【コラム・福井正人】今回は、私たちの会と地元農家との協働作業である「田んぼさわやか隊」について紹介します。この隊は、毎月第3日曜日の午前中に活動しています。活動エリアは宍塚大池を水源とし備前川に流れ込む、流長約2キロの農業水路流域にある水田(休耕田を含む)と水路になります。この農業水路については、一昨年春、フナののっこみとその水路で見られる魚たちについて書きました(22年3月25日掲載)。
上流域には里山の中心をなす谷津田が、中流域には耕地整備されたものの、貴重な土水路が残された水田が広がっています。
さわやか隊の活動の意義として、①地元農家と非農家の協働作業である、②活動のメインエリアである水路中流域の水田地帯が里山を守るように広がっている、③活動地域のほとんどの水路が土水路として残されており、たくさんの生き物を育む場所となっている、④休耕田を復田して、貴重な湿地を増やす―の4点が挙げられます。
なかでも、地元農家との協働作業であることが、田んぼさわやか隊の最も大きな活動意義です。ほとんどが非農家の当会会員にとって、さわやか隊は貴重な農作業を体験できる場であり、地元農家の側からは、高齢化や離農で人手不足が進みつつある現在、多少なりとも作業の軽減につながっています。
農家とWIN-WINの関係
このように、WIN-WIN(ウィン-ウィン)の関係が、里山における「人」を中心としたパートナーシップの構築に役に立っています。活動中の我々の姿を見て、「ありがとう」と言ってくださる地元の方に会うと、とてもうれしくなります。会員の中には、月1回のさわやか隊の活動に限らず、地元農家の方と、田植えや稲刈り、除草作業などを行う人もおり、活動の幅は広がっています。
また、さわやか隊の活動は、生物多様性の保全にも大きく寄与しています。特に農業水路が土水路として残されているため、デコボコができ、水の流れには緩急ができて、さらに植物も生えることから、生き物にとって過ごしやすい場を提供します。
もしこれが三面コンクリートの水路であったら、大雨の際には激流となって小さな生き物は隠れる場所もなく流されてしまいます。もちろん管理はコンクリートのほうが楽です。だからこそ、貴重な生き物の生息場所を守るための手間を、地元の農家だけに負担させるのではなく、保全団体の我々も積極的に関与しなくてはいけないと思っています。
最近では、当会が始めた里山体験プログラムにおいて、さわやか隊の活動が必修科目となり、大学生などの若い参加者も増えています。少しでもさわやか隊の活動にご興味を持たれた方は、活動に参加してみてください。(宍塚の自然と歴史の会 副理事長)