「住民はごみを出すのに命がけなんだ」
そう語るのは、つくば市茎崎地区の小茎区会を束ねる小泉茂区長(68)だ。
小茎は、つくば市に編入する前の旧茎崎町役場が置かれた集落で、純農村地帯の中心だった。集落を横切る県道46号(片側1車線)はかつて生活道路だったが、周辺都市や都心へと向かう車が激増し、朝夕の通勤時間は慢性的に渋滞が発生している。
一方で、赤信号に捕まらなければ車はスピードを上げて通り過ぎていく。
こうした渋滞は、「朝8時まで」と決められたごみ出しの時間と重なる。それはまさに、小泉区長がいう命がけのごみ出しとなる。
小茎区会のごみ集積所は県道沿いの小茎農村集落センター脇にある。約150世帯の区会中、50世帯は集積所側にあるが、100世帯は国道を挟んだ反対側に位置する。安全に国道を横断するには約100m離れた茎崎農協前の信号まで行き、横断歩道を渡って集積所まで戻るしかない。
実際には車が途切れたときか、渋滞している車の間を縫うようにして県道を横断している住民が多い。集落の大半が2世帯同居世帯で、人数が多い分だけごみの量も多く、ごみ袋が重たいので回り道をしたくないという意識が働くからだ。特に足腰の弱った高齢者にとって遠回りは負担が大きい。
「先日は、左手にごみ袋を下げ、右手を上げて渋滞している車の前を横切った住民が、左からスピードを出して走って来た車と接触しそうになったことがありましたよ」と小泉さんは話す。
朝7時には渋滞するため、6時前にごみを出す人もいる。小泉さんは横断歩道があれば、とも考えた。だが、横断歩道の新設は、警察庁の交通規制基準に基づいて概ね200m以上の間隔が必要となる。現在は茎崎農協前に横断歩道があるため、集落前への設置は諦めたという。
通学路の安全対策で使う横断旗のように、せめて「ごみ出し横断中」の旗を作れないかどうかなど、小茎の住民が安全に暮らせるように思案している。
「区長を引き受けたからには諦めずに改善策を見つけたい。死傷者が出てからでは遅いし、一生後悔する」。小泉さんは語気を強めた。 (橋立多美)