月曜日, 9月 9, 2024
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どっちが大事? つくば市の選挙 《吾妻カガミ》188

【コラム・坂本栄】つくば市では10月27日に市長と市議の同時選挙がある。どんな人が立候補するのか(五十嵐市長はすでに3期目出馬を表明)、その公約や力量が市民の関心事だが、市や議会では選挙の仕方をめぐる議論がされている。研究学園市らしい風景だ。

オンデマンド型移動期日前投票所

選挙の仕方をめぐる議論のひとつは、投票所に行くのが大変な高齢者や障害者の投票率をアップする方法。五十嵐市長は、投票を希望する高齢者や障害者の自宅まで投票箱を積んだ車を回し、自宅で期日前に投票してもらう仕掛けにこだわっている。市は「オンデマンド型移動期日前投票所」と呼んでいる。

オンデマンドとは「要求に応じてサービスを提供する」という意味だが、いかにも研究学園市らしいカタカナ用語だ。

この投票法の手順や問題点などを探るため、つくば市は今年1月、市北部の2カ所で実証実験を行った。ところが、市全域でやらなければおかしいと議会で突っ込まれ、8月6日から9日にかけ、市職員約20人、車3台(1台は予備)を動員して、希望者を対象に2度目の実証実験をやるという。記録的な猛暑の中ご苦労さま。

この新基軸を扱った記事「…選管見解は再び『時期尚早』…」(6月3日掲載)、「議会から懸念相次ぐ…」(6月25日掲載)によると、選挙の実務を担当する選挙管理委員会も、選挙の方法を審議する議会総務文教委員会も、市長の入れ込み方に「はて?」のようだ。記事の見出しからも明らかなように、時期尚早論、実施懸念論が出ている。

なぜ、五十嵐市長はこの新投票法にこだわっているのか? 研究学園市つくばの先進性を世に見せるため、本当はネット投票を導入したいのだが、選挙制度を管轄する総務省が慎重なスタンス。そこで、目先の策として「オンデマンド…」を実現したいようだ。政治用語を使うと、「パフォーマンス(派手で格好いい目立つ行動)」ということか?

選挙公報のスペースとデリバリー

もうひとつは、投票日前に有権者に配る選挙公報のスペース(紙幅)とデリバリー(配布)をめぐる議論。市政への関心が強い酒井泉氏(元大学教授)が、①市長・市議立候補者の経歴や公約を載せる選挙公報のページ数を増やし、②自宅購読が減っている新聞への折り込みでなく、専門業者、郵便局、地域区会などに宅配を頼んだらよい―と市議会に提案。

議会総務文教委での議論を受け、本会議は①②について検討するよう選挙管理委員会に指示した。その内容は記事「…選挙公報、各戸配布検討を…」(6月20日掲載)に詳しい。公示日から選挙日までの時間的制約、12万世帯(今春現在)に宅配する手間暇―などの課題はあるが、採用の優先順位は移動投票所よりも選挙公報充実の方が上だろう。

というのは、オンデマンド型移動投票所の対象者は約3000人であるのに対し、選挙公報の対象者=有権者市民は約20万人だから、4年に一度の選挙を盛り上げるには選挙公報充実が大事なのは言うまでもない。ところが、五十嵐市長にどっちが大事か質問したところ、「オンデマンド…」の方が大事との回答が返ってきた。

現職の市長は市の予算を使った自分PR用の広報紙を持っている。選挙公報の充実は敵(対立候補)に塩を送ることになると考えているのだろうか? (経済ジャーナリスト)

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