【コラム・松永悠】今年、我が家の大きな出来事と言えば、子供3人中2人が海外へ短期留学したことです。高3の息子はシドニーへ、そして大学3年の娘が夏休みの間北京へ。
子供が生まれてから毎年のように3人を連れて北京に行っていますので、北京は子供にとって大変なじみ深い場所ですが、高校受験やコロナの関係で、気が付けば最後に北京に行ったのは6年も前のことです。
長女は大学で中国語を専攻しています。語学留学は入学してからずっと心の中で温めていた願いでした。本格留学のウォーミングアップとして、この夏休みに北京大学に行くことにしたのです。
親戚に囲まれて守られる滞在と違って、今回は寮生活だけでなく、一緒にいるのも全員初対面で、世界中から来た中国語を学ぶ大学生です。短期留学中は、勉強のほか、観光も組み込まれていて、故宮博物館、天壇公園、万里の長城といった世界遺産はもちろんのこと、中国版新幹線に乗って山西省大同にある雲岡石窟や懸空寺にも行きました。
最初はそれなりの不安もあったと思いますが、心配はご無用。若いパワーであっという間に慣れてくれました。送られてきた写真を見ると、まぶしく輝く笑顔があふれています。娘と一緒に写っているのは、日本、欧州、米国など世界中からの大学生です。
もうすぐ帰ってくるのですが、すでに「帰りたくない」を口にしています。確かに、最初の緊張が消え、徐々に慣れてきて、楽しくなったころに帰国しなければならないのは残念ですが、来年こそ長期留学できるように準備したいものです。
国をまたいで仕事をするという技
外の世界を見るのは、若い人にとって大切なことです。比較対象がないままでは自国を評価できないので、たくさんの国に行ってほしいと思っています。どの国も良いところ、良くないところ、自分に合うところ、合わないところがあります。
ネット情報が氾濫している今だからこそ、現地に行ってしっかり自分の目で見て、心で感じてほしいです。
飛躍的に生活が便利になっている北京ライフを満喫していて、めちゃくちゃ快適だと絶賛する娘。軽食やタピオカドリンクをデリバリーしてもらったり、日本よりずっと安い料金でネイルしたと喜んでいます。短い滞在ですと、どうしてもこのような表面的なことしか見られないでしょう。
今の中国はたくさんの問題を抱えています。若い世代の就職難、経済の後退など、語り出したらキリがありません。
娘には、「便利」の背後にある厳しい現実も知って欲しいです。グローバル化が進む今、言語という武器を手に入れて、国をまたいで仕事をするという技を身につけた上、客観的中立的に日本と中国を観察して、しっかり自分の考えを持つ社会人、そして大好きな二つの国をつなげる人材になってほしいと願わずにいられない今日この頃です。(医療通訳)