水曜日, 11月 26, 2025
ホームつくば受験競争さらに激化も県「定員増必要ない」 県立高校不足【アングルつくば市長選’24】中

受験競争さらに激化も県「定員増必要ない」 県立高校不足【アングルつくば市長選’24】中

今つくば市の最大の課題の一つが、県立高校が不足している問題だ。人口が増え、子育て世帯が増加し、義務教育の小中学校などは市内のTX沿線地区に新たに7校が開校したにもかかわらず、市内の全日制県立高校の定員は中学卒業者数の6人に1人の枠しかない。市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」(片岡英明代表)の調査によると、つくばの募集枠は水戸市の3分の1だ。

つくばに県立高校が不足している問題は、市民団体が2021年の市議会9月議会に出した請願をきっかけに顕在化した。以来3年間、市民団体と市選出県議、市などが一丸となって県に対し要望活動を続けてきた。にもかかわらず高校受験を控える中学3年生の受験環境は、3年前よりますます激化している。

これまでの県に対する要望活動の成果として、つくばサイエンス高校の定員が2学級80人増加、牛久栄進高校が1学級40人増加した。一方で、旧制一高に付属中が新設されたことで土浦一高の定員が2学級80人減、水海道一高が1学級40人減、下妻一高が1学級40人減となった。片や県の試算によると、つくば市の中学生は2024年から28年までに254人増え、24年から30年までに380人増える。

前提の算定方法を変更

来年度の県立高校募集定員の発表を前に、県教育庁は今月17日「県立高校の今後の募集学級数・募集定員の見込みを試算」と題する資料を明らかにした。その中で「中学校卒業者数の増加がみられるつくばエリアの状況」という項目を設け、「現時点では定員増が必要との判断には至ってない」とする方針を示した。

同資料によると、つくば市からの主な通学圏は、つくば市内の県立高校のほか、概ね片道1時間未満で通学ができる周辺市の県立高校となっている。このためつくば市の中学校卒業者数増加については、県内を12エリアに分けた「つくばTX沿線エリア」(つくば、つくばみらい、守谷、常総市、牛久市の一部など)とは別に、隣接している土浦市などの「県南北部エリア」の一部、下妻市などの「県西北東部エリア」の一部、牛久市などの「県南南部エリア」の一部を含めた7市17校(筑波、竹園、つくばサイエンス、並木中等、石下紫峰、水海道一、水海道二、伊奈、守谷、土浦一、土浦二、土浦三、土浦工業、牛久、牛久栄進、下妻一、下妻二)の入学状況を踏まえて検討するとした、

さらに、現在の推計では7市の中学校卒業者数が最大7043人となるのは2028年で、24年から180人増加する見込みだが。今年度の筑波高校、つくばサイエンス高校の欠員数の合計は194人で、中学校卒業者数だけで比較すれば現行の募集定員で足りる。魅力づくりにより筑波高とつくばサイエンス高の欠員が解消していくことを前提として28年の対象17校の入学見込みを推計したところ、2024年の募集定員の4120人に収まっている、その後は7市の中学卒業者数は減少が見込まれていることから、現時点では定員増が必要ではないーとの判断だ。背景には県全体で中学生が減少し続けていることがある。

県立高校の適正配置を考える前提として県は、県内を12エリアに分け、エリアごとに検討してきた。今回示された判断は、これまで前提としてきた県内12エリアとは別に、隣接市を含めた7市という新たなエリアを設けており、前提条件を変えるものだ。

これについて県教育庁高校教育改革推進室は「(今回示した判断は)12エリアを原則としベースとするが、エリアの実情を踏まえたもの」だとする。

校舎増築費負担提案に「費用の問題ではない」

つくば市が毎年行っている県に対する来年度予算編成要望が今年は9月5日に行われた。つくば市長は自身のSNSで、9月の予算要望の際「つくば市が既存の県立高校の校舎増築分の費用を市で負担することを提案した。例えば竹園高校を1学年2学級80名分増やすと、3学年で6学級分の建設費をつくば市で持つ」などと発信した。

市の新たな提案に対して県は「提案はあったが、そもそも費用の問題ではなく、現時点で実質的に定員増は必要ないという判断」だと、市の提案を一蹴する。

「事態は深刻に」

市民団体の片岡代表は「(県立高校が不足していることから)つくばでは県立中学を受験するために小学3、4年から塾に行くという状況になっており、その状況が今、土浦市などにも広がっている。事態は深刻になっている」と数字を示して指摘する。「この状況は社会的につくられたもの。個人の努力の問題ではない。社会が、県が、対応しなくてはならない」と話す。

県立高校が不足している問題をどうすべきなのか。▽市長選に立候補している五十嵐立青氏は「既存校の定員増を県に要望し、増設分の校舎の建設費は市で負担する提案をした。県立・私立高の誘致と県立高の定員増に向けた働き掛けをしていく」とする。▽星田弘司氏は「短期的には県立高校の募集定員増を県と交渉し、公立高校の誘致、県立高校の新設、市立高校の設置検討などあらゆる可能性を排除せずしっかり取り組む」とする。(鈴木宏子)

