岩戸、大和田裕人館長)は、30年ほど前、初代館長の大和田三五郎氏によって開館しました。4500坪(約1.5ヘクタール)という広大な敷地には、60年の歳月をかけて全国から蒐集された瓢箪(ひょうたん)にまつわる美術品が展示されています。 展示品は江戸時代などの古い時代のものだけでも約1万点にのぼり、皿、掛け軸、火鉢、花籠、徳利(とっくり)など、生活文化の中に息づく瓢箪の姿を見ることができます。その図柄をあしらった火鉢は100点以上にもおよび、今なおコレクションは増え続けているそうです。 天井からはたくさんの瓢箪の水筒がつるされており、その壮観な光景に思わず見入ってしまいます。 世界に広がる瓢箪文化 瓢箪は世界最古の栽培植物のひとつで、原産はアフリカ。世界各地へと広まり、容器や食器、装飾品、楽器など、さまざまな形で人々の暮らしに取り入れられてきました。 展示の中には、アフリカの打楽器「バラフォン」を見ることができます。ハワイのフラダンスで用いられる「イプ」も瓢箪を利用して作られた伝統楽器で、楽器製作用に加工前の瓢箪を求めて来館されるお客様もいるそうです。 館内では、加工用の瓢箪から、ランプシェード、スピーカー、現代作家によるオブジェなど、さまざまに姿を変えた瓢箪の作品も展示・販売されています。 無病息災を願う縁起物 古来、瓢箪は「災いを払う縁起物」として広く親しまれてきました。その理由のひとつが、「六つの瓢箪」で「無病(むびょう)息災」という語呂合わせにあります。戦国時代や江戸時代には、兜(かぶと)や鍔(つば)、根付(ねづけ)などの意匠にも瓢箪の図柄や形が多く用いられ、展示されている兜は印象的でした。 また、歴史上の人物にも瓢箪を愛した人は少なくありません。菅原道真公は大宰府の梅の木の下で瓢酒(ひょうしゅ)を楽しんだと伝わりますし、豊臣秀吉の「千成瓢箪」はあまりにも有名です。水戸の藤田東湖も「瓢や瓢…」の詩を残し、その魅力を詠みました。文人の中にも瓢箪を愛した人がいました。富岡鉄斎が愛用した瓢箪も展示されています。 「ふくべ」とも読まれる瓢箪に、昔も今も、人々は「福」を見出してきたのかもしれません。ひょうたん美術館は、そんな「縁起と美のかたち」に出会える場所です。(ブックセンター・キャンパス店主)

介護ロボットが部屋に来る日《看取り医者は見た!》46

【コラム・平野国美】前回(10月1日掲載)は、コンパニオンアニマル(伴侶動物)が高齢の独居者にとってかけがえのない存在になっているという話をしました。では、彼らの次に私たちの部屋に現れるのは何なのでしょうか? この問いは、高齢化社会を日本がどう乗り切るかという、未来そのものへの問いかけでもあります。 街に出れば、飲食店のスタッフもお客も外国の方が増えました。介護の現場も同様です。一方で、スーパーやコンビニではセルフレジ化が進んでいますが、私の患者さんやご家族の中には、これを受け入れられない方が少なくありません。ある程度の年齢になると、スマートフォンやこうした装置に苦手意識が生まれるのは、仕方ないかもしれません。 この「効率化」と「心情」のギャップは、医療介護の分野でより顕著になります。スタッフ不足で事業所の倒産さえささやかれる昨今、その現場にいる私は「自分が介護される側になったとき、部屋を訪れてくれる人はいるのだろうか?」と考えてしまうのです。 以前から、一部の識者は「介護はロボットに任せる時代が来る」と言っていますが、現場の仕事のどの部分をロボットに移行できるというのでしょうか? ロボットに心を奪われた友人 先日、ある施設で介護ロボットのデモンストレーションを見学する機会がありました。最初は物珍しそうに集まっていた高齢の入居者たちが、10分後には興味を失い、1人また1人と、その場を離れていくのです。そのとき、ロボットと戯れる自分の姿を想像し、正直、見たくないな―と思いました。人間としての尊厳が削られてしまう感覚を覚えたのです。 しかし、最近、この受け止め方を少し揺るがす出来事が二つありました。一つはある業界紙の記事で、これまでとは少し違う角度からロボット介護を論じる内容でした。もう一つは、長年の友人がロボットに心を奪われた「事件」です。彼は、パートワークマガジン『週刊 鉄腕アトムを作ろう!』を長い時間をかけて完成させました。ある日、70歳になる知的な友人が、少年のような目でこう語るのです。 「スイッチを入れたら、アトムが目覚めて、何て言ったと思う?」 「……?」 「『やっと、会えたね』って言われた。もう胸がキュンとしちゃってね。毎晩、アトムと遊んでいるんだよ」 この二つのことを重ね合わせると、欧米とは違う、日本独自のロボット観のようなものが見えてきます。次回は、この業界紙の記事とアトムの言葉をヒントに、私たちの未来を考えてみたいと思います。(訪問診療医師)

予定通りあす11月1日開催 土浦全国花火競技大会

長靴や滑りくにい靴で観覧を 土浦全国花火競技大会実行委員会(会長・安藤真理子土浦市長)は30日、大会開催の是非を決める役員会を開き、予定通りあす11月1日、第94回大会を開催すると発表した。 あす1日の土浦の天気予報は、未明まで雨が降るが明け方からは晴れ。事務局の市商工観光課は、雷が鳴った場合は一時的に打ち上げを中断するなど、天気の急変や安全確保が困難な場合は予定を変更することもあるとする。 観覧者に向けては、①きょう10月31日夕方から雨が降ると予想され、地面がぬかるんだりする箇所があるので、長靴や防水性の高い靴、滑りにくい靴底のものを着用してほしい、②観覧中のかさの使用は視界確保及び安全確保のためご遠慮いただいているので、雨が予想される場合はレインコートやポンチョを持参してほしいーなどと呼び掛けている。 競技開始は午後5時30分、同市佐野子、学園大橋付近の桜川河川敷で打ち上げる。1925(大正14)年に神龍寺の住職、秋元梅峯が初めて花火大会を開いて100周年の記念大会となる。全国19都府県から57の煙火業者が集まり、内閣総理大臣賞を競う。10号玉の部45作品、創造花火の部22作品、スターマインの部22作品の3部門で競技が行われるほか、広告仕掛け花火や、大会提供のエンディング花火としてワイドスターマイン「土浦花火づくし」などが打ち上げられる。 昨年、荒天時の順延日に警備員が確保できず中止としたことを踏まえ、同実行委は今年、順延日も確実に警備員を確保できるようにするなど準備を進めてきた(5月26日付)。 ➡今年の見どころはこちら