筑波大学附属病院(つくば市天久保、平松祐司院長)に医学工学融合の実証研究施設、未来医工融合研究センター(CIME、野口裕史センター長)がリニューアルオープンし、27日に記念の講演会「異分野融合・産学連携のハブを目指して」が開かれた。
同センターは、病棟内の患者の協力を得て、リハビリテーションなどで医師や作業療法士ら医療者らと、医療機器の実証研究や生体情報の収集・解析ができる施設。今夏、病棟の免震改修工事が完了したことから、一層の拡充を図って、入院棟であるB棟11階、見晴らしのいい最上階の広いフロアに陣取って業務を開始した。
元は2014年、病院の基礎研究の成果を臨床研究・実用化へ効率的に橋渡しするため、大学のつくば臨床医学研究開発機構(T-CReDO、荒川義弘機構長)の橋渡し研究推進センター(町野毅センター長)内に開設。ロボットスーツ「HAL(ハル)」や立ち車いす「Qolo(コロ)」などの社会実装に成果を上げてきた。
今回、実証研究スペースとして175平方メートルの実証研究スタジオや、レンタル可能な7部屋などのラボ施設が整備された。さらに、起業支援に実績のある医工連携の専門教員の執務室も併設され、伴走支援などのインキュベーション機能を拡充させた。
センター内では産業技術総合研究所や自動車業界によるコンソーシアムとの共同研究も展開中だ。ドライビングシュミレーターに各種センサーを組み込んだ研究室で、患者から疾患関連予兆シグナルの収集を行っており、特許出願が準備されるなど成果を上げつつある。
野口センター長は「これまではスペース的な制約もあってアカデミア内の交流にとどまりがちだったが、特に産業界へ向けた発信を強化したい。革新的な医薬品・医療機器・再生医療製品などの実用化を目指していきたい」とした。
講演会では国光あやの衆議院議員(医療機器議員連盟事務局長)が医療機器研究開発へテコ入れを拡大する国の政策を紹介、筑波大学の鈴木健嗣教授(システム情報系長)が医療と工学系研究との連携強化によるイノベーション創出をアピールした。
同大附属病院は1976年完成。病院のほぼ中心部に位置するB棟は主に入院病棟として利用されてきたが、耐震性確保や老朽化した設備の改善が必要となり、2020年から既存の建物を残しながら耐震化する大規模改修に取り組んでいた。 (相澤冬樹)