能登半島地震の観測や調査、復旧支援などに関わったつくばの研究機関が一堂に会し、それぞれの取り組みを報告し、なお巨大化する災害に対する連携を模索する特別セッションが11日、都内で開かれた。
防災科研(つくば市天王台、寶馨理事長)の研究成果発表会「国土の安全と防災連携」の冒頭で行われた。筑波研究学園都市交流協議会(筑協、福田敬大会長)が全面協力し、関係省庁の垣根を越えて11機関が参集した。防災科研によれば、これまでにない規模での横断企画で、会場となった東京国際フォーラムには約250人、オンラインで約300人が参加した。
1月1日の地震発生直後から、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や国土地理院は動き、それぞれ陸域観測技術衛星「だいち2号」(ALOS-2)による土砂移動情報、空中写真撮影による斜面崩壊や陸地化変動などを把握して国の対策本部に報告。気象研究所では気象庁機動調査班(JMA-MOT)による津波の高さの測定など行った。
その後早い段階で研究者が現地入りし、産総研は調査で最大4メートルの海底隆起が観測されたことから海底活断層の動きを評価した。既知の活断層の再活動ととらえられたが、海岸段丘に2メートルもの隆起が見られたことから数百年に一度起こる活動にとどまらない1000年オーダーでとらえるべき地震だったとした。
復旧支援には国総研、土木研、建築研などのチームが現地入り。インフラの復旧や崩壊トンネルの調査などに当たった。これらの作業にはJAXAの提供するALOS(陸域観測技術衛星)や地理院の航空レーダー測量などのデータが大きく役立ったという。
農研機構は主に農村工学研究部門が職員を派遣し技術支援に当たった。森林総研は海岸の隆起に伴う飛砂対策、国環研は300万トンを超えると見積もられる災害廃棄物の処分対策などを自治体の職員向けに発信するなどした。
筑協を介し開催を呼び掛けた防災科研の宝馨理事長は「地震に始まった今年は、豪雨や猛暑が続いた。災害対策は従来100年から200年に一度のレベル1を想定してきたが、これからは経験したことのない記録破りのレベル2の災害に対する備えも必要になってくる。研究の方も連携して、巨大災害、有事に対応しなければならない」と述べた。
防災科研は研究機関との連携による災害・防災の研究をさらに推進する構えだが、今回を契機につくばで多様なテーマでの連携が進むことを期待している。 (相澤冬樹)