生活保護行政をめぐって不適正な事務処理が相次いでいるつくば市で、現役の市職員が3日開会の市議会9月会議に、生活保護業務の適正化を求める請願書を提出し、市議会は同日、同請願を審査する請願審査特別委員会(長塚俊宏委員長)を設置するなど異例の事態になっている。
請願したのは、昨年まで生活保護を担当する社会福祉課に在籍し、現在は別の部署に異動になった市職員。市がこれまで発表した残業代と特殊勤務手当未払い(5月9日付)や生活保護受給者に対する生活保護費の過払い(7月20日付)とそれぞれの再発防止策などに対して、「問題の全容解明には未だほど遠く、現場のケースワーカーにも具体的な再発防止策はおろか不適正事案の具体的な内容や問題の本質、問題発覚の本当の経緯が一切示されていない」などとして、市民と職員双方に身体的、法的、精神的安全が確立されること、不適正事務があった場合、うそ偽りや過不足のない誠実な公表と、具体的で中身のある再発防止策の検討などを求めている。
市議会に設置された特別委は13人で構成する。長塚委員長は「二つの常任委員会にまたがる請願なので特別委員会の設置になった」とし「中身について各委員としっかり審議したい」としている。10月4日までの会期中に審議し採択か不採択かなどの結論を出す。
請願によると、5月に発表があった残業代未払いを生んだ社会福祉課職員の労務環境については、職員は過酷な業務に追われ、例えば(仕事が終わらず)金曜のうちに自宅に帰れず土曜日の始発で帰る職員がいた。その職員が始発で帰ろうとした土曜日朝5時、子供が寝ている時間に仕事をするため職場に来た別の職員と会うなどの勤務実態があったとしている。5月の発表後、実施するとしている全庁的調査については、過去3年の不適切な労務管理に関して実名で回答するという調査はあったが、未払い手当てに関する全庁的調査はいまだ実施されていないとしている。
7月に発表があった生活保護費の過払いに対しては、発表になったケースを担当するケースワーカーには誤認定の説明はあったが、原因や経緯などの説明はなく、フォローできる体制がまだないなどとしている。
請願は新たな問題も指摘している。2023年度に市職員が生活保護受給者宅を訪問した際、暴行を受けた事案について、管理職から対応策の指示があったのは3週間以上経ってからで、指示内容は「危ないと思う場合は2人で訪問してよい。気を付けて訪問するように」というものだった。護身術講座もあったが指導内容は「間合いを取ること、バインダーやペンで応戦すること」などで現実的対策とは思えなかったなどとしている。
さらに公務員は、法に基づいた業務が行えるよう、法解釈の誤りが起こらないようにすることが求められるが、生活保護の困難ケースについて法解釈を話し合うケース診断会議の場で、管理職が「これは感覚の問題」と発言したり、同じ会議の場で保護開始と決まったケースが、その後の管理職の決裁で「取り下げさせろ」と命令されたり、先輩職員から「何が正しいかはその時々の管理職が何て言うか次第」と言われるなど、法解釈の誤り以前の状況があったと指摘している。
ほかに、ケースワーカーは現金を取り扱わないことになっているが、県からの指摘で今年1月に取り扱いを改めるまで、管理職の机の引き出しから金庫のかぎを取り、別の管理職の後ろにある金庫から現金を取り出すなどしており、県の監査に対しうその報告していたーなどとも指摘している。(鈴木宏子)