県立高校不足問題をめぐる最近の動き
2021年4月 県立土浦一高に付属中併設、定員減
2021年10月 市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」が市議会に出した県立高校新設や既存校の定員増などを求める意見書採択を求める請願が全会一致で採択
2022年4月 水海道一高、下妻一高に付属中新設、定員減
2022年12月 大井川和彦知事が県総合教育会議で「つくば市立高校をつくってはどうか」と発言
2022年12月 つくば市などへの県立高校の新設や既存校の定員増などを求める県議会請願が継続審査に
2023年4月 つくばサイエンス高を2学級増
2024年4月 牛久栄進高を1学級増、筑波高校に進学対応コースを1学級新設
2024年4月 つくば市が高校生に通学費補助など開始
2025年4月 つくばサイエンス高に普通科を3学級新設

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県の監査に5年間虚偽報告 つくば市の生活保護行政をめぐる不適正な事務処理に関し、同市が県の監査に対して虚偽報告をしたのは「虚偽公文書作成罪に該当する」などとして、同市職員(40)が20日付でつくば警察署に刑事告発していたことがわかった。 告発内容は、生活保護を担当する市のケースワーカーなどの現業員が受給者に生活保護費を支給するにあたって、組織的に現業員が現金を取り扱っていたにもかかわらず、2019~23年度の5年間にわたり、県の監査調書に虚偽の回答を行い県に提出していたほか、23年度の県の監査でも県に対し「現業員が現金を取り扱うことはない」など事実と異なる説明をしていたなど。告発した市職員は、公務員がその職務を行使する目的で虚偽の文書を作成した虚偽公文書作成や背任などにあたるなどと指摘し、「虚偽が5年以上に及んだ事実を考慮すれば市が組織的に行ったものであることは否定し難い」「すべての事実が明らかになっているとは思えず、看過することはできない」などと指摘している。告発対象者は不詳としている。 現業員の現金取り扱いをめぐる虚偽報告については、県が2024年度に実施した特別監査で、市に対し「監査において虚偽の報告を行う行為は非常に悪質であり、生活保護行政に対する社会的信頼を損なうものとして誠に遺憾」だなどと指摘している(25年3月17日付)。 生活保護費の現金取り扱いをめぐっては、全国各地で現業員が現金を失くしたり取ったりしていたことが分かり、会計検査院が2007年度の報告で是正を求め、厚労省が現金取り扱い手順や決済権者を明確にした事務処理規定の整備や、事務処理方法の見直しなどを求めていた。 つくば市の場合、2015年度に「現業員は原則として金銭等を取り扱わないものとする」などの内部規定を作成し、18年10月に「現金支給については現業員以外の担当職員を指定する」などと改めた。内部規定が守られなかったことについて同市は県の調査に「(内部規定が)組織的に周知徹底されず、引き継ぎもされなかったため適切に運用されなかった。現金取り扱い員の人員不足もあり、現業員による現金支給を組織的に黙認していた。そのため監査においても事実と異なる説明を行っていた認識はあり、虚偽の報告を行っていた」などと回答している。現在は改善され「基準に基づいた運用を徹底し、二度と虚偽報告を繰り返さないことを徹底」しているとしている。 県に対する虚偽報告について、市福祉部は今年6月に発表した報告書の中で「(現業員の現金取り扱いについて)管理職は業務中も『口外しないこと』『台帳に記録しないこと』を指示し、県の監査においても事実と異なる回答をするよう指示していたと考えられる」などと記述している。なぜ5年間も県に虚偽の報告を続けたのかについての原因や背景は、報告書では明らかにされていない。 今回の市職員による刑事告発について同市の五十嵐立青市長は「(刑事告発が)どの部分か確認してないのでコメントできない。(生活保護行政をめぐる同市の不適正事務については)これまでも福祉部の報告等ですべて明らかにしているし、是正も行われているので、我々としてはこれまで通り改善を進めていきたい」としている。 刑事告発した市職員は2022~23年度まで約2年間、市社会福祉課に所属し生活保護行政を担当した。業務の中で、誤支給や誤認定など不適正な事務処理が行われていることを見つけ、内部で是正を訴えたが聞き入れられず、24年2月と3月に各種の不適正事案の是正を求めて市公益通報委員会などに通報した。その後市は、県などからの指摘を受けて24年7月に誤支給や誤認定などを公表し、25年6月に報告書をまとめた。しかし市職員は「すべての事実が明らかになっているとはいえない」などとして、24年8月と25年6月に特別委員会や第三者による調査委員会の設置などを求めて市議会に請願書を出し、不採択となっていた(9月26日付)。 告発した市職員は「最近のつくば市の記者会見や議会での様子を見るに、とても市民に対して誠実に向き合っているとは言い難く、このまま市当局に任せていても遅々として事実は明らかにならないと思い、刑事訴訟法に定められた公務員の告発義務に基づき今回告発した」としている。 つくば警察署は、告発状を受理したかどうかについて「個別のことはお答えできない。仮に出ていたとしても捜査に関わることはお答えできない」としている。(鈴木宏子)

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