助産師が中心となる院内助産システム「つくば市バースセンター」の専用フロアが1日、県内唯一の特定機能病院である筑波大学附属病院(つくば市天久保)内B棟6階に開設された。妊婦が陣痛から産後までを同じ部屋で過ごせる機能を持つ個室が12床整備され、19日から運用が開始される。出産に関するリスクが低い健康な妊産婦が対象で、家族の立ち会い出産が可能。
同センターは、同市北条の市立病院が2011年に休止し、産科医療の充実を求める市民の声が高まったことを受け、つくば市が協力して、同附属病院の周産期病棟内に2013年9月から部分的に6床で運用が開始されていた。当初の計画では全面運用開始は昨年12月の予定だった。
陣痛から分娩、出産後まで同じ部屋で
一般的に出産を控えた妊婦は、陣痛の間を陣痛室で過ごし、分娩を行う際には、分娩室まで移動する。同センターでは、陣痛が始まってから、LDR室=メモ=と呼ばれる個室に入院し、出産を経て、その後5日間を新生児と共に過ごす。陣痛から分娩、出産後の期間を同じ部屋で過ごすことができるため、妊婦は自力で移動することなく、負担や疲労を抑えることができる。
同センターに整備される12床全てが、LDR室仕様の完全個室で、専属の助産師15人が妊婦健診からお産まで主体となって関わり、出産までのプランを妊婦と共につくる。
同センターに入院を予定する妊婦は、少なくとも医師による健診が2回行われ、出産の際には必ず産科医師が立ち会う。
妊娠中や出産時に妊婦に異常が発生した場合は、同大産科・婦人科の医師、助産師による産科体制に移る。階下には、24時間体制で治療を行う新生児集中治療室(NICU)や新生児回復治療室(GCU)が設けられており、同じ建物内で速やかに同線が確保できる仕組みになっている。
1室当たりの広さは30平方メートルほどで、正方形型と長方形型の2つのタイプがある。分娩台としての機能も併せ持つ妊婦用のベッドや、新生児用のベッドのほか、授乳するための専用の椅子、シャワーやトイレなどを完備し、医療機器はクローゼットの中に収納され、目立たないようになっている。分娩室に患者個人が自由に過ごせるスペースが加わった形で、暖色系の照明や木目調の床とインテリアで内装を揃え、落ち着きのある空間を提供する。
同室の内装に構想段階から中心として携わった、同附属病院看護師長の本多裕子さんは「内装をアースカラーで整え、リラックスできる環境をつくり出すことにこだわった。妊婦の方が持つ産む力を助産師全員で引き出し、元気に退院してもらえるように丁寧にケアをしていく」と話す。
同センター部長で、同大医学医療系産科婦人科学の濱田洋実教授は「日本は妊婦や赤ちゃんの死亡率が世界レベルで見ても低い。これまで積み上げてきた安全性を維持しながら、より安心して快適に過ごせる環境作りを目指す」と述べる。
同大の永田恭介学長は「つくば市は人口が増加している地方都市であり、出産するための場所を確保することが喫緊の課題。高齢出産やハイリスク出産などの問題も踏まえて、誰もが安全に安心して子どもを産み、育てられる環境を実現すべく、努力していく」と話している。(上田侑子)
【メモ】LDRは、陣痛、分娩、出産後の回復を意味する英単語の頭文字をとった略語。