土曜日, 5月 23, 2026
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世界で最初に飢えるのは日本《邑から日本を見る》169

【コラム・先﨑千尋】前回(9月23日掲載)に続いて、食の話題を提供する。先月29日、水戸市民会館で「食の安全保障」をテーマにした講演会が開かれた。タイトルは「世界で最初に飢えるのは日本」。ぎょっとするタイトルだ。しかも、この講演会を開いたのが、普段は農業とあまり関係がなさそうな水戸葵ライオンズクラブ(以下LC)だったから驚いた。

LCは、献血や地域の環境整備、災害復興支援などを行う、ボランティア活動を目的として結成された民間団体で、同クラブは結成60年を迎えるという。今回の講演会はその記念行事として行われたもので、鈴木宜弘東京大学大学院教授の講演とパネルディスカッションの2部構成。

講演で鈴木教授は「農産物のタネは90%が輸入。肥料の原料や畜産の飼料もほとんどが輸入に頼っている。日本の自給率は37%と言っているけれど、実質は10%を切っている。今や異常気象が通常気象になり、世界の農産物の供給は不安定だ。台湾有事など戦争の危機は高まっており、食糧は武器だ。ウクライナ戦争で食料争奪戦は激化しており、オイルと食料が日本に来なくなればお手上げだ。日本政府はそういう事態に、カネで買えばいいという前提で食料安全保障を考えているが、カネでは買えなくなり、物流が止まれば飢餓が待っている。不測の事態にトマホークとオスプレイで国を守れるのか」などと訴え、世界的視野に立った食料問題や、我が国の農政の問題点、有機農業の実態などを分かりやすく解説した。

有機が話題の中心に

パネルディスカッションには、高橋靖水戸市長、幡谷公朗水戸葵LC会長、秋山豊常陸農協組合長、地域住民代表の横山かおりさんが登壇し、それぞれの取り組みや食に対する思い入れなどが語られた。

高橋市長は「農業はカネで勘定できない。市民の健康や環境を守り、多面的機能もある。地元の飲食店で地元の食材を使う店を増やし、学校給食にも地元の農産物を増やしていき、有機農産物も使いたい」などと話した。

幡谷会長は「国防で一番大切なのは食料。国民を飢えさせないことが国防だ。台湾有事になれば、1カ月でスーパーの棚から食料品が消える。食料安保のために農家が再生産できる環境を整えるべきだ」と力説した。

秋山組合長は、常陸大宮市で有機農産物を学校給食に取り入れている事例を紹介しながら「有機農産物は値段が少し高いので、消費者になかなか買ってもらえない。スーパーでも高いから置かない。子どもを健全に育てるためには、学校給食に健全な野菜や米を提供することが大事なことだ。外国から持ってこられないものを我々は作っていく。水戸農協でも有機の取り組みが始まった。国をあてにするな」と話した。

3人の子どもを持つ横山さんは「食に関心を持つきっかけは妊娠、出産だった。赤ちゃんは母親の食べたもので育っていく。普通の消費者は食の危険性に気づいていない。原料の出自や内容がよく分からない加工品をなるべく使わずに、目の前にある食材で料理するように心がけている」と、自分の体験談を語った。

鈴木教授とパネリスト4人の話を聞いて、「世界で最初に飢えるのは日本」というタイトルが決してオーバーな表現ではないと感じた。中身の濃い企画だった。(元瓜連町長)

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