【コラム・龍田薫】「政治の一寸先は闇」というが、バイデン大統領が大統領選挙から撤退を表明、ハリス副大統領がバイデン氏にかわる民主党大統領候補の指名を確実にした。過去に例のない急展開である。選挙(11月5日)まで約100日。民主党としては、候補の差し換え手続きについて、党内外からの批判・攻撃に耐えうるだけの公明正大さ・公平さをどう確保するかが問われる。
民主党は急ぎ、8月1日に大統領選を戦う党候補者を指名するオンライン投票を開始し、同7日までにすでに指名獲得に必要な代議員の過半数を固めたハリス氏を正式に指名するとした。次に、正式指名を受けた大統領候補は副大統領候補を選ぶことになるが、これについては8月19〜22日に中西部イリノイ州シカゴで開く党全国大会で正副大統領候補が受諾演説に臨む手はずである。
ここまで切羽詰まると、党内で内輪もめもできず、党内はハリス支持で一本化し、トランプ氏と対決する新たな構図が確定することになるだろう。問題は、この構図で11月の大統領選に勝てるかどうかだが、勝敗の大きな鍵は副大統領候補選びにある。
今回、副大統領候補に期待される役割は、共和、民主両党ともに、いわゆるスウィングステート(激戦州)の選挙を有利に導くこと、つまり、激戦州の労働者票を獲得できる候補者が求められる。共和党はすでにJ・D・バンス上院議員を副大統領候補に指名した。
バンス氏は、17日、党大会で指名受諾演説に臨み、「ラストベルト(さびついた工業地帯)」で育った生い立ちを自己紹介しながら、内外の政策で米労働者を第一に据える方針(トランプ氏のアメリカ第一主義に沿う)を表明した。民主党も、これに対抗できる副大統領候補を選ぶとすれば、激戦州のペンシルベニア州のシャピロ知事、アリゾナ州選出のケリー上院議員、ノースカロライナ州のクーパー知事のいずれかが有力と予想される。
労組はどちらを支持?
ところで、今回の選挙の背景を読むと、労働者組織の今までに無かった動きが目立っている。一例としては、全米トラック運転手組合のS.オブライエン会長が共和党全国大会で演説(組合史上初)し、労働・政界関係者に衝撃を与えた(フィナンシャルタイムス7月26日付)。
その内容は「米商工会議所や主要経営者団体は、結局大企業のための団体であり、労働者の利益を代表していない」と断じたという。つまり、労働者の代表組織そして労働者自体が、誰が本当に自分たちを支援する人物か見極めようとしているということだ。民主、共和両党の副大統領候補がその眼鏡にかなうか否か、今回の大統領選挙の行方を決める大きな鍵になる。(茨城キリスト教大学名誉教授